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保育者なら毎日書く「連絡帳」、保護者との架け橋にする書き方のコツは?

保育の仕事をしている方にとって、毎日向き合う業務の1つが連絡帳を書くことです。

連絡帳は、預かっている子供たちが1日どんな様子だったのかを保護者の方に伝え、よりよい保育ができるように信頼してもらうことが目的です。

ですが、特に仕事を始めたばかりの方にとって、連絡帳を書くことは意外と難しいもの。使える時間は限られていますが、保護者の誤解を生まないように的確に子どもの育ちを共有する必要があります。また、わかりにくい文章は保護者の信頼を損ねることにもつながりかねません。

保護者と心地よくコミュニケーションができるような、連絡帳をうまく書くコツを学べれば幸いですが、職場の人も同じように悩んでいるかもしれません。できれば確かなノウハウを知りたいですよね。

そこで今回は、大学で数多くの保育士の養成に関わり、保育所などの顧問を務める浅井拓久也さんが連絡帳の書き方を解説した『先輩保育者が教えてくれる!連絡帳の書き方のきほん』を紹介します。

翔泳社の通販サイトSEshopではPDF版を販売しています。

習う機会がほとんどない連絡帳の書き方は、先輩の真似をすることから始めるケースが多いようです。しかし、それではなかなかうまく書けるようにはならないと浅井さんは指摘します。

本書では保護者に信頼されるためのルールや時短のテクニック、保護者からの難しい質問や要望への答え方など、基本から実践的な知識を解説しています。文章を書くのが苦手な方のために、書き方の基礎も説明しています。

今回は「STEP1 保護者に信頼される!連絡帳10のルール」から一部を抜粋して紹介しますので、毎日何を書けばいいのか悩んでいる、子どもの様子をうまく伝えられない、そんな悩みがある方はぜひ参考にしてみていただければと思います。

以下、『先輩保育者が教えてくれる!連絡帳の書き方のきほん』(翔泳社)から「STEP1 保護者に信頼される!連絡帳10のルール」の一部を抜粋します。掲載にあたって編集しています。

断定的な⾔い⽅をしない

⼦どもには⼦どもなりの気持ちや思いがあります。こういう性格だから、というような決めつけた⾔い⽅をすると、⼦どものよさを⾒逃してしまいます。

【使ってしまいがちな断定的な⾔い⽅】

⼦どもの性格や気質、適性を決めつけたような⾔い⽅があります。たとえば、「攻撃的な性格だから、けんかすることが多いです」、「製作には興味がないから、退屈そうでした」、「⼈前で話すことは向いていないので、つらそうでした」のような⾔い⽅です。

また、⼦どもの性格ではないのですが、保育者の考えが絶対に正しいという⾔い⽅も同様のものです。たとえば、「絶対に退屈だったのだと思います」や「⼀⼈で遊ぶことが好きに違いありません」のような⾔い⽅です。

【断定的な⾔い⽅は保護者の信頼を失います】

乳幼児期の⼦どもは、様々な側⾯で著しい発達をしています。だから、この⼦の性格や気質はこうだ!というようなことはありません。発達段階や状況によって変わります

また、保護者は、園での⽣活や遊びを通じて⼦どものたくさんの可能性を⾒出して伸ばしてほしいと期待しています。だから、断定的な⾔い⽅をすると、「この保育者は⼦どものことを多⾯的にみることができない」という印象を保護者に与えてしまい、信頼を得ることが難しくなります。

【⼦どもの気持ちや思いに寄り添うようにしましょう】

この⼦の性格はこうだから、いつもこうだからと決めつけると、その⼦の気持ちや思いを理解できなくなります。⼦どもの気持ちや思いに寄り添い、⼦どもの⽴場から物事を考えるようにしましょう。

