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ABEMAトーナメント2023 本戦準決勝第二試合

9月16日に、ABEMAトーナメント2023の本戦準決勝第二試合が放映されました。Eリーグ1位で本戦ではチーム斎藤を降したチーム藤井「トウカイテイオー」と、Aリーグ1位で本戦ではチーム千田を破ったチーム稲葉「NIN NIN」の顔合わせとなっています。


一局目:澤田真吾七段 vs 服部慎一郎六段

チーム稲葉は勢いが付くと止まらない服部六段が先陣を切ります。振り駒で先手となった澤田七段が角道を止めて雁木に構えると、服部六段は矢倉を組んで入城します。澤田七段は4筋の歩をぶつけて取り込み、服部六段が金で取ると、▲4五歩と打って位を取りにいきます。服部六段が銀で取って桂と交換すると、澤田七段は2筋を継ぎ歩で攻めます。服部六段は構わず銀の両取りに△5六桂と打ち、澤田七段が2筋の歩を取り込むと、△2八歩と飛頭を叩きます。取ると王手飛車があるので、澤田七段は飛車を5筋に回し、服部六段が銀取りに△4六歩と打って先手の角の利きも止めると、▲2三銀と王手で打ち込んで後手陣の金を剥がし、▲5三飛成と竜を作ります。澤田七段は飛角両取りに▲8三金と打ち込んで飛金交換し、角銀両取りに▲7二竜と入って寄せ切りました。
チーム藤井:1勝 - チーム稲葉:0勝

二局目:藤井聡太竜王名人 vs 稲葉陽八段

両チームともリーダーが出陣し、早くもリーダー対決となります。先手の稲葉八段が相掛かりに誘導し、互いに飛先の歩を交換して、持ち時間を6分以上に増やします。藤井竜王名人は桂をぶつけて交換し、稲葉八段が▲6八角と自陣に打つと、△5三桂と打って2枚の桂で4筋の歩を狙います。稲葉八段が飛車を8筋に回し、更に▲9八香と上がって9筋に回すと、藤井竜王名人は△8五歩から歩交換して△8三飛と引きます。稲葉八段が飛車を2筋に戻し、銀取りに▲3五桂と打つと、藤井竜王名人は△3四銀とかわしてから△4五桂左と跳ねて桂交換します。稲葉八段が9筋を端攻めして▲9二歩成と飛車に当てると、藤井竜王名人は飛車を2筋に回します。稲葉八段は銀取りに▲4六桂と打ちますが、藤井竜王名人は金取りに△4五桂と跳ねてから、銀で桂を食いちぎって△4三桂と銀取りに打ち返します。稲葉八段は飛車取りに▲3二銀と放り込み、時間に追われた藤井竜王名人が△2四飛とかわすと、▲4三桂と金を取って後手玉に迫ります。藤井竜王名人が△2五角の王手から反撃し、△5七香と王手すると、稲葉八段は角で香を食いちぎって粘ります。稲葉八段は▲3五玉と玉自らが飛車取りにいきますが、藤井竜王名人は銀で飛車を支えて上部脱出を阻止します。稲葉八段は▲5一金とタダ捨ての王手で上部脱出を図りましたが、藤井竜王名人は玉を7筋にかわすと、上下からの挟撃態勢を作って即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:2勝 - チーム稲葉:0勝

三局目:齊藤裕也四段 vs 出口若武六段

チーム藤井は注目の新鋭齊藤四段を先手番で送り出します。齊藤四段がいつも通り中飛車に振ると、出口六段は4手目に1筋の端歩を突いて牽制します。齊藤四段が角道を開けると、出口六段は角を交換して1筋の位を取ります。齊藤四段が飛先の歩を交換してから穴熊を目指すと、出口六段も飛先の歩を交換します。齊藤四段は▲7五銀と出て飛車に当て、出口六段が7筋の歩を取って銀に当て返すと、飛車を8筋に回って攻め合いを目指します。出口六段は△8七歩と打って飛成を防ぎますが、齊藤四段は金取りに▲8三角と打ちます。金を逃げると馬で飛車を捕獲されてしまうので、出口六段は1筋の歩を突き捨ててから飛車で銀を取りますが、齊藤四段は▲6一角成と金を取って馬を作ります。出口六段が△4五角と打つと、お互いに竜を作り、齊藤四段は自陣に金を埋めて穴熊を補強します。出口六段は粘って形勢を混沌とさせますが、齊藤四段は馬で金を食いちぎり、▲2二金と挟撃態勢を作ると、▲5三竜と一間竜の形にして寄せ切りました。
チーム藤井:3勝 - チーム稲葉:0勝

