育児休暇中の収入はどれくらい? 給料とボーナスから実際に確認してみる
子育てにまつわる不安や悩みの多くは、お金に由来することではないでしょうか。
勤める会社で育児休暇の制度があっても、収入が減ったり復帰したりするのが難しそうというイメージがあるかもしれません。
ですが、安心して子育てを行なうために大切なのは、事前に育児休暇中の収入を計算し、どんなサービスや制度が使えるのかを確認しておくことです。
今回はその計算方法や、収入に合った育児・教育費、さらに各種保険へのお金のかけ方や貯め方が分かる書籍『書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方』を紹介します。
著者の前田菜緒さんはファイナンシャルプランナーで、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、2級DCプランナー、公的保険アドバイザー、夫婦問題診断士といった資格を持ち、育児・家事・仕事を両立したい人たちを支援されています。
育児や教育においてどの支出を優先すべきか、そのためにどうやってお金を準備していけばいいのか。そうしたお金に関する悩みを「実際に書き出してみること」で確認していくのが本書の狙いです。
この記事では、育児休暇中の手当や収入などを計算する方法を紹介した「第2章 育休中の収入や使える制度を確認しましょう!」の一部を抜粋します。ぜひ参考にしてみてください。
育休手当はどれくらいもらえる?
育休は男女問わず取ることができます
育休中の収入を確認しましょう
育休中は、社会保険の優遇が大きいです
育休は父親と母親のどちらも取ることができます
産休が終了すると、育児休業(育休)に突入です。0歳児はとてもかわいいですが、とにかく育児が大変。赤ちゃんの成長は著しく、その分母親の体力も消耗します。だからこそ、育児は夫婦で協力し合いたいものです。
それに、2022年は父親が育休を取りやすいように育児休業制度が大きく変わります。育休中にもらえるお金はもちろん、2022年の制度改正もふまえた育休の取り方についてお伝えします。
育休手当の金額を確認する
育休手当とは、正式には育児休業給付金といいます。育休手当は、職場復帰を前提としていますから、退職する予定なら受け取ることができません。また、育休開始前の2年間のうち、雇用保険に1年以上加入していなければ受け取ることができません。
では、育休手当の金額を確認しましょう。
最初の6か月の育休手当は、給料の手取りと大差はない
育休手当は非課税となり、社会保険料も差し引かれません。このため最初の6か月間の育休手当は給料の手取りとそれほど変わらない金額ではないでしょうか。手取りとは、給料から社会保険料と税金を差し引いた金額です。財形や社内積立などは、考慮しません。
なお、育休手当は所得税と住民税はかかりませんが、実際は、育休期間中に住民税を納めます。これは、住民税は前年の所得に対して課税されるためです。タイムラグがありますから、住民税が非課税になる実感は1年遅れでやってきます。
育休制度は手厚いですが、保活も忘れずに
育休中は社会保険の支払いが免除されます。しかし、病院に行けば医療費は3割負担ですみますし、老後の年金も減ることはありません。社会保険料を納めたものとして将来の年金が計算されるためです。
このように、育休期間は仕事をしていなくても一定の収入を得られ、安心して子育てできる経済的環境があります。できるだけ長く育休を取りたいと考えてしまうかもしれませんが、それはちょっと危険かもしれません。
2歳まで延長できるからと保活(子どもを保育所に入れるための活動)をしなかった結果、2歳まで保育所が決まらず退職せざるを得なかった話も聞きます。幼い子どもをかかえての再就職は厳しいので、こういったことになると大変でしょう。
最長2歳まで育休は取得できますが、それは、保育所に入所できなかった時の保険です。どのタイミングで保育所に入所させるか、そのためには、どのように活動すべきか、計画的に保活をすることが仕事復帰と安定収入につながります。
法改正で父親の育休が取りやすくなる!
