育児のイライラは危険を教えてくれる大事なサイン、アンガーマネジメントで上手に感情表現を
子どもの些細な言動が引っかかる、子どもが言うことを聞いてくれない……子育て中はついイライラしがちです。
愛する我が子にイライラを感じるなんて、できるだけ避けたいもの。ですが、実はその感情は「危険なこと」や「守りたいもの」を教えてくれるサインでもあります。
例えば、子どもが食事中に箸で遊ぶのを見てイラッとするのは、子どもが怪我をするかもしれないという危険を感じているから。イライラや怒りを感じないようにするのは難しいですが、その気持ちがなぜ生じたのか、どのように対処すればよいのかを知ると、反射的に感情を発散させずにすむようになります。
こうしたマイナスの感情を理解し、イライラと上手につきあうための方法がアンガーマネジメント。家庭や職場などさまざまな場で用いられていますが、もちろん子育てにおいても有効な方法です。
翔泳社では、このアンガーマネジメントを育児に取り入れるコツを解説した『ママも子どももイライラしない 親子でできるアンガーマネジメント』を発売中です。
本書では日本アンガーマネジメント協会認定のアンガーマネジメントコンサルタントとして活動されている小尻美奈さんが、特に子育て中のママに向けて「イライラするのは当たり前」「イライラは大切な気持ちのひとつ」と優しくアンガーマネジメントの方法を解説してくれています。
■著者について
小尻美奈(こじり・みな)
幼稚園教諭、保育士などを経て、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会認定のアンガーマネジメントコンサルタントとして、学校・省庁・企業などでアンガーマネジメントの講演や研修を行う。
また、同協会本部主催登壇講師としてキッズプログラムの開発や指導者の育成にも従事。アンガーマネジメントの認定資格者の指導人数は約800名。杉並子育て応援券サービス提供事業者「おひさまママン」として保護者に向けた講座も開催している。
イライラは、感じた瞬間が最も強い状態にあります。なので、まず6秒間待つことで衝動的な行動を避けられます。本書ではこの「6秒マジック」を柱として、イライラの落ち着かせ方や、イライラしにくくなる方法を多数紹介しています。
また、子どもが朝起きない、宿題を後回しにする、部屋を片付けない、しょっちゅう兄弟喧嘩……など、よくあるシチュエーション別にアンガーマネジメントの活用法を具体的に解説します。
アンガーマネジメントに取り組むうえで大事なことは、イライラが必ずしも悪いものではなく、大事なサインでもあると知っておくことです。今回はイライラがいったいどんなサインなのかを解説した「第2章 「イライラ」が教えてくれる8つのサイン」の一部を抜粋して紹介します。
また、「ダ・ヴィンチニュース」には具体的なアンガーマネジメントの方法を紹介した記事が掲載中です。こちらもぜひご覧ください。
以下、『ママも子どももイライラしない 親子でできるアンガーマネジメント』から「第2章 「イライラ」が教えてくれる8つのサイン」の一部を抜粋します。掲載にあたって編集しています。
イライラのサイン1:「危険」を教えてくれる
トラブルを回避できる大事なサイン
イライラの大事な機能のひとつが、危険を教えてくれることです。子どもが食事中に箸で遊んだり、歯ブラシを口に入れたまま走りだしたりしたときにママがイライラするのは、転んだ拍子に箸や歯ブラシが「喉に刺さるかもしれない危険」を察知しているから。ヘルメットを被らずに自転車に乗ろうとする子どもに「こらっ!」と言ってしまうのは、事故に遭うリスクを察知するからです。
目の前に危機や脅威が迫り、「危ない!」「傷つけられる、侵害されるかもしれない!」と感じたときに、私たちはイライラの感情を抱くようになっています。そして、そのおかげで怪我や事故を回避することもできるのです。つまり、イライラは生きていくために必要なものと言えるでしょう。
普段は出せないような能力が、危険が差し迫った状況で発揮されることを「火事場の馬鹿力」と言いますが、こうした力が出るのは危険を察知できるからです。人は危険を感じる状況に遭遇すると、恐怖に反応して交感神経系の神経インパルスを発し、心拍数や血圧を上昇させて、筋肉をより速く強く動かせるような緊張状態にします。瞬時に体を動かして、危機に備えるためです。
