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フリーランスになる前に副業から! 発達障害を持つ人が会社を辞める前に準備すべきこと

会社を辞めて、フリーランスとして働きたい。

ASDやADHDなどの発達障害を持つ方の中には、仕事内容や人間関係などさまざまな理由から、会社勤めに限界を感じている場合が少なくないかもしれません。

そんなときの選択肢として、フリーランスとして働くことが挙げられます。ですが、思い立ってすぐに会社を辞めてしまわず、準備をしてからのほうがうまくいく可能性が高まります。

書籍『発達障害フリーランス 属さない働き方のすすめ』(翔泳社)の著者である銀河さんは、自身も勢いで会社を辞めたことを後悔し、「いきなりやめるよりは、まずは副業からスタートしてほしい」と書いています。

会社に勤めながら副業を始めてみることで、フリーランスになるための準備や心構えができるようになります。例えば、いくらくらい稼げるのか。また、自身の特性や得意なこと仕事の相性も分かります。

銀河さんはさらに、本書の中で3つの土台を作っておくことが大事だと言います。

1つ目は、半年~1年分の生活費を準備すること。2つ目は、困ったときに頼れる仕事仲間を作ること。3つ目は、フリーランスになることを身近な人へ事前に報告しておくこと

今回は、具体的にどう準備を進めればよいのか、本書から抜粋して紹介します。発達障害の当事者として多くの経験とノウハウを培ってきた銀河さんのアドバイスが、これからフリーランスになろうとしている皆さんに少しでも役立てば幸いです。

会社をやめる前に、まずは副業から!


副業を通じて、稼げる金額がわかってくる

フリーランス志望者のなかには、先の計画も決まってないのに、勢いで会社をやめてしまう人がたまにいます。特に、発達障害の人は、一度思いこんだら突っ走りがちなのでこの傾向が強いです。事実、僕自身も会社をやめた際は勢いのみで、特に何も下準備をしていませんでした。

ただ、個人的な経験からいうと、いきなりやめるよりは、まずは副業からスタートしてほしいと思います。

副業から入るべき理由のひとつは、経済的なリスクヘッジです。スキルもコネクションも何もない状態からフリーランスを始めると、仕事がないので、経済的に不安定になります。

この状態を防ぐために、会社をやめる前に、副業に挑戦してみて「この仕事ならこのくらい稼げるな」という目安をつかんでおくほうが、いざフリーランスになったときに安心です。

独立する前に、副業で仕事をしておくべきもう一つの理由は、自分と仕事の相性をチェックするためです。

どんなに憧れの仕事であっても、実際にやってみると「思っていたのと違う」「自分とは相性が悪かった」というケースも少なくありません。

僕自身、フリーランスになったときは、「営業マン経験を活かして、営業代行として食べていこう」と思っていましたが、いざやってみるとまったく成果が出ない。あてにしていた営業職で効果が出ず、不安ななか「いったい自分には何が向いているんだろう」と模索する日々は、精神的にもストレスが大きかったです。

だから、どんなに「会社をやめたい!」と感じても、まずは独立体験として副業からトライしてみてください。

どうしてもつらい場合は、診断書をもらってから退職を

基本的には副業を通じて、「自分はこの仕事で食べていけそうだ」という道筋が見えてから、会社をやめてほしいと思うのですが、なかには「現在の環境にストレスが多く、どうしても会社へ行くことに耐えられない」という人もいるでしょう。会社のせいで鬱々とした気持ちが続いてしまう場合は、副業で感覚をつかめていなかったとしても、会社をやめていいと僕は思います。

ただ、うつや適応障害などの症状が疑われる場合は病院で医師に相談の上で、診断書をもらっておいてください。その場合、退職も労災扱いになる場合があるため、失業保険を長めにもらうことができます(もちろん、嘘をついて病気を装う「詐病」はいけません)。

発達障害の人はパワハラや周囲の誤解のせいで、職場でうつ病を発症するケースが非常に多いです。ストレスでつぶれてしまうくらいなら、制度を大いに活用してください。

あとは障害年金を受給できると、これも生活費の足しになります。

厚生年金の加入期間に発達障害での受診の初診日が含まれていれば、障害年金の3級が受け取れることもあります(発達障害の状況、併発している症状などにより異なります)。病院選びや、どのように診断書を書いてもらうかなど注意すべきポイントも多いので、詳しくは医師や社労士などの専門家に相談してみましょう。

会社員のうちに、最低限揃えたい3つの土台

土台1 生活費は独立の肝。最低半年分は準備を!

