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発達障害の人が苦手な予定や時間の管理は、スケジュール帳で解決する

会議の予定があるのに気づいたら約束の時間を過ぎている。
締切が迫っているのについ趣味に夢中になって作業に取りかかれない。

職場でこうした行動を繰り返していると、「仕事ができない」「サボっている」など、上司や同僚から悪い評価を下されてしまいます。性格の問題と片付けられることも多いのですが、実は「発達障害」が原因であることも少なくありません

発達障害は一般にADHD(注意欠陥・多動性障害)とASD(自閉スペクトラム症)に分類されます。ADHDとASD、どちらの場合でもスケジュール管理が苦手という特徴があり、日常生活はもちろん、職場で苦労している方もいるのではないでしょうか。

しかし、対策ができないわけではありません。これまで特定非営利活動法人「さらプロジェクト」などで発達障害の当事者をサポートしてきた對馬陽一郎さんは、スケジュール帳の活用を勧めています。

こうした発達障害の人が働く際に役立つさまざまなノウハウを、對馬さんは著書『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本』(翔泳社)で解説してくれています。

今回は本書から、予定やスケジュールを忘れることが多くて困っている人に参考にしてもらいたいスケジュール帳活用法のパートを紹介します。

ADHDの方なら一元管理できるシステム手帳、ASDの方ならメモ帳と別になったスケジュール帳といったように、自分が苦手とすることを解決できるスケジュール帳の選び方と使い方がしっかりと説明されているので、ぜひ読んでみてください。

以下、『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本』(翔泳社)の「第2章 「段取りができない」を何とかしたい!」から一部を抜粋します。掲載にあたって編集しています。


予定やスケジュールを忘れてしまう

スケジュールが立てられない。時間や締切りを守れない。発達障害の当事者には、時間感覚や未来予測が苦手な人が多い。この問題の対策には、必要な情報を用意しておくことがポイントだ。

●ASDの人は、独立したスケジュール帳を用意する。メモ帳と一緒にしないこと

●ADHDの人は、逆に1冊の手帳で管理。多機能なシステム手帳を活用しよう

事例:その日やるべきことや予定をすぐ忘れてしまう

予定が入ったら、手帳にはきちんと書き込んでいる。けれどもそれっきり忘れてしまって、当日になってから同僚に「あれ? 今日は○○支社で会議じゃなかったっけ?」と言われて大慌て。

記憶力がないのはわかっているのだけれど、手帳を読み返すことも忘れてしまうことが多くて、一体どうしたらいいんだろう?

原因:ASDの計画的遂行の困難、ADHDの集中持続の困難がスケジュール管理にも影響する

発達障害を持つ社会人の多くが抱える課題の1つが、スケジュール管理の難しさだ。

ASDには、計画的に行動することが苦手という特性がある。それは、気持ちを切り替えることの困難さに原因があると考えられる。興味の対象に注意が向くと、仕事の予定など自分にとって重要なことも含めて他のことにまったく無頓着になってしまうのだ。

ASDの場合は、まずスケジュールを自分の興味の対象に持ってくることが必要になる。

ADHDは逆に、気が散りやすい特性を持つ。極端な場合、予定を覚えていても目の前のやりたいことを最優先にしてしまうことがある。

ADHDの場合は、常に予定を守ることを最優先にするため、自分を「刺激しておく」工夫が必要になる。

ADHDを抱えていると、ものをなくしやすいことも多い。予定を聞いて適当な紙という場合にメモしてしまい、そのまま仕舞い込んで忘れてしまったりもする。予定を管理するものは、なるべく統一させておく必要がある。

解決法:「自分にベストのスケジュール帳」にこだわろう

ASDでもADHDでも、手帳に対して特にこだわりがない場合、安いメモ帳で済ませがちになる。

本来どちらも、ものに対する愛着や嗜好は強い人が多い。コレクター趣味があったり、「ものが捨てられない」というタイプが多いのも、このためだ。逆に愛着や興味が持てないものは、どうしても忘れがちになってしまう。

そこであえて手帳にこだわってみることで、自分の手帳に愛着を持てるようにしてみよう。

手帳にこだわりを持つことで、スケジュールに意識を向ける

年や年度の変わり目には、大型の文具店に手帳コーナーが設置される。自分がしっくりくる手帳を見つけるまで、何軒でもハシゴするのが良い。使いやすさも重要だが、手触りや色、デザインといった点もおざなりにできない。最低でも、1年付き合うのに見合う品であるのが条件だ。

良い手帳は、やはりそれなりに値が張る。予算の都合もあるだろうが、ここは少々高価であっても一番気に入ったものを選ぶことをすすめたい。妥協は愛着への邪魔になる。仕事の必要経費と思い切ることも、ときには必要だ。

こだわりの手帳を持つことで、これまで予定を忘れがちだった人が、一転スケジュールにうるさいビジネスパーソンになる例もある。特にASDは本来、約束や予定には厳密な性格が多い。無頓着になりさえしなければ、几帳面さは人並み以上なのである。ビジネス系の手帳にお気に入りのものが見つからないときには、趣味系の手帳を使う選択肢もある。

歴史が好きならば、歴史手帳や戦国手帳、幕末手帳といった商品が発売されている。鉄道手帳、天文手帳、猫手帳とジャンルもさまざまである。どれもスケジュール機能があり、予定を書き込むことができる。