具体的には、どうしてそうしたのか? 他に考えられることはないか? を、その⼦の⽴場や気持ちから考えるようにしましょう

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保護者からの質問にきちんと回答する

保護者からの質問や疑問、悩みにきちんと回答することで、保育者と保護者の円滑なコミュニケーションにつながり、信頼関係が強くなります。

【質問に回答することで保育者と保護者の対話が進みます】

対⾯では⾔いづらいことや質問しにくいことが、連絡帳に書かれていることもあります。こうした質問や悩みにきちんと回答することで、保護者は⾃分の思いや気持ちを受け⽌めてもらえたと感じます。これが、保護者からの信頼につながっていくのです。

【質問に回答していることがわかるように書きましょう】

保護者から「〜でよいですか」とあれば「はい、〜でかまいません」、「どうして〜でしょうか」とあれば「それは、〜だからではないでしょうか」のように、質問に回答していることがわかるようにすることが重要です。また、いくつもの質問があちらこちらに書いてある場合は、質問と回答を線で結ぶなどして、保護者に回答が伝わるようにしましょう

【保護者の質問への対応⽅法は様々あります】

保護者の質問や悩みは様々ですので、保育者はそれに応じた回答をするようにしましょう。たとえば、「来年度の運動会では障害物競争をしてほしいです!」のような、すぐに回答できない質問があります。

このようなときは、「ご提案ありがとうございます。園内でしっかり検討いたします」のように、質問へのお礼や、質問を受け⽌めたことを伝えます

また、「私は仕事でミスが多いのですが、どうしたらよいでしょう」のような、⼦どもの育ちや保育とは関係のない悩みもあります。このようなときは、「いつもお仕事お疲れ様です」や「私もミスをすることもありますが、ミスしたことを紙に書いて反省するようにしています」のように、保護者の気持ちに寄り添って簡潔に回答します

このように、保護者からの質問は様々です。いずれにしても、質問へのお礼や保護者の気持ちに寄り添った回答であることが伝わるようにすることが重要です。

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肯定的な表現を使う

常に肯定的で前向きな表現を⼼がけましょう。⼦どもの⼯夫やがんばりに気がつきやすくなり、よりよい保育や⼦育て⽀援につながります。

【物事には良い⾯と悪い⾯があります】

物事の⾒⽅は⼀つだけではありません。良い⾯と悪い⾯があります。たとえば、おとなしい⼦は、慎重に物事を考える⼦ともいえますし、控えめな⼦ともいえます。元気な⼦は、積極的な⼦ともいえますし、落ち着きがない⼦ともいえます。

どちらもその⼦を表す表現ですが、どちらの表現を使うかによって、その⼦の⾒⽅が決まってしまいます。

【⼦どものがんばりを⾒つけるようにしましょう】

乳幼児期の⼦どもは、⽇々成⻑しています。⼦どもが今できないことは、できないのではなく、できるようになるために様々な努⼒や⼯夫をしている最中なのです。それらが、保育者の⽬に⾒えることもあれば、⼦どもの頭の中であれこれ考えているため、⾒えないこともあります。保育者は、⽬には⾒えない⼦どもの努⼒や⼯夫を⾒つけることが重要です

【⼦どもの気持ちや思いを想像したり確認したりしましょう】

たとえば、友だちと⼀緒に積み⽊で駅を作る遊びの中で、友だちと離れたところで、⼀⼈で画⽤紙を⼩さくちぎっている⼦がいたとしましょう。保育者が「なぜ画⽤紙を⼩さくちぎっているの?」と質問すると、線路に敷く⽯を作っているとのことでした。保育者が、「完成したら、みんなのところに持って行ってね」と⾔えば、この⼦は喜んでうなずくでしょう。

この例では、⼦どもの気持ちや思いを確認しなければ、「協調性がない」、「グループ活動ができない」というように否定的な表現になります。しかし、その⼦なりの気持ちや思いを確認すれば、「友だちと駅を作るために、⾃分なりのやり⽅で役割を果たしていた」、「⾃分なりの⼯夫をしながら、友だちと遊んでいた」というような肯定的な表現になります

肯定的な表現をするために、その⼦なりの気持ちや思いを⼤切にしましょう。

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他の⼦どもと⽐べるのではなく、その⼦のよさや育ちを伝える