育休を取りやすい職場環境作りが義務化されました
産後パパ育休が新設されます
育休を分割して取得できるようになります
育休を取りやすい職場環境作りが義務化された
父親も原則子どもが1歳になるまで育休を取ることができ、保育所に入れなければ最長2歳まで育休を延長できるルールは母親と同じです。しかし、父親が1年以上育休を取るケースは珍しいでしょう。実際、厚生労働省の2017 年の調査でも、父親の育休期間は1週間未満がもっとも多いという結果があります。
職場が育休を取りづらい環境だという人も多く、2022年4月から会社は育休を取りやすいように雇用環境を整備しないといけないという法律ができました。性別に関係なく、会社が育休の説明や育休取得の意向を確認しないといけないのです。もちろん、育休を取らないように強要することは違法なので、父親の育休取得にも変化が出てくるのではないでしょうか。
育休を分割して取得できるようになる
2022年10月からは、産後パパ育休( 出生時育児休業) が新設されます。これは、育休とは別の制度で、次の図のアのように出生後8週間以内に4週間まで休暇を取れ、分割して取ることもできます。
また、子どもが1歳になるまで父親も母親も育休を2回に分割して取れるようになります。これによって、図イのように、母親育休→父親育休→母親育休のように夫婦間で育休を交代することができるのです。父親にいたっては、図ウのように産後パパ育休と合わせると合計4 回育休を取れるようになります。
また、図エのように1 歳以降の途中交代も可能です。今までは、途中交代できる時期が限定されていたのですが、例えば母親が仕事復帰をするための慣らし保育時は、父親が育休を取ることもできます。
父親が出生直後から4週間以上育休を取りたいなら、産後パパ育休を取得せず、図オのように育休を取得できます。その後、図カのように、2回目の育休も取れます。ちなみに、父親は出産予定日から育休を取得できて、育休手当も出産予定日からもらえます。出産予定日より早くに産まれて出生日から育休を取得するなら、出生日から育休手当が支給されます。
父親が育休取得した場合の収入を計算
父親の育休手当も社会保険料が免除になる場合があります
父親が育休を取っても大丈夫
育休取得時の収入を計算してみましょう
社会保険料の免除要件が変わります
母親同様に父親の育休手当にも税金はかからず、社会保険料も免除されます。しかし、育休期間が母親ほど長くない父親の場合、誰しも社会保険料が免除されるわけではありません。
社会保険料が免除となる条件は、育休期間に月末を含む場合です。その月がボーナス月なら、ボーナス分の社会保険料も免除されます。一方、たとえ月初から2週間育休を取ったとしても、育休期間に月末が含まれなければ社会保険料は免除されません。
月末に1日だけ育休を取った人は社会保険料が免除されて、月初から2週間取った人は免除されないなんて、なんだか不公平ですよね。それに、ボーナス月の月末だけ育休を取る人もいるようで、これはあきらかなルール違反です。そこで、2022年10月からは、次の2つの要件が新設されました。なお、この制度は母親も適用されます。
社会保険料免除の新要件(2022年10月から適用)
1か月間に2週間以上育休を取得した場合は、育休期間に月末が含まれていなくても社会保険料が免除される
育休期間に月末が含まれていれば、従来通り社会保険料は免除される。ただし、ボーナス月の社会保険料は1か月超の育休を取得した場合だけ免除対象になる
「父親が育休を取ったら家計は大変になる」の誤解
父親が育休を取ったら、収入が減るという意見を聞くことがあります。しかし、育休期間は社会保険料が免除される上、育休手当は非課税ですから、育休手当と給料の手取りとの差は実質2割程度です。しかも、父親が育休を取る場合、一般的には母親ほど長期間休まないでしょうから、家計への影響は限定的です。
それよりもゼロ歳という限られた期間に、赤ちゃんのお世話を1日中できることのほうが人生に何度も訪れない貴重な経験となるのではないでしょうか。その経験をした父親はその後も育児参加率が上がるという話も聞きますし、そうなると母親の育児負担が減り、母親の働き方にも良い影響を与える結果となります。
父親は、産後パパ育休と合わせると4回育休を分割して取れます。取り方はいろいろありますが、ここでは父親が、赤ちゃんが「①出生後すぐに1か月間と、3か月後に2か月間<育休>を取得する場合」と、「②出生後1週間、育休ではなく<有休>を取得する場合」の収入の違いをシミュレーションしてみます。
給料40万円の父親の3か月間の収入比較
①出生後すぐに1か月間と、3か月後に2か月間〈育休〉を取得する場合
育休手当1回目:40 万円×67%=26万8,000円(1か月間分)
育休手当2回目:40 万円×67%×2=53万6,000 円(2か月間分)
1回目と2回目の育休手当合計=80万4,000万円
②出生後1週間、育休ではなく〈有休〉を取得する場合
40万円-社会保険料(給料の15%)-所得税・住民税(給料の10%)=給料手取り30万円(1か月間分)
給料手取り3か月分合計=90万円
