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「観る将」が観た小山怜央アマの棋士編入試験第四局~奨励会経験のないプロ棋士誕生~

2月13日、小山怜央アマが挑む棋士編入試験の第四局が行われました。ここまで2勝1敗の小山さんが、本局に勝って夢のプロ入りを果たすのか、非常に注目される一局となりました。

第四局の試験官となる横山友紀四段は2021年10月にプロ入りした23歳で、プロ入り後の通算成績は14勝22敗(勝率0.389)です。これまでの公式戦ではやや苦しんでいる横山四段ですが、本局に勝ってプロの意地を見せたいところです。

横山四段の四間飛車

後手の横山四段が角道を止め得意の四間飛車に振ると、小山さんは穴熊に囲います。横山四段は高美濃から銀冠へ組み替えを目指しますが、小山さんは2筋の歩を突き捨ててから飛車を4筋に回します。

桂を巡る攻防

一歩を得た横山四段が銀冠の完成前ながら3筋の歩をぶつけて桂頭を狙うと、小山さんは4筋の歩をぶつけます。横山四段は3筋の歩を取り込んで桂に当てますが、小山さんは▲4五桂と跳ねて角に当てて引かせます。小山さんが飛車を3筋に寄せて後手の歩成を防ぐと、横山四段は銀を前進して歩を支えます。形勢は早くも小山さんに傾いてきたようです。

飛角両取り

小山さんが6筋の歩をぶつけると、横山四段は桂で取って銀を上がらせてから△6二金と上がって5筋を補強します。小山さんは銀で桂を食いちぎり、飛角両取りに▲3四桂と打ちます。横山四段はやむなく角で銀を食いちぎって王手してから飛車を引いてかわしますが、小山さんは▲8六角~▲4二角成とぶつけて飛車と交換します。形勢は小山さんに大きく傾いています。

駒を取り合っての激しい攻防

横山四段が飛金両取りに△4九角と打ち込むと、小山さんは▲5一飛と打ち込んでから飛車を6筋に回して受けます。横山四段が飛金両取りに△7九銀と打つと、小山さんは▲5三桂成と飛び込んで金を1枚剥がします。横山四段は銀を金と交換し、取った金を自陣に投じて守りを固め、△6四桂と打って王手飛車取りを狙います。

小山さんの銀捨ての寄せに横山四段が反発

小山さんは▲9三銀とタダ捨てし、玉で取らせて▲9一竜と王手で後手玉に迫り、攻防に利かせて▲7九香と打ちます。横山四段は角で金を食いちぎり、△8一金と打って竜を捕獲します。小山さんはやむなく竜を金と交換しますが、形勢は混沌としてきたようです。

小山さんの玉頭攻め

横山四段が6筋に歩を垂らしてから△4七飛と打ち込むと、小山さんは▲7七金と打って手厚く守ってから、9筋の歩を突き捨て後手の玉頭から攻め掛かります。小山さんが▲5一角と打ち込んで攻め駒を足すと、横山四段は△9四銀打と守備駒を足します。小山さんが更に▲9七桂と攻め駒を足すと、横山四段は8筋の歩をぶつけて攻め合います。形勢は再び小山さんに傾いてきたようです。

鮮やかな即詰み

小山さんが▲8五桂の王手から後手玉を下段に落として追い詰めると、横山四段は竜を作って先手玉に迫り、詰めろを掛けて下駄を預けます。小山さんは▲7三角と王手し、そのまま長手数の即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は小山さんの事前研究が奏功し、中盤の入り口で早くも勝勢の局面を築いて一気に決着を付けるかと思われました。横山四段もプロとしての執念を見せ、先手の竜を捕獲していったんは形勢を押し戻しました。小山さんは再び攻勢に転じて逆転を許さず、最後はこれまでも度々魅せてきた切れ味鋭い終盤力を発揮し、鮮やかな即詰みに討ち取りました。
小山さんは3勝1敗で見事に棋士編入試験に合格となり、晴れて4月1日付でプロになることが決まりました。棋士編入試験の制度ができてから、奨励会の経験を経ずに棋士になるのは初めてのことであり、多くのアマチュア強豪に夢を与える偉業だと思います。東日本大震災で被災した経験もある小山さんは、対局後の会見で「避難所生活や震災の経験は活きている」と話しましたが、地元の関係者にとっても励みになる岩手県初のプロ棋士誕生となりました。小山さんにとってはプロになることがゴールではないと思いますので、今後様々な棋戦で活躍されることを楽しみにしたいと思います。


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