⼦ども⼀⼈ひとりのよさや育ちの様⼦を書くように⼼がけることで、⼦どものことがよく理解できるようになり、また保護者からも信頼されるようになります。

【乳幼児期の発達には個⼈差があります】

乳幼児期の発達には個⼈差があります。家庭環境やこれまでの体験、経験の違いから、発達が早い⼦どももいれば、遅い⼦どももいます。また、発達が早い⼦どもでも、⾔葉の習得は早いけれども、運動機能の発達はそうではないということもあります。

そのため、乳幼児期では、⼦ども⼀⼈ひとりの発達の状態に即した援助や指導が保育者に求められます。他の⼦どもと⽐べて、何が⾜りない・できないということではなく、その⼦のよさや育ちの様⼦をきめ細かく捉え、保護者に伝えるようにしましょう。

【その⼦のよさや育ちを書くようにしましょう】

その⼦ができるようになったこと、そこに⾄るまでの⼯夫や努⼒を書くようにしましょう。たとえば、2歳児が⾃分で洋服を着ることができるようになった場合、他の⼦どもと⽐べて早い遅いではなく、その⼦ができるようになったことの喜びを伝えるのです

また、そのために毎⽇、その⼦が⾃分でやってみようと挑戦していたことも伝えることで、その⼦のよさや育ちの様⼦が保護者に伝わります。

【⾃分の⼦どもを他の⼦どもと⽐べたがる保護者には?】

⾃分の⼦どもを他の⼦どもと⽐べて、⾔葉の数が少ない、おむつがまだとれないなど、⼼配や不安を感じる保護者もいます。

このような場合、保育者は、保育の専⾨家として、⼦どもの発達のあり⽅や乳幼児期の育ちの特徴、その⼦のこれまでの育ちの様⼦やがんばりを、保護者にていねいに説明し、保護者の気持ちを和らげるようにしましょう

保護者は、⾃分の⼦どもが⼤切だからこそ、つい他の⼦どもと⽐べてしまうのです。こうした気持ちを受け⽌めつつ、その⼦のよさや育ちに気がつくようなことを伝えましょう。

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エピソードや事例を使って、具体的に書く

エピソードや事例を使って具体的に書くことで、細かいところまでしっかりと⼦どもを⾒ていたことが保護者に伝わります。

【なぜ具体的に書くと保護者が安⼼するのでしょうか?】

具体的に書くためには、⼦どもの⾔動に気を配り、しっかり観察する必要があります。

だから、連絡帳が具体的に書かれていると、⼦どもの様⼦を細かいところまでしっかりみていたのだということが保護者に伝わり、保育者への信頼につながるのです

【具体的に書くとは、どういうことでしょうか?】

具体的に書けているかどうかは、どのように判断すればよいのでしょうか。簡単な⽅法は、「その場にいなかった⼈にも、その様⼦が鮮明にイメージできるかどうか」です。

たとえば、「今⽇は公園まで散歩しました。こころちゃんは楽しそうでした」という⽂から、⼦どもの顔や動きがイメージできるでしょうか。今⽇は散歩したということ以外、鮮明なイメージはできそうにありません。

しかし、「こころちゃんは、みんなこっちだよ!と⾔って、グループの⼀番前を元気よく歩いていました」と書かれていれば、こころちゃんが元気よく散歩している様⼦が浮かんできます。

【具体的に書くためのコツは?】

具体的に書くためのコツは、エピソードや事例を使うことです。⼦どもが遊んでいる様⼦や⽣活の場⾯の⼀部を抜き出して書きます。特に、保育者の⼼が揺さぶられるような場⾯、⼦どもの育ちがわかるような様⼦、保護者が気にかけていたことに関するものから選ぶようにします。あれもこれも書く必要はなく、⼀つ選べばよいでしょう。

また、具体的に書くためには、⼦どものつぶやきや⾔葉、絵本のタイトルなどを使うのもよいでしょう。上の例では、「みんなこっちだよ!」という⼦どもの⾔葉があることで、元気のよさがしっかり伝わります。

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