趣味系の手帳を仕事で使うことに抵抗を感じるかもしれないが、それで仕事がうまくいくのであれば実利のほうが重要である。表紙がちょっとビジネスにはそぐわないときには、サイズに合わせた手帳カバーも購入しておくと良いだろう。

おすすめのスケジュール帳タイプ

いざスケジュール帳を選ぼうとしても、さまざまな種類がある。これまで興味のなかったところからいきなり選ぶのは難しいことかもしれない。スケジュール帳には1年タイプや2年タイプ、月間ブロックタイプや週間バーチカルタイプなど、さまざまな種類があり、仕事の内容や好みなどで使い分けることができる。

ここでは、ADHD・ASDそれぞれの人におすすめのスケジュール帳のタイプを紹介したい。あくまで目安なので、より自分に合ったスケジュール帳を見つけたならそちらに移り変えてしまってかまわない。

気の散りやすいADHD タイプは、システム手帳を活用。すべてを1冊で管理しよう

気持ちが次々と移り変わりやすいADHDタイプには、1冊ですべてを一元管理できるシステム手帳が向いている。

スケジュール、メモ書き、行動記録を1冊で俯瞰できるようにすることで、刹那的になりがちな行動を統合して見返すことができる。何より、何冊もメモ帳やメモ用紙を抱えると管理しきれなくなり、忘れたりなくしたりするリスクも高くなってしまう。

システム手帳にはさまざまなフォーマットのリフィル(差し替え用紙)が別売りされているが、スケジュール管理用には、次の2種類を併用しよう。

・月間ブロックタイプ
・1日1ページ(〜2ページ)タイプもしくはバーチカルタイプ

リフィルは、購入時に最低でも1年分くらいはそろえて入れておこう。途中で足りなくなると、買い忘れたりして、いざというときに書くスペースがなくなったりするので注意したい。

月間ブロックタイプとは、見開きで1カ月分の予定が書き込めるカレンダータイプのリフィル。未来の予定やスケジュールは、こちらに書き込む。

ADHD向けに月間ブロックタイプをおすすめする理由は、大きなスケジュールを視覚的に意識しやすくするためだ。大切なお得意先への訪問日まではあと2日、書類の締切りは1週間後。再来週の土曜日は研修で出勤日。ページを開けば、当日の情報だけでなく1カ月分のスケジュールが目に入る。

ADHDを持つ人には、時間を感覚的につかみにくいという特徴がある。「締切りは〇月〇日」ということ自体はわかっていても、それで自分に残された時間が長いのか短いのかを実感しにくいのだ。

その点、1カ月ブロックタイプのスケジュール帳はマス目で視覚的に日数を見ることができるので、予定までの残り日数を感覚で捉えやすくなる。

「月間ブロックタイプ」はスケジュール管理用として必ず入れてほしいリフィルだが、それに加えて 「1日1ページタイプ」 と 「バーチカルタイプ」 のどちらかを入れておきたい。こちらは予定よりも、当日のメモや記録用として用いる。

1日1ページタイプのリフィルは、名前通り1日分に1ページ丸々使えるフォーマットだ。もちろん予定の詳細を書いておいても良いのだが、メインの使い方は当日の記録や覚書などメモ帳としての利用だ。

その日のことは、とにかくすべてこのリフィルに書き込んでいこう。その日にあったことは電話の内容から会議の決定事項まで、すべて同じページに書き込んでいく。

書き込むことが多いようなら、1日2ページタイプのリフィルに切り替えよう。バーチカルタイプは時間軸のフォーマットになっており、1日の時間進行が管理しやすくなっている

時間に縛られることが多い仕事であれば、これを使って行動記録をつけていこう。自分の行動を客観的に見返しやすいのも、このバーチカルタイプの特徴だ。

営業など時間単位のスケジュールの多い人、フリーなフォーマットでは何を書いて良いかわからない人には、バーチカルタイプのリフィルが良い。それ以外の人は、1日1ページタイプを使ってみることをおすすめする。

1日1ページタイプやバーチカルタイプのリフィルを用いて行動記録をつけるのは、自分の行動を管理して、やった仕事をあとから把握できるようにするためだ。

あちこちに意識を移してしまうADHDを持つ人には1日の中でも多くの仕事に手をつけてしまいがちで、あとからどの仕事をどこまでやったか思い出すのが困難だ。これを記録しておくことで自分がやってきたことを整理したり、速やかに続きを始めたりするのに役立つ。

曖昧さが苦手なASDは、メモ帳とは別にスケジュール帳を用意する

ASDタイプの人はADHDタイプの人とは逆に、スケジュール帳はスケジュールだけの独立したものを選ぶ。メモと一緒にしてしまうと、そのうちいっぱいのメモにスケジュールが混ざってわけがわからなくなる。

フォーマットのタイプは、時間に縛られることが多いならバーチカルタイプ。その日のうちにやればいい、という仕事が多いなら月間ブロックタイプが良い。

バーチカルタイプの手帳ははじめから時刻の目盛りが用意されていて、1日の流れを俯瞰して確認できる。スケジュール帳に書く時点で少なくとも日付と時間を意識する必要があり、予定時間の聞き忘れを防ぐのに効果が高い。

月間ブロックタイプの手帳は、見開きで1カ月の予定を俯瞰できる。「来週からの会議までに資料を作り上げる」といった、日にちをかける仕事の多い人。営業のような外出の仕事の多い人なら、このタイプがおすすめだ。

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