大注目の女性ラッパー Noname

現代ヒップ・ホップの熱心な聴き手ではない自分でも、時に「おっ、これは!」と思う音源に出会うこともあります。それが今回紹介するシカゴ出身の20代の女性ラッパー/詩人、Nonameです。

僕はNonameを知ったのは2016年のこと。ちょうど彼女のファーストアルバム「Telefone」が発表された頃でした。

たまたまApple Musicのオススメで流れてきたその曲は、詩を朗読する様にリズムの縦割りを自由に飛び越えるようなラップが印象的でした。バックトラックには70年代初頭のスティービー・ワンダーやダニー・ハサウェイを思わせるジャジーなハーモニーがあり、それでいて単なるニューソウルのリバイバルに終わらない不思議な新しさも感じました。柔らかな響きで統一されたアレンジは一聴シンプルなのに、よくよく聴くと相当複雑なアンサンブル。単なる勢い一発のヒップ・ホップで終わらない「何か」があると、迷わず僕の2016年のベストアルバムのひとつに選びました。

そしていよいよ、そして2018年には待望のセカンド「Room 25」を発表します。

彼女の自由なラップは更に磨きがかかり、バックのサウンドに静かに漂う異様に複雑なコーラスアレンジ(これがとにかく凄い)との対比が実にスリリング。親指ピアノの様な電子ピアノとストリングスで始まる「Window」など、紛れもなくどの曲も前作を凌駕する素晴らしさ。このセカンドは自分のみならず多くのメディアでも2018年のベストアルバムのひとつに選ばれていました。

Nonameのアルバムには、どこかトレイシー・ソーンやアリソン・スタットンのようなネオアコ的な暗い哀愁を感じましたが、You Tubeで見た彼女のステージは思ってた以上に明るく元気にニコニコ笑ってラップしていたのが意外でした。だからといって期待を裏切られたというわけでもなく、むしろその天真爛漫でキュートな佇まいに、ますますファンになってしまいましたね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?