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ABEMAトーナメント2023 予選Eリーグ第二試合

7月15日に、ABEMAトーナメント2023の予選Eリーグ第二試合が放映されました。東海地方出身でこれまで出場経験のないメンバーを指名したチーム藤井「トウカイテイオー」と、第一試合でチーム渡辺を撃破したチーム千田「シーソーゲーム」の顔合わせとなっています。
※本稿は収録当時の称号で記述させていただきます。


一局目:齊藤裕也四段 vs 藤本渚四段

昨年秋にプロデビューしたばかりの新四段同士の対決となります。先手の齋藤四段が中飛車に振り、角を交換して美濃囲いに構えると、藤本四段は左美濃に囲い△6四角と自陣角を据えます。藤本四段が△4六角と歩を取り△5二飛とぶつけると、齊藤四段は▲5四歩と打って飛交換を拒否します。藤本四段も△5七歩と垂らして飛車の利きを止め、銀取りに△7三桂と跳ねると、齊藤四段は▲8三角と打ち銀桂交換を甘受して馬を作ります。藤本四段が少し迷った手つきで△7七角成と桂を食いちぎり、飛車を馬と刺し違えてから飛金両取りに△6八角と打つと、齊藤四段は金取りに▲8四角と打って飛車に紐を付けます。藤本四段が飛角交換すると、齊藤四段は再び▲8四角と打ち、▲4六桂と打って反撃に転じます。藤本四段は自陣に銀を投じて守りを固めますが、齊藤四段は▲8九飛から香を取って竜を作り、▲5三歩と金頭を叩いて攻め合います。藤本四段は金をかわし、齊藤四段が▲5四桂と跳ねて金に当てると、金を諦めて銀を引き付けます。藤本四段は自陣に金を投じて固めると、1筋を端攻めして先手玉に迫り、△2六竜と銀を食いちぎります。齊藤四段は竜で桂を食いちぎって粘りましたが、藤本四段は△1九飛から即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:0勝 - チーム千田:1勝

二局目:藤井聡太竜王 vs 千田翔太七段

チーム千田は藤本四段の連投を回避し、早くもリーダー対決となります。先手の千田七段が角換わりに誘導し腰掛け銀を目指すと、藤井竜王は早繰り銀で7筋から仕掛けます。千田七段が2筋を継ぎ歩攻めすると、藤井竜王は△7六歩と打って銀を引かせてから▲6四銀と飛車のコビンを守ります。藤井竜王が△4四歩と桂取りに突くと、千田七段は銀取りに歩を打ちます。藤井竜王が△4六銀~△5七銀成と歩を2枚削って銀を捨て、△3七角と王手で打ち込むと、千田七段は▲4八角と合わせます。藤井竜王が△7三角成と馬を作ると、千田七段は▲6七金と寄って角の利きを銀に当てて引かせます。藤井竜王は△3三桂~△4四桂と2枚の桂を銀2枚と交換しますが、千田七段は1筋を端攻めして押さえ込みます。藤井竜王は馬を角にぶつけて交換し、千田七段が金取りに▲5五桂と打つと、△4六角と王手桂取りで切り返します。作戦会議室では西田五段が「ウッカリでしょ」とつぶやきますが、千田七段は動じることもなく飛車を5筋に回して角に当てます。千田七段が更に飛車取りに▲7一角と打つと、藤井竜王は△3七角成と飛車に当て、お互いに飛車を取り合います。千田七段は▲7八飛と打って後手玉に迫りましたが届かず、藤井竜王は△6九銀~△3八飛と先手玉に迫り、即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - チーム千田:1勝

