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記憶

 他人の家の庭に花が生えていた。反り返った数十の赤い帯と放射状に広がった線が、ほっそりした草色の茎に備え付けられている。昔見たっきりのその花の名を思い出そうとしたが、いくら手繰っても辿り着かなかった。
 数メートル後ろを歩いていた親子のうちの子の方が、お墓の花だ、とひとりごとのように宣言し、私に啓示をもたらした。そうだ、あれは彼岸花。

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