Alan Hull / Pipedream
アラン・ハルは、リンディスファーンという英国のフォーク・ロック・バンドのメンバー。ルネ・マグリットの個性的な絵を引用したインパクトのあるこのジャケは、そんな彼のファースト「パイプドリーム」(1973)。内容は地味。でも、妙に屈託なく素直なメロディーと、控えめながらもユーモラスなサウンドがいいですね。
実はこれ、高校生の頃バーゲン・セールで買ったのですが、当時まったく理解できず、すぐに売っちゃったという罪深いレコード。その後、英国フォークを巡り巡ってリンディスファーンのファンになり、半ば懺悔のように買い直したというわけです。この味わい深い地味っぷりを理解するに、10年以上の歳月が必要だったのでしょうか。
このソロアルバムは、リンディスファーンよりは、もっとアメリカ的なフォーク・ロックになってます。とはいえ、モコモコと歪んだエレキ・ギターやエレピの音などは、やはり英国っぽい。大袈裟なところは微塵もなく淡々と曲が続くんですが、ボーカルは不安的ながらも変に盛り上がっちゃったりするあたりがローカル臭く野暮ったい。でも、そんな田舎者っぽい雰囲気も、逆に好感度アップなのです。
同郷のニューキャッスル出身のバンドに、あのプリファブ・スプラウトがいます。そのリーダーのパディ・マクアルーンは、とあるインタビューで「リンディスファーン?ああ、子供の頃、大好きで、僕が初めて弾けるようになったのは彼らの曲だった」と語っていました。リンディスファーンは大抵のロック・ヒストリーには埋もれるバンドですが、地元ニューキャッスルでは大ヒーローだったのです。
ボクは昔、リンディスファーンのライブをビデオで観たことがありますが、その大道芸人っぽいライブを観ていて、何となく日本の「かぐや姫」を思い出しました。日本のロック・ミュージシャンの中にも、とりあえずギターで最初に憶えた曲が「神田川」だったという人もいたように、パディにとってリンディスファーンのヒット曲も、おそらくそんな感じだったのではないでしょうか(違うか)
アラン・ハルは、ジョン・レノンとレイ・デイヴィスを足して2で割って、「カリスマ性」を抜いたような人。そんな事を言われてピンとくるような「地味な英国ロック好き」な人には何かアピールするものがあると思います。ジャケはもちろん、内ジャケに大量に載ってる家族的なブックレット写真も微笑ましくて好きですね。
(2005.7.8)
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