三局目:齊藤裕也四段 vs 西田拓也五段

チーム藤井はジャンケンに勝った齊藤四段が出陣し、振り飛車党同士の対決となります。先手の齊藤四段が中飛車に振ると、西田五段は2枚の銀を三段目に上げてから向かい飛車に振ります。齊藤四段が飛車を2筋に戻して受けてから穴熊に潜ると、西田五段は4筋の歩をぶつけて角を交換します。西田五段は2筋に"と金"を作り、齊藤四段が▲4二角から馬を作ると、△2九飛成と竜を作ります。齊藤四段が銀の両取りに桂を打って銀桂交換すると、西田五段は竜を引いて馬と交換します。齊藤四段が▲6一飛と打ち込むと、西田五段は△7一角と打って守ります。西田五段は飛金両取りに△7六桂と打ち、金桂交換してから再度金取りに△7六桂と打ちます。齊藤四段は▲7四歩から反撃し、▲7四桂と王手しますが、西田五段が玉を9筋にかわすと届きません。西田五段は△7九銀から先手玉に攻め掛かり、先手陣の金銀を剥がして寄せ切りました。
チーム藤井:1勝 - チーム千田:2勝

四局目:澤田真吾七段 vs 西田拓也五段

チーム千田は相手を澤田七段と読み、西田五段を連投して同門対決となります。先手の西田五段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、澤田七段は左高美濃から穴熊に潜ります。西田五段が▲7六銀と上がり▲8五桂と歩を取ると、澤田七段は△7五銀とぶつけ、銀で取らせてから△8五飛と桂を取ります。西田五段は5筋の歩を取り込みますが、澤田七段は4筋の歩を取り込んで金を吊り上げ△5七角成と馬を作ります。西田五段は4筋の金頭を歩で叩き、澤田七段が金で5筋の歩を取ってかわすと、金取りに▲4三銀と打ち込みます。澤田七段が構わず8筋の角頭を歩で叩くと、西田五段は銀交換して再度▲4三銀と打ち込みます。澤田七段は角を取りますが、西田五段は金を取って後手玉に迫ります。澤田七段が馬を自陣に引き付けると、西田五段は▲4三銀~▲4二歩と小駒で馬を攻めます。澤田七段は馬を1筋にかわして△4六歩から反撃に転じますが、西田五段は丁寧に受けてから攻防に▲5五角と打ちます。最後は西田五段が▲4四飛と銀を食いちぎり、そのまま即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:1勝 - チーム千田:3勝

五局目:藤井聡太竜王 vs 藤本渚四段

劣勢となったチーム藤井はリーダーが出陣し、現役最年少棋士との対局となります。後手の藤本四段が角道を止め雁木調の駒組みを進めると、藤井竜王は飛車先の歩を交換して角も交換します。藤本四段が△3八角と打って馬を作ると、藤井竜王は1筋を端攻めします。藤本四段が△3三金と寄って2筋を補強すると、藤井竜王は角を馬に当てて交換します。藤本四段が△2四角と打って端を守ると、藤井竜王はじっと4筋の歩を伸ばします。藤本四段は玉を5筋に早逃げし、△3四金と上がって3筋の位を支え、△4七歩と垂らします。藤井竜王は▲2五桂と跳ねて後手の角の利きを逸らしてから垂れ歩を払い、5筋の歩をぶつけて銀交換します。藤井竜王が▲7四桂~▲8三角と飛車を追うと、藤本四段は飛角交換に応じます。藤井竜王は王手で▲4一飛と打ち込み竜を作ると、上下左右からの挟撃態勢を作って寄せ切りました。
チーム藤井:2勝 - チーム千田:3勝

六局目:澤田真吾七段 vs 千田翔太七段

チーム千田はリーダーが出陣し、同門対決となります。後手の澤田七段が9筋の位を取り三間飛車に振ると、千田七段は▲8七銀と上がり9筋を端攻めします。澤田七段が△8二銀と上がって端を補強すると、じっくりした駒組みに戻ります。澤田七段が6筋の歩を伸ばして桂で取らせ、9筋を清算して入手した歩で6筋の桂を捕獲します。澤田七段が△9一香と打つと、千田七段は▲9九香と打ち返して下段飛車の活用を図ります。歩切れの澤田七段が△9三銀と香の利きに差し出して辛抱すると、千田七段は▲8六角と覗いてから2筋の歩を突き捨て、飛車取りに▲4一銀と打ち込みます。澤田七段が飛角交換に応じると、千田七段は▲2三飛と打ち込み、竜を作って攻め込みます。澤田七段が王手で△8四角と打って反撃すると、作戦会議室では藤井竜王が「角が、キター!」と歓声を上げます。千田七段は執念の粘りを見せ、▲6二銀成から先手玉に迫りましたが届かず、澤田七段は△3九角成から長手数の即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:3勝 - チーム千田:3勝

