リモコン、家電、洗濯機、トイレ、入浴。高齢の親の変化を感じたら、すぐに準備すべきこと
親が高齢になると、手先の不自由さや視力の低下などからいままで当たり前にできていたことでも時間がかかるようになるなど、多くの変化が生じます。
子の立場である皆さんが「見守りや介護が必要になるかもしれない」と感じたら、まず親の不自由さをできるだけ取り除き、皆さん自身がなるべく変わらず生活を続けられるように、やっておくべきことがいくつかあります。
その中でも生活の快適さに直結する家電や習慣については、高齢の親でも使いやすくする、嫌な思いをしないようにするなど工夫をしておきたいところです。
今回は介護する際の道具やアイデアを紹介した書籍『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』(翔泳社)から、エアコンや台所家電、洗濯機、トイレ、入浴などをどうしたらいいのかを解説しているパートを紹介します。
操作が複雑なリモコンはシンプルなものに替える
汎用リモコンはシンプルで使いやすい
親の家はテレビ、エアコン、照明など、家電を操作するリモコンであふれています。親が使いこなせるうちは大丈夫ですが、身体機能が衰えてくると、左表にあるような高齢者特有のリモコンのトラブルが増えていきます。
さらにもの忘れが増えると、押すべきボタンが分からずに誤操作を繰り返したり、リモコンを紛失したりします。リモコンのトラブルがあると、親から何度も電話がかかってきて大変なので注意が必要です。こうしたリスクを回避するには、機能を限定した汎用リモコンを家電量販店や通販などで購入しましょう。
例えばテレビであれば、電源、チャンネル、音量ボタンなど機能が限定されるため、ボタンの数が減って大きくなり、表記が見やすくなりますし、ボタンをロックできる機種なら誤操作を防止できます。介護者の中にはボタンをくりぬいたり、テープで固定したりして誤操作をさせない工夫をする方もいますが、故障の原因になるので汎用リモコンのほうが安心です。テレビだけでなく、エアコンにも汎用リモコンがあります。
スマートリモコンで誤操作を遠隔修正できる
汎用リモコンを使っていても、親のもの忘れが始まると誤った操作をするケースが出てきます。わが家では汎用リモコン操作が怪しくなってきたときには写真を撮っておいて、写真を見ながら電話で母に正しい操作を丁寧に伝えました。スマートリモコンを設置すれば、あらゆるリモコンをスマホに集約できるだけでなく、遠隔で操作もできます。わざわざ親の家まで行ってリモコンを操作しなくていいので、今では遠隔で修正しています。
親が道具を使いこなせないのは色が理由かも?
視力だけでなく色覚も老化する
ものを正確に見るためには、視力と視野と色覚の3つが揃っていないといけません。加齢による視力の低下は自覚しやすいですが、色覚の低下は自覚がありません。
80代でほぼ100%の方が白内障になるといわれていますが、その手術後に青く見えるようになるのは、色覚の老化で黄色に見えていたものが元に戻るために起こるそうです。
青の色覚が低下するとガスの炎の上の部分が見えづらくなり、20代には6センチの高さで見える青白い炎が、60代には4センチの高さでしか見えていないといわれています。炎の先端ほど高温になるので、着衣着火の事故につながる場合もあります。
また暗い下り階段の最後の段差が影になって段の境目を認識できずに、階段を踏み外す転倒事故も発生しています。ほかにも食べ物の色が鮮やかに見えていないから、食欲が低下している可能性もありますし、運転中の信号や標識の色が違って見えると事故につながる可能性もあります。
白と黒のような色の明度(明るさ)の差がはっきりしているほうが、高齢者は分かりやすいので、左上表の箇所を特に意識してみましょう。
色覚に配慮したカラーユニバーサルデザイン
高齢者の色の見えづらさに配慮したカラーユニバーサルデザインによる商品開発が行われていて、対応済の商品にはマークがついています。また100円ショップには、誰でも見やすい色分けラベルという便利グッズも売っています。
子の世代にはカッコ悪く思える配色の製品や印刷物も、実は高齢者や色弱者でも分かる配慮がされているかもしれません。
高齢の親でも使いやすい台所家電とは?
高齢者の目線で家電を買い替えよう
親の家の台所にある冷蔵庫や電子レンジ。親は未だに家族全員で暮らしていた頃の古い家電を、不自由さを感じながら使い続けているかもしれません。もし新しく買い替える場合は、最新機能を追い求めるのではなく、親が使い慣れた同じメーカーを選ぶなど、高齢の親の視点に立った機種選びをしましょう。
例えば冷蔵庫は、背の低くなった親でも取り出しやすい高さと奥行きに設計された機種を選んだり、腰への負担を考えて野菜室と冷凍室の位置を配慮したりしましょう。電子レンジは多機能で便利な機種もありますが、焼く・蒸すなどの調理機能を使わなくなり、温めなどに用途が限定されるようになったら、操作が簡単な単機能電子レンジを検討しましょう。
炊飯器は一緒に住んでいる家族の人数が減ったり、親が食べるご飯の量が減ったりしているようであれば、5合炊きから3合炊きや1合炊きへサイズダウンしておくのもオススメです。
早く買い替えればよかった冷蔵庫の後悔
わが家では冷凍庫の取っ手が壊れたのをきっかけに、製造から17年が経過していた大型冷蔵庫を新しく買い替えました。母は1人暮らしなので、小型の冷蔵庫も検討しましたが、取り出しやすさを優先して、高さが10㎝低く、容量が2割少ない同じメーカーの冷蔵庫に買い替えました。
母が上段の棚の食材を苦労せずに取る姿を見て、早く買い替えておけば不自由さはもっと早く解消されていたかもしれないと後悔しました。1日に何度も使う家電の不自由さを解消してあげることで、親の生活の質は向上しますし、長期間の自立にもつながります。
将来の介護を見据えた洗濯機選びとは?