上の①の育休手当合計が80万4,000円、②の給料手取り3か月分合計が90万円なので、育休を取ると手取り額が約10万円減ることになります。仕事を休んで約10万円しか減らないともいえますが、もし、2回目の育休期間にボーナス月が含まれていれば、ボーナスの社会保険料も免除になります。育休を取得する・しないでボーナスの手取り額は、次のように異なります。
ボーナス80万円の手取り額の比較
育休を取得する場合
ボーナス額面金額80万円-所得税8万円=72万円育休を取得しない場合
ボーナス額面金額80万円-所得税8万円-社会保険料12万円(ボーナス額面金額の15%)=60万円
育休を取得したほうが、12万円も手取り額が多くなります。ボーナス月でなければ、手取り額が10万円の減少でしたが、ボーナス月が絡んでくると、育休を取得したほうが手取り額が増えるという逆転現象が起きるのです。
つまり、給与で比較すると手取り額は10万円減少、ボーナスで比較すると12万円の増加なので、相殺するとプラス2万円ということです。1週間程度有休を取っていつもどおり給料をもらうより、ボーナス月なら1か月超しっかり育休を取っても、家計への影響はほとんどないということがわかりました。
忘れてはいけないのが、育休は育児をするための休みであり、自分の体を休めるためでもなく、社会保険料を免除するための制度でもないということです。目的を勘違いすることなく、夫婦で育児を協力し合ってくださいね。
育休取得時の収入を計算してみる
父親が育休を取るとわが家の収入はどうなるでしょうか? 仮に育休を2か月取得したとして、夫の給料とボーナスの明細を基に手取り収入を計算してみましょう。
計算結果、育休を取得すると家計が厳しくなりそうだとしても、妻が夫の扶養に入ることができれば、節税できるかもしれません。
育児で使えるサービスや制度
育児サポートのサービスや制度はたくさんあります
住宅ローンの金利を優遇してくれる銀行があります
生協やネットスーパーなどで特典が受けられます
訪問型育児支援サービス
サポーターが自宅を訪問し、子育ての悩みを一緒に解決してくれたり、育児を支えてくれたりするサービスです。自治体が無料で行っているケースが多いですが、「ホームスタート」など民間団体でも無料で利用できるサービスがあります。初めての育児で悩みを解決したい場合はもちろんですが、下の子どもが生まれて、上の子どもの面倒を見られない時などに利用すると、上の子どもとの時間を作ることができます。
産後ヘルパー
ヘルパーが自宅に来て、食事の準備や掃除洗濯などの家事に加え、赤ちゃんのおむつ交換など赤ちゃんのお世話も手伝ってくれるサービスです。料金がかかるのが一般的ですが、自治体が補助してくれるので、一般的な料金に比べて割安になっています。
例えば東京都江戸川区では、3歳未満の子どもや双子以上の胎児を身ごもっている妊婦がいる家庭にヘルパーを派遣しています。ヘルパーは、食事を作ったり子どもを散歩に連れて行ってくれたりして、料金はなんと1時間500円です。しかも、0歳児は条件付きですが、無料です。
利用できる回数に上限があることもありますが、育児でヘトヘトになっている母親にはありがたいサービスです。赤ちゃんがいる時期にしか利用できない期間限定サービスなので、お住まいの自治体のホームページなどでぜひ調べてみてださい。
子育てひろば
「子育てひろば」「親子ひろば」など呼び方はさまざまですが、多くの自治体では、赤ちゃんから幼児まで無料で遊べる施設があります。ママ友作りや息抜きにもなります。
住宅ローンの金利優遇
出産すると住宅ローンの金利を期間限定で引き下げてくれる、銀行のサービスです。住宅ローンを返済している銀行にサービスがあれば、利用しない手はないので確認してみましょう。
三井住友信託銀行:出産後1年間住宅ローン金利が0.1%優遇
三菱東京UFJ銀行:出産後6か月以内の申し出で、1年間0.2%の金利優遇。ただし、契約者が女性の場合のみに適用
生協やネットスーパーの手数料などの割引
生協やネットスーパーを利用する際は、一般的には手数料がかかります。しかし、赤ちゃんや妊婦がいる家庭はその手数料が条件付きで無料になったり、割引になったりします。また、出産のお祝いの商品をプレゼントしてくれたりする生協もあります。
イトーヨーカドー:配達料金が登録日より4年間は、330円が102円になる
楽天西友:「楽天ママ割メンバー」ならポイントアップ、バースデークーポン特典があり
コープデリ:赤ちゃん割引で配達手数料が無料(エリアで割引内容が異なる)
パルシステム:キッズ特典で配達手数料が無料(エリアで割引内容が異なる)
エフコープ:妊娠中から子どもが小学校を卒業するまで、子育て割引で配達手数料が52円になる
コープこうべネット:育児サポートで、利用料が無料や割引きになる
離乳食無料レストラン
赤ちゃんとのおでかけは、とにかく荷物が多くなります。離乳食が始まるとなおさらです。そんな大変な時に、お財布にも荷物にもやさしい離乳食を無料でサービスしてくれるレストランがあります。
不二家レストラン、IKEA レストラン、トマト&オニオン、100本のスプーンなど
詳細や最新情報は、ホームページなどでご確認ください。
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