七局目:澤田真吾七段 vs 藤本渚四段

チーム藤井はリーダーの要請に応えて澤田七段が連投します。先手の澤田七段が相掛かりに誘導し、藤本七段は飛先の歩を交換して横歩も取ります。澤田七段が飛先の歩を交換して角を交換し、左右の桂を跳ねて▲5五飛と後手の玉頭に狙いを定めると、藤本四段は△4四角と自陣に据え、6筋の歩を突いて桂跳ねを防ぎます。澤田七段は飛車を8筋に回して9筋を端攻めし、香を吊り上げて▲9一角と打ち込んで馬を作り、8筋を継ぎ歩攻めして後手の飛車を押さえ込みます。辛抱を続けた藤本四段が△3三桂と跳ねて馬に当てると、澤田七段は▲8一馬と桂を食いちぎり、▲7三竜と銀を取り返します。藤本四段は自陣に角を打って飛車を竜と交換しますが、澤田七段は角金両取りに▲8三飛と打ち込んで攻め続けます。藤本四段は攻防に△8九飛と打って粘りますが、澤田七段は▲8七銀と後手陣への利きを止め、即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:4勝 - チーム千田:3勝

八局目:藤井聡太竜王 vs 西田拓也五段

後がなくなったチーム千田は、先手番を西田五段に託します。先手の西田五段が三間飛車に振り美濃囲いに構えると、藤井竜王は左美濃に囲います。西田五段が銀取りに6筋の歩を伸ばすと、藤井竜王も銀取りに5筋の歩を伸ばして銀を取り合います。藤井竜王は△6五銀と打って先手の飛車を9筋に追い、2分以上考えて6筋の歩を取り返して銀を支えます。西田五段が銀取りに▲7七桂と跳ねると、藤井竜王は8筋の歩をぶつけて飛車を交換し、お互いに相手陣に飛車を打ち込んで攻め合います。藤井竜王が△2四角と覗いて△6八角成と金を食いちぎり、角取りに△5七金と打ち込むと、西田五段は銀を埋めて受けます。藤井竜王が角金交換して1筋を端攻めすると、西田五段は桂を取って竜を作り、▲2六桂と打って粘ります。西田五段が攻防に▲7六角と打つと、藤井竜王は△4九角と打ちますが、作戦会議室では澤田七段が「んっ」と言って固まります。西田五段に大きく振れた評価値は、西田五段が▲1三銀と王手すると、再び藤井竜王に大きく振れます。西田五段は王手を続けましたが届かず、藤井竜王は△3八金から即詰みに討ち取りました。
チーム藤井:5勝 - チーム千田:3勝

第二試合の結果

チーム藤井は、リーダーの藤井竜王が圧巻の3戦3勝でチームを牽引しました。澤田七段も初出場とは思えない落ち着いた指し回しで、チームがビハインドの状況から連投連勝してチームの勝利に大きく貢献しました。新鋭の齊藤四段は初白星はお預けとなりましたが、チームの予選突破に向け、大きな力になれるよう期待したいと思います。
チーム千田は、リーダーの千田七段が2戦2敗と結果を残せず、チームに勢いをもたらすことはできませんでした。西田五段はこの試合でも2勝を挙げてエースとしての責任を果たしていますし、藤本四段も同期対決を制して貢献しました。チームとして予選突破の可能性は十分あり、本戦に進めば個性的な将棋を魅せる面白い存在になりそうです。

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