介護の洗濯は少量で高頻度になる
介護者の目線で考えると、介護が大変になるにつれ洗濯の回数は増えていきます。例えば親が排泄を失敗したときや食べこぼしがあったときに、すぐに洗濯しないと下着やシーツのニオイが気になりますし、シミもとれなくなります。こうした洗濯物は下洗いが必要になる場合が多いですし、ほかの家族の洗濯物と分けて洗濯したいので、洗濯機を何度も回す必要があります。
またシーツなどの大物の洗濯をする機会が増えると、ほかの洗濯物を後回しにしないといけなくなり、結果として一度にまとめて洗濯するよりも、こまめに洗濯するようになるので、少量で高頻度の洗濯になっていきます。
洗濯の回数が増えると、洗濯物を干す回数も増えますが、冬場の洗濯物は特に乾きづらいので、乾燥機があると便利です。乾かす時間を短縮しておかないと、介護で汚れた洗濯物はどんどんたまっていきます。
介護が始まったあとを想定した洗濯機選びを
親が元気なうちは、腰に負担のかからないドラム式洗濯機がいいと思われるかもしれませんが、介護の将来を見据えた検討をしましょう。また認知症の親がオムツを誤って何度も洗濯するようになると、洗濯機が故障するかもしれません。
こうしたトラブルの多さから、洗濯機の寿命の短さも覚悟したほうがいいと思うので、洗濯機は値段の安い縦型洗濯機、乾燥機は一体型よりも独立したタイプ(浴室乾燥機も含む)のほうが洗濯と並行して乾燥ができ、時間を効率的に使えます。縦型洗濯機の課題として、洗濯物の出し入れの際の腰への負担がありますが、負担を軽減する便利グッズがあります。
高齢の親はトイレにどんな不自由さを感じているか
排泄の失敗から親が引きこもってしまう
どんなに元気な親でも、年を取るにつれてトイレが近くなったり、尿や便が漏れてしまったり、便秘で出なくなったりするなど、排泄に影響が出てきます。排泄の失敗が増えてくると、親は外出を控えたり飲食を控えたりするようになり、その結果活動量が減って足腰が弱ってしまい、介護が始まるきっかけにもなりかねません。
一方で親は排泄の失敗を子に知られたくないと思いますし、子が指摘すると、親のプライドを傷つけてしまう可能性もあります。親にできるだけ長く、自立した排泄を続けてもらうために、子は何ができるのでしょう?
排泄のプロセスから親の不自由さを探ろう
親が自立した排泄を行うためのプロセスを、改めておさらいします。尿意や便意を感じたあと、トイレまで行ってドアを開けます。便器を認識して、下着を脱いで用を足します。おしりを拭き、トイレの水を流して衣服を着て、部屋に戻るまでの動作の中で、親が不自由に感じている箇所はないでしょうか。
トイレの不自由さは主に、運動機能の低下によるもの、認知機能の低下によるもの、排泄機能の低下によるものの3つです。例えば足腰が不自由になって便座にうまく座れない場合は、運動機能が低下している可能性がありますし、トイレの場所が分からなくなっていたら、認知機能が低下している可能性があります。また尿をうまく溜められない、膀胱が勝手に収縮して、尿が排出されてしまうようであれば排泄機能が低下しているかもしれません。下表にトイレの不自由さ別に起こり得る問題点と対策をまとめたので、活用してみてください。
元気な親ほど気をつけたい入浴習慣
ヒートショックと浴室内熱中症に注意
毎日の入浴を楽しみにしている親は多いと思いますが、高齢者の入浴中の死亡者数は増加傾向にあって、減り続けている交通事故の死亡者数を上回っています。消費者庁の発表によると11月から4月までの死亡者が特に多く、冬季の1月がピークとなっています。リビングと脱衣所や浴室内の急激な温度差によるヒートショックが原因で、血圧が大きく変動し、脳卒中や心筋梗塞につながります。
また日本は浴室内の溺死が最も多い国なのですが、原因はお湯に浸かる文化とされていて、特に夏季の入浴は、浴室内熱中症に注意が必要です。高齢者は温度感覚が鈍くなっているので、いつの間にかお風呂でのぼせている状態になっていても、暑さを感じにくく気づきません。
親のプライバシーを守りつつ入浴を見守る
お風呂は特に、プライバシーを確保しておきたい場所なので見守りが難しいです。まずは安全かつ健康的な入浴とされる40℃以下×10分以下を基準に、お湯の設定温度を上げすぎないようにしましょう。
給湯器で温度設定ができない場合は、湯温計でお湯の温度を測るといいでしょう。また親の入浴時間を見守ったり、浴室内に時計やタイマーを設置したりして、長湯を防ぐ工夫も必要です。親の長年の入浴習慣を、一度見直しておきましょう。
介護が必要になると、デイサービスなど自宅以外での入浴の機会が増えますが、人による見守りがあり安心です。むしろ見守りの必要がなく、自立した入浴ができる時期のほうが、リスクは高いかもしれません。健康を過信している親ほど注意が必要です。
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