副業経験を通じて、ある程度、自分が何をやりたいかを見定め、フリーランスでやっていく自信が芽生えてきたとき。そのときは、いよいよ独立に向けた本格的な準備を始めましょう。

その上で、最低限やってほしいことが3つあります。まず、最も大事なのが、当座の生活費の確保です。

フリーランスになると、これまで会社からもらっていた給与のような、固定収入がなくなります。そのため、経済的に余裕がなくなり、心理的にも焦ってしまう人も少なくありません。

特に、発達障害の人は、気持ちのアップダウンが激しい傾向があるので、人によっては「お金がなくてどうしよう」「今後の生活はどうなってしまうのだろう」と、うつっぽくなってしまう可能性もあります。こうした事態を防ぐため、最初のころは収入ゼロでもやっていけるように、生活費は最低でも半年間分ほど。余裕がある人は、1年分くらい生活費を用意しておいてほしいと思います。

土台2 困ったときに頼れる仕事仲間を確保!

2番目に、独立前から準備してほしいのが、薄いつながりでもいいので、フリーランスの仲間を作ることです。

自分が目指す仕事と同じような仕事をしているフリーランスの知り合いを作っておくと、「確定申告を格安でやってくれる税理士さんがいるよ」「あそこの会社で、フリーランスのデザイナーを募集しているよ」「最近は、このアプリが流行っているみたいだよ」などといった、有益な情報が手に入ることもあります。

また、一人では荷が重い仕事を分担したり、同業者のコミュニティを通じて、仕事を紹介してもらえたりするケースも多々あります。

土台3 怠ると、あとが大変!身近な人への事前の報告

そして、3番目に大切なのが、周囲への説明です。発達障害の人は思い立ったら即行動するため、何かと周囲への説明を怠りがちです。でも、会社をやめて独立するという一大事の場合は、事前に報告しておかないと、後々、人間関係に大きく悪影響を与える可能性があります。

なかでも必ず説明を怠らないでほしいのが、両親やパートナーに対してです。「なぜ、自分が仕事をやめたいのか」「今後のプランはどう考えているのか」など、仕事をやめたい理由や今後の計画について、丁寧に伝えましょう。

なお、僕の場合、当時のパートナーに「フリーランスになった」と退職後に事後報告したら、「私との人生を考えてないのか!」と怒られて、破局することになりました。みなさんは同じ過ちを犯さないでください……。

会社員のうちに、社会的信用をうまく使おう

カードは4、5枚作っておこう

フリーランスのデメリットのひとつは、収入が安定しないこと。それゆえ、会社員に比べると、フリーランスのお金に関する社会的な信用は下がります。

だからこそ、「会社員のときはスムーズにできるけれども、フリーランスになると難しくなること」を、会社員のうちに済ませておきましょう。

そのひとつが、クレジットカードを作ること。新たなクレジットカードを作る際は、金融機関側が「この人にお金を貸しても大丈夫か」を審査します。通常の場合、会社員のほうがフリーランスよりも、圧倒的にスムーズに審査を進めることができます。

「普段、クレジットカードは使わないから必要ない」という人でも、独立した初期のころは、パソコンや機材などの設備投資にお金がかかるし、何より収入源が安定しないため、生活費などが足りなくなる恐れがあります。万が一のセーフティネットとして、カードを持っておくとよいでしょう。

会社員のうちにやっておきたい、お金のあれこれ

投資による副収入はフリーランスの精神安定剤に

フリーランスになったとき、誰もが気になるのが老後です。退職金もなくなるし、厚生年金からはずれることで、もらえる年金も減ってしまいます。

だからこそ、「会社員はつらいからやめたいけど、将来お金がなくなってしまったらどうしよう……」と不安になる人も多いのではないでしょうか。

実は僕自身もそうでした。将来は不安だけど、会社の仕事はもうやりたくない。そこで悩んだ末、「会社員はもうやりたくない。投資で副収入を得て、老後資金を作ろう」と思い至りました。