ママが感じるイライラも、危険を察知して警戒レベルが上がっている証拠で、イライラのサインがあるから、自分や子どもを守ることができると言えます。
「本当の危険」と「見守ってもいい危険」
「子どもを公園で遊ばせるだけでも、イライラしてストレスを感じるんです」と話すママがいました。子どもを公園で遊ばせるという状況に、「遊具から落ちないか?」「不審者はいないか?」「熱中症にならないか?」など、ママの危険センサーが反応しているためだと考えられます。
何を危険と感じるかは人によって違いますが、自分が何に対して反応しやすいのかを知っておくのもひとつの方法です。「自分がイライラ(危険)を感じる状況」がわかれば、「これを危険と感じているんだな」と冷静になったり、あらかじめ安心できる環境を整えることもできます。
親がすべての危険を取り除くことはできませんし、仮にできても、まったく危険のない環境で育った子どもは、何が危険で何が安全かを体得することができないでしょう。子どもは小さな危険を体験しながら、危険に対する感度を上げて、自分自身を守れるようになっていきます。ママはイライラで危険サインに気がついたら、本当に危ないことはしっかりと伝えて回避させ、そうでない場合はあえて見守って子ども自身に体験させてみましょう。
もしサインに気づかなかったら?
●子どもの事故や怪我などのトラブルを回避できないかも
●子どもにとって安心で安全な環境を整えることができないかも
●子どもに「何が危険であるか」を教えることができないかも
イライラのサイン2:「守りたいもの」を教えてくれる
みんなそれぞれ「守りたいもの」を持っている
イライラは防衛感情と言われ、自分の守りたいものが危険にさらされたり、脅かされたりしたときに生まれます。ですから、イライラは自分の守りたいものを教えてくれるサインでもあります。
あなたが守りたいものは何でしょうか? 自分の尊厳、価値観、アイディア、プライド、立場、空間、環境、時間、個性、思い出の品、家族……など、たくさんあると思います。「子ども」もママにとって最も守りたいと思う存在ではないでしょうか。子どもが仲間外れにされたり、嫌がらせを受けたりしたときに強いイライラを感じるのは、子どもがママにとって守りたい存在だからです。
私たちは、自覚の有無にかかわらず、みんなそれぞれ「守りたいもの」を持っています。同じ屋根の下で暮らす家族であっても、一人ひとり守りたいものは異なります。
例えば、ママが散らかった部屋にイライラするのは快適で清潔な空間を守りたいから、帰宅後に手洗いをしない家族にイライラするのは家族の健康を守りたいからです。
パパが、休日にかかってきた仕事の電話にイライラするのは、家族とのプライベートの時間を守りたいから、休日の過ごし方についてママから小言を言われてイライラするのは、自分の価値観を守りたいからかもしれません。
子どもが、ママに紙飛行機を捨てられてイライラするのは、高い完成度で作り上げた自分の技術、アイディア、プライドを守りたいのかもしれません。それぞれの守りたいものが共同生活の中に存在し、ときに相容れないものだったりするからこそ、イライラを生じる環境ができあがります。
イライラをきっかけに「守りたいもの」を伝える
仕事と家庭の両立を頑張るママが、こんな話をしてくれました。
「私は断れない性格で、不満に思いながらも、何でも仕事を引き受けてしまっていたんです。気がつけば心身ともにボロボロで、子どもに八つ当たりをしていました。自分の体も心も家族も守れず、傷つけていたんですね……」
このママは、サインに気がつき、イライラを上手に伝えることで、自分を守ることができたそうです。
「嫌だ」と感じているのにイライラを押し殺すのは、自分自身を傷つける
行為です。サインによって自分の守りたいものに気づいて、それを守るた
めに上手にイライラを表現できるようになりましょう。
もしサインに気づかなかったら?
●自分が守りたいものに気づけないかも
●自分自身や本当に守りたいものを傷つけてしまうかも
●自分にとって「怒る必要のあること」に気づけないかも
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