省庁のホームページは情報の宝庫! 売れる企画のアイデアが生まれる…か?
皆様、こんにちは。
福祉の本を作る編集部の小澤です。今回は、私が翔泳社で福祉を担当するようになって、改めて気づいたことをお話ししたいと思います。
それはズバリ…省庁のホームページは「情報が盛りだくさん!」ということです。
よく見にいくのは「厚生労働省」
私が国が出す情報にアクセスするようになったのは、福祉の本を担当するようになってからです。それまでは、お役所が公開している情報といえば、粗大ごみとか災害情報とかを探しに、住んでいる市区町村のホームページを数回見たくらいです。
ところが、厚生労働省のホームページには、原稿のファクトチェックなどで頻繁に訪れるようになりました。みなさんは、ご覧になったことはありますか? 正直、一般庶民が日常生活を送るには、ほとんど関係ない感じがしますよね。
実は、国は国民にけっこういろんな情報を公開していました。とはいえ、国会で野党が与党を追及するときに話題にするような「黒塗りの資料」とか、そういう話ではないです。
厚生労働省のホームページには、政策や法令などのいろいろな情報が国民に公開されています。なんと国会に提出前の、各分科会での審議中の議事録や資料なども公開されています。
はじめて見るなら
オススメは「統計情報・白書」にあるいろんな白書でしょうか。ちなみに、白書は、三省堂大辞林によれば「〔英国政府の報告書が白い表紙をつけ white paper と呼ばれるところから〕政府が、外交・経済など各分野の現状を明らかにし、将来の政策を述べるために発表する報告書」だそうです。
下記の「厚生労働白書」のなかの「100人でみた日本」「日本の1日」あたりは、もしちょっとでも興味がありましたらチェックしてみてください。
最新版(平成30年版)の「100人でみた日本」には、「もし日本が100人の国だったら」と仮定して、いろんなことの人口の割合がわかります。
たとえば「病気やけがなどで通院しているのは? →39.0人(熊本県を除く)」という情報であれば、「へー、国民の2.5人に1人は通院しているんだ。それなら医療費かかるよね。あ、でも、私もいま歯医者にかかってるわ」などと自分と関連づけて考えることがあります。
白書は見慣れないと最初は戸惑うかもしれませんし、フルバージョンはかなりの大作ですので、読むのはちょっと大変かも。ですが「概要版」や「要約版」などをさらーと見るだけでも「ほほう、いま国は、毎年のようにこんなことを調べて、公開しているんだ」ということがわかります。
内閣府の白書もなかなかです。「少子化社会対策白書」「高齢社会白書」「子ども・若者白書」などがあり、こちらはもう少し身近でとっつきやすいかと思います。
たとえば「高齢社会白書」には、高齢率の推移のグラフや、高齢者の暮らしの動向のデータがあります。令和元年版高齢社会白書の「第3節」を見てみると、高齢者は「持家より賃貸住宅居住者で不安を感じている割合が高い」なんて話もあって、興味深い内容が並びます。
他の省庁もいろいろな情報を出しているんでしょうね。総務省とか経済産業省とか、トップページをちょろっとみても面白そう。
白書のもとになる統計情報も沢山あります
ついでに、省庁は統計調査の情報も公開しています。最初は戸惑いますが、見慣れてくると、日本社会全体のいろいろな傾向や推移が少しわかるようになって、けっこう面白いです。
たとえば、昨年2019年7月に厚生労働省が公開した2018年国民生活基礎調査があります。
この中の「末子の年齢階級別にみた母の仕事の状況の年次推移」というグラフを見ると、8年前と比べて仕事を持つ母親の数は大きく増加しています。ですが、「末子が6~11歳の間」は、正規職員の割合は減り、非正規職員の割合が増えるという傾向があり、以前とそう変わりないなと気づきます。
「いまは、もう昔とは時代が違う。以前よりも働く親の環境は大きく変わったし、かなり良くなった」とばかり思っていましたが、多少改善されているとはいえ、いわゆる「小1の壁」(子どもが小学校に上がると、夜間まであずかってくれるところがないなど、働き続けるうえで問題が生じること)はいまだ健在なんだなぁと思います。
余談ですが、厚生労働省のホームページには「統計について学べる児童、生徒向けの学習サイト」なんてのもあります。文科省でもないのに、ちょっと不思議。さらにそれぞれのサイトを作っているのは総務省らしいのも、ちょっと不思議。
白書や統計はネタの宝庫!?
そんな感じで、国は、統計調査でいまの日本社会の状況を数量的に調べて分析し、そこから得られた問題点を明らかにして、白書などで将来的に何をしていくべきかを示しています。
さらに慣れてくると、審議中の分科会の資料もチェックできます。これらを定期的に見ていると、いま国が何を考えているか、これから何をしようとしているかがわかってくるのです。
国が何かを大きく変えようとしているとき、その先には、そうした情報を仕事で必要とする人が必ずいるため、そこに本へのニーズが生まれると想像できます。つまり、白書や統計、分科会資料などを見ていくと、「今後、誰に何が必要とされそうか」と、本の企画を考えるうえでかなり参考になります。
このように、私は国が公開している白書や統計情報がとても便利だと知ったわけですが、意外とこういう情報が公開されていることを知らない人が多いかもしれません。
でも、本やメディアの記事をよく見てみると、グラフなどの図表のところに「出所」「出典」として国の資料が記載されていることがあります。普通はグラフを見ても、出所なんてほとんど気にも止めないでしょうし、わざわざソースを調べにいったりしないですよね。同様に、いまの仕事をするまでは私の目にも入ってこなかったのです。
最初にお世話になった本は「社会福祉士」
私が国のホームページを見にいくようになったきっかけは、福祉の本を作る編集部に配属されてはじめて担当した「社会福祉士」の本でした。これはまさに「福祉の専門家になるため」の本です。ソーシャルワーカーという言葉のほうが馴染みがある方もいらっしゃるでしょうか。
これから福祉の本を作っていこうと「福祉ジャンル」の入り口に立った私にとって、最初の1冊が「社会福祉士」の本だったというのは、ある意味よかった…のかもしれません。福祉というものが、世界や日本でどういう経緯を経て成り立ち、どのような範囲のことを指し、またどのような制度があるのか、全体を俯瞰できる機会でした。
いまでこそ、こうして落ち着いて振り返ってはいますが、当時は毎日、目から汗やら血やらを流しながらパソコンに向かっていました。原稿が正しいかどうかを確認しようにも、どこで何を調べたらいいかわかりません。そもそも、どこにどんな情報があるのかわからず、一から探るしかありません。誰かに聞きたくても、周囲に頼れる人が誰もいない、という状態でしたから。
それでも、続けていると少しずつわかってきます。日本の福祉とは基本的に「公共の福祉」ですので、当たり前なのですが、やはり情報源として一番頼りになるのは国だったのです。
(ちなみに、翔泳社の「社会福祉士」本は、いまは別の編集者が担当しています。私が担当していた頃よりさらに強力に改良を重ねてスーパーパワーアップ!していますので、ご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いいたします)
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