そこで、会社員のうちに将来の備えを作るしくみを作ろうと思い、会社員の信用力を利用して、住宅ローンを組み、東京都内に投資用のワンルームマンションを2軒購入し、不動産投資を始めました。

僕の場合は、手持ちのお金はなかったので頭金ゼロのフルローンを組み、現在は、賃料で住宅ローンを支払っている状態です。二十数年後にローンを完済した際は、月額12~13万円の手残りを得て、年金代わりにする予定です。投資を通じて老後の準備をすることは、心理的な安定を保つためにプラスになっています。

もちろん不動産投資にはリスクもあるので、iDeCoやNISAを利用して、リスクの少ない投資で自分年金を作ってもいいと思います。投資でも貯蓄でも保険でもなんでもよいので、納得できる形で老後資金作りの方法を検討しておくこと。これは、フリーランスになってあわただしくなる退職前に考えておいてほしいと思います。

経費計上できるように半年前から領収書集めを

そのほか、退職の半年前からぜひやってほしいのが、領収書集めです。

開業届を出す前の半年間は、「独立開業の準備期間」とみなされます。この間に、パソコンや引っ越し代など独立開業の準備のために使ったお金を、経費計上することができます。経費として使ったお金は、確定申告すれば、会社員の給与で源泉徴収されるお金から経費分が戻ってきます。
 
領収書を含めた整理整頓の方法は本書で詳しくお話ししているので、
ぜひ参考にしてみてください!

できれば障害者手帳を取得しておこう

会社員のうちに手帳を取得してほしい理由とは

発達障害の人がフリーランスになる前に、やっておいてほしいこと。そのひとつは、障害者手帳の取得です。

障害者手帳には3つの種類がありますが、発達障害の人の場合は「精神障害者保健福祉手帳」という種類の障害者手帳が該当します。手帳を取得するには、医師の診断書をもらい、自分が住んでいる自治体の役所に申請するだけ。ただ、手帳はすぐに発行されるわけではなく、診断が下りて、申請が受理されるまで数か月かかることもあります。

なぜ、会社員のうちに障害者手帳を取得してほしいのかというと、最大の理由は失業保険の受給期間が長くなるからです。普通の人は勤続年数に応じて最大150日分失業保険を取得できますが、障害者手帳を持っている場合は、最大300日(45歳以上は360日)にわたって失業保険を受給できます。受給期間の約1年間を、独立に向けた準備期間にあてることで、いろいろなチャレンジができます。

障害者手帳があると、そのほかにもさまざまなメリットがあります。

まず、「障害者控除」があるので、等級にもよりますが、所得税が27万円、住民税が26万円といった税金の控除も受けられます。

そのほか、地域ごとに規定は異なりますが、電車やバスといった交通機関や美術館や動物園、映画館などの公共施設を利用する際には割引サービスを受けることができます。また、障害の程度や世帯の状況に応じて、携帯電話料金の割引などが受けられるケースもあります。金銭的にはかなりメリットがあるので、ぜひ利用しましょう。

障害者手帳を取得しても発達障害だとはバレない

ただ、手帳の取得をおすすめすると、「周囲に自分が発達障害であることがバレるといやだから、手帳はとりたくない」「手帳を持つことで、何かデメリットがあるのではないか」という不安を聞くこともあります。

しかし、僕自身も手帳を取得していますが、これまでデメリットを感じたことは一度もありません

基本的には、障害者手帳を出さない限りは、周囲の人が障害者手帳に気が付くことはありません。会社員の場合は、給与の源泉徴収の控除部分に「障害者認定」がつくので、経理の人には手帳を持っていることは気づかれます。ただ、具体的な障害は記載されないので、あなたがどんな障害を持っているのかが、会社側にバレるリスクはありません。

フリーランスははじめのころに経済面で苦労することも多いので、ぜひ、制度の活用を検討してみてください。

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