四局目:藤井聡太竜王名人 vs 服部慎一郎六段

チーム藤井は後手番をリーダーが引き受けます。先手の服部六段が得意の矢倉を選択し、藤井竜王名人は現代調の駒組みを進めます。服部六段が3筋の歩を突き捨てて銀を繰り出すと、藤井竜王名人は8筋を継ぎ歩攻めして押さえ込み、△3五銀とぶつけて交換します。藤井竜王名人は△8五桂と跳ね、服部六段が▲8六銀とかわすと、△7六銀と繰り出します。服部六段は5筋の歩を伸ばして飛車の横利きを銀に当てますが、藤井竜王名人は△3四歩と打って角を追ってから△5五角と飛び出します。服部六段が飛車で銀を取ると、藤井竜王名人は△3七角成と桂を取って馬を作ります。服部六段が角を合わせて馬を消し、▲8五銀と桂を食いちぎってから飛車取りに▲7六角と打つと、藤井竜王名人は△5五飛とかわします。服部六段が▲5六歩と打つと、藤井竜王名人は△4六角成と飛車を取り、△3九飛と王手で打ち込みます。服部六段は持ち駒の銀を投じて粘りますが、藤井竜王名人はもう1枚の飛車で金を食いちぎって寄せ切りました。
チーム藤井:4勝 - チーム稲葉:0勝

五局目:齊藤裕也四段 vs 稲葉陽八段

後がなくなったチーム稲葉はリーダーが「責任をもって1勝をもぎ取ってきます」と出陣します。先手の齊藤四段が中飛車に振り穴熊を目指すと、稲葉八段も穴熊に囲います。齊藤四段が1筋の位を取り、1分程考えて7筋の歩も伸ばすと、稲葉八段は飛車を浮いて受けます。齊藤四段も飛車を浮いて7筋に回し、▲7四歩とぶつけると、稲葉八段も△8六歩とぶつけます。齊藤四段は角で取り、稲葉八段が飛車をぶつけると、飛交換に応じて▲8三飛と打ち込みます。お互いに竜を作り、稲葉八段が金を取らせる代わりに角を取ると、齊藤四段は角取りに▲2五金と打ちます。稲葉八段は竜取りに△8五角と打ち、齊藤四段が8筋に竜をかわすと、"と金"を捨てて竜を犠牲に、馬で先手陣の金を2枚剥がします。駒得となった稲葉八段が攻め込みますが、齊藤四段は金を埋める手順の繰り返しに持ち込み、千日手が成立しました。

指し直し局は、稲葉八段が3分8秒、齊藤四段が41秒の持ち時間で行われます。後手の齊藤四段が三間飛車に振り穴熊を目指すと、稲葉八段も穴熊に囲います。稲葉八段が4-6筋の位を取ると、齊藤四段は△3五歩と打って銀を引かせ、△4五桂と跳ねて反発します。稲葉八段は桂頭銀で受け、▲2二歩成と成り捨ててから飛車に当てて▲4四角と飛び出し、▲1一角成と香を取って馬を作ります。齊藤四段は△2七歩成と飛車を追いますが、稲葉八段は▲5三歩成から後手陣を崩します。齊藤四段は9筋を端攻めしますが、稲葉八段は手堅く受けてから寄せ切りました。
チーム藤井:4勝 - チーム稲葉:1勝

六局目:澤田真吾七段 vs 稲葉陽八段

チーム稲葉は勝ったリーダーがチームカラーの連投です。後手の澤田七段が角道を止め雁木に構えると、稲葉八段は角を上がって▲8八銀型で応じます。稲葉八段が3筋から仕掛けて拠点を築くと、澤田七段は8筋を継ぎ歩攻めしてから7筋の歩を取り込みます。澤田七段は4筋の歩を突いて角道を通しますが、稲葉八段は4筋の歩を取り込んで押さえ込みます。澤田七段が玉を7筋まで早逃げし、△6四角と飛び出して攻め合いを目指すと、稲葉八段は丁寧に受けに回って凌ぎます。澤田七段は△7七角成とタダ捨ての勝負手を放ちますが、稲葉八段が落ち着いて桂で取ると、早めの投了を告げました。
チーム藤井:4勝 - チーム稲葉:2勝

