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ニュージーランドの友が呼んでいた(国際免許証が記憶を呼び戻した)

「国際免許証まだ返却されてませんね」

「あっ忘れてました」

「近くの警察署に返却してください」

「わかりました」

思い出した。ニュージーランドに行ったときの国際免許証。

2年前の夏、ニュージーランドに行った。妻と息子に、ニュージーランドの星空を見せてあげたかった。

そしてもうひとつ、友人のKevinに会うためでもあった。しかし、Kevinのメールアドレスもわからない。かすかな記憶だけを頼りに向かった。 カンタス航空で、シドニーを経由してオークランド空港までの9時間のフライト。20年前は、大韓航空機で韓国を経由してニュージーランドに行った。韓国での乗り継ぎだけで、10時間ぐらい待たされた。

Kevinの年齢もわからない。20年前で、40代か50代なので現在70歳前後だと思う。店をやっているからと、アドレスを教えてくれたので、探して行ってみるとアダルトショップだった。
「お前のガールフレンドにどうだ」
とスケスケの下着を指して笑った。
「ノーサンキュー」
ひとくせあるが、人間味のある憎めない男だ。

Kevinはガールフレンドと一緒に、私の歌を聴きに来てくれた。
「今日は声が出ていない」
「今日はまあまあだ」
いつも、辛口のアドバイスをしてくれた。
地元の90FMラジオに出演できたのも、Kevinが紹介してくれたからだ。
10年ぐらい前、ニュージーランドから電話がかかってきた。日本人男性が
「電話をかけてくれと頼まれたんです。かわります」

受話器から懐かしい声が聴こえた。声だけでわかった。Kevinだ。一瞬で記憶がよみがえって、泣きそうになった。相変わらず元気で、一方的にしゃべってきた。日本に遊びに行くと言っていたが、それからは音信不通だ。
電話をかけてくれた日本人男性が、最後に
「あなたのことばかり話していました。あなたのことが、本当に好きなんですね」
オークランドからレンタカーで400キロ、Kevinを探す旅が始まった。

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