七局目:藤井聡太竜王名人 vs 出口若武六段

チーム藤井は兄弟子に「お願いします」と請われたリーダーが出陣します。先手の藤井竜王名人が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の定跡形に進むと、出口六段は△4一飛と回して先手からの仕掛けに備えます。藤井竜王名人は構わず▲4五桂と跳ね、出口六段が銀を2筋に引くと、桂を5筋に成り捨ててから7筋の桂を取り返します。研究十分の局面が続き、藤井竜王名人は時間を7分以上に増やします。藤井竜王名人が初めて手を止め▲8五歩と飛頭を叩き、▲2四桂と後手の玉頭から攻め掛かると、出口六段は2分以上の長考で△2四同歩と応じます。藤井竜王名人は▲5二金と後手玉に迫り、出口六段が△7七成桂と攻め合うと、▲4一角と王手し金を犠牲に飛車を抜きます。出口六段が成桂を金と交換し、馬取りに△7六銀と打つと、藤井竜王名人は馬で銀を食いちぎり、王手銀取りに▲5一飛と打って竜を作ります。出口六段は竜取りに△3二角と打ち、穴熊のような堅陣を築くと、藤井竜王名人の猛攻を凌いで△6七"と"から先手玉に迫ります。藤井竜王名人は▲5三銀~▲5二銀打と後手陣を崩しにいきますが、出口六段は王手飛車取りに△3八銀と打って飛車を取り、△3五歩から即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:4勝 - チーム稲葉:3勝

八局目:澤田真吾七段 vs 出口若武六段

チーム稲葉は勢いに乗る出口六段が連投します。後手の澤田七段が角道を止めて雁木に構えると、出口六段は角を上がって▲8八銀型で応じます。澤田七段が△7三桂と跳ねると、出口六段は3筋の歩を取り込んで、飛車を3筋に寄せて銀に当てます。澤田七段は金を上がって銀に紐を付け、出口六段が▲4六銀と上がると、7筋の歩を突き捨ててから△6五桂と跳ねます。出口六段は▲6六角とかわしますが、澤田七段は△4五歩と突いて角道を通しつつ銀に当てます。出口六段が銀をぶつけると、澤田七段は銀交換に応じて△7六銀と打ち、角を交換して△5三角と飛車に当てて打ち直します。出口六段は飛頭を叩いて吊り上げ、飛車取りに▲6一角と打ち込み、▲5二角成と捨てて▲3二飛成と金を取って竜を作ります。澤田七段は△8七角と王手で打ち込み、△8七飛成と竜を作って先手玉に迫りますが、出口六段は▲8三角から後手玉を追い詰め、手堅く自玉に迫る馬を金で取って逃げ切りました。
チーム藤井:4勝 - チーム稲葉:4勝

九局目:齊藤裕也四段 vs 服部慎一郎六段

追い詰められたチーム藤井は決着局を新鋭に託します。振り駒で後手となった齊藤四段が四間飛車に振り穴熊を目指すと、服部六段も穴熊に囲います。服部六段が4筋の歩をぶつけて取り込むと、齊藤四段は銀を上がって取り返します。服部六段は▲6八角と引いて、▲4六銀と歩を取りますが、齊藤四段も△6六角と取り返し、△4七歩と垂らします。服部六段が▲5七銀と引いて受けると、齊藤四段は△5七同角成と食いちぎり、飛車取りに△5八銀と打ち込みます。服部六段が飛車をかわしてから飛車取りに▲3六角と打ち、飛角交換して銀桂両取りに▲4一飛と打ち込むと、齊藤四段は△4八角と打ち込んで角交換し、"と金"を作って飛車に当てます。服部六段が銀を取って竜を作り、▲5五角と攻防の要所に放つと、齊藤四段は飛車を取って△4九飛と打ち込んで攻め合います。服部六段は▲7二竜と金を食いちぎり、▲6一銀から後手陣の金を剥がし、▲6二金と絡みつきます。齊藤四段は△6七角~△4六角と2枚の角を打って反撃しますが、服部六段は手堅く▲7八銀と打って受けます。齊藤四段は先手玉に迫りましたが届かず、服部六段は▲8一金から即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:4勝 - チーム稲葉:5勝

第二試合の結果

チーム稲葉は、4連敗の絶体絶命のピンチに、リーダーの稲葉八段が連投連勝で息を吹き返すと、出口六段も連投連勝でバトンをつなぎ、決着局では服部六段が手堅く勝ち切り、大逆転での決勝進出を果たしました。前回大会に比べると接戦が多い印象ですが、その分チームとしての逞しさが増し、大会初の連覇に向け勢いが付く勝利だったと思います・
チーム藤井は、勝つだけではなく東海地区を盛り上げたい藤井竜王名人の意向が強く反映されたチーム構成でしたが、全勝でチームを牽引してきたリーダーの藤井竜王名人に初黒星が付き、残念ながらここで敗退となりました。澤田七段と齊藤四段も初出場とは思えない活躍を見せ、リーダーの思惑通り今後の東海地区の発展に貢献していく自信を手にした大会だったと思います。

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