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【ケダモノオペラ】『小さな花嫁が来た話』【小説風TRPGリプレイ】【完結済】7/9

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場面6 こぼれ落ちるもの
・概要:よね子が大きく体調を崩す
・舞台:闇の森の中
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 時は、早朝。いつもなら、貴方はあの手この手で起こされるはずだ。しかし、貴方は未だに、安眠出来てしまっている。一体、何故だろう?

アラタヨ(擬似餌)
 日が地平から顔を出し、真上に登りかけた頃。パチリと、寝坊助の瞼が開きました。

「…うん……?」

 緩慢に辺りを見渡しました。窓は閉じられたまま…。傍らの布団も、寝ついた時のままで……

「……よね子…?」

 のそのそと布団から這い出て、傍らの枕元に近寄りました。

よね子
「……ゥゥ………」

 貴方が、よね子をよくよく見ると、顔が赤く、汗をかいていて、苦しそうな呼吸をしています。人間の病というものでしょうか。

「……? …ぁれ? ……こ、こんな時間……っ?」
「……朝のお水、……汲んでこなくちゃなん…ね……」

アラタヨ(擬似餌)
「………っ…!」

 浅く息を呑み、拳を握りました。ニンゲンは、自分よりずっと脆く、儚い。彼女が元気いっぱいで、『あの人』に余りにも似ているから…すっかり忘れていました。
 身を起こそうとする少女をやんわりと静止し、ふるふると首を横に

「…よい。俺が取りに行こう。……少し休め。」

よね子
「…っ!」

 ハシッ…としがみ付いて、首を振る。

「なんねっ…なんねっ…これは…あたいの……」

 力を腕に籠めて、這い上がろうとするも

「…ぁ…? ぁれ? からだが…うごかね……?…ぁれ? ……ぁ…レ………?」

 言いかけたところで、よね子はまた、深すぎる眠りに落ちてしまいます。そして貴方の目には、はっきりと見えてしまうでしょう。彼女の身体から刻々と生命力が失われてゆく事が……

アラタヨ(擬似餌)
「…よね子」

 少女を横たえ直し、オロオロと目線を彷徨わせました。寒い。腹の辺りが…寒い。
 それは…翌る日。目覚めた時、主人の姿はなく、ボロボロになった社で、独りぼっちだった時の感覚とよく似ていました。

「………」

 また、独りになるのでしょうか。一匹で過ごせるでしょうか、また。……いえ。きっと、耐えられないでしょう。

〈試練:よね子の病を治す〉を開始します。

試練 よね子の病を治す
・権能:【慈愛】
・難度:1
▼波乱予言
〈予言:よね子はほとんど目が見えなくなりました〉
〈予言:同じ病にかかりました〉
〈予言:その手で壊してしまったのでした〉

PLつぎの
 今日も今日とて波乱予言が僕に刺さる!権能は「慈愛」。振り直しもできる…と。ひとまず【ベースロール】参りますわっ

マスター  ぁいよ!

アラタヨ
 2d6 ベースロール (2D6) > 5[2,3] > 5

マスター
 おぉ、まずまず…! どういたしましょうかっ!

アラタヨ
 ほほう… では、《煙の幻灯》を使用。
 ★〈特技予言:こんなに求めてるのに、触れることができません〉を得て、振り足します。

マスター !??オッケーです!!!! どうぞ!!

アラタヨ
 やたー!ありがとうございます ではでは
 2d6 [特技B]使用(ナンバー3、4) (2D6) > 5[1,4] > 5

マスター ぴったし!! 10到達~!さてさて、どないしましょ! 

アラタヨ ピッタリ賞っ そうですねえ…

マスター
 因みにぶっちゃけますと、次の試練が難易度2で、最後の試練が、難易度1となりまする。
 
PLつぎの おっ。情報感謝ですわっ!

アラタヨ
 「波乱」にします!
 ★〈波乱予言:よね子はほとんど目が見えなくなりました〉〉を得ます。《ずる賢い獣》を復活させます。

マスター
 では、波乱を選択したことで難易度の回数に到達いたしました。よって、波乱予言を獲得し、試練は受難の門へと至ります。貴方は、苦難の果てに、試練を乗り越える事が出来たでしょう。
 …それでは、描写に移っていきましょう!

ーーー

 アラタヨの心情と、よね子の病状を代弁するかのように…窓を雨が打ちつけ、雷の音が聞こえてきました。ひどい嵐がやってきたのです。

アラタヨ(擬似餌)
「…っ、待っておれ…よね子や。」

 ピシャリ。奮い立たせるように頬を叩くと、立ち上がり、部屋を出て行きました。不安で不安で仕方ありませんでしたが…そうもいってられません。
 ───灯火。何かをはじめる時、道に迷った時。進むべき先を照らすのは、自分の中の小さな灯りです。

アラタヨ(擬似餌)
「…よね子。」

 傍らで、少女の額の汗を布で拭い、手を握りました。いつぞやの言葉を投げかけます。

「どれ、このおいぼれが、一つまじないをしてやろう。」

 …豊穣神の眷属にとって、加持祈祷は門外漢ですが、一か八か賭けるしかないでしょう。

よね子
「……ぅ………ゥ…………っ………。……? ……………。 …………………。」

 殆どが掠れて声にならない。苦悶の表情を浮かべながらも、貴方の手を、僅かな力で握り返す。

アラタヨ(擬似餌)
「……」

 弱々しく握られた手を包みこんで、明滅する命の火を取りこぼさないように、静かに言葉を紡ぎました。

アラタヨ
〈波乱予言:ひどい嵐がやってきました〉を「実現」します。
マスター うい! 受理! 
アラタヨ (ありがとうございます!

アラタヨ(擬似餌)
『…ひふみ よいむなや こともちろらね』
『しきる ゆいつわぬ そをたはくめか』
『うをえにさりへて のますあせえほれけ』

 一語、一語、言葉を発するたびに、周囲に煙が漂い、よね子を包むように燻ります。少しずつ、少しずつ、掻き消えそうな命の灯火に、祈りの接火が為されていきました。
 キツネヴィは、天上の灯火を操るモノ。…きっと、命は取り留める事ができるでしょう。……ですが、不完全な魂を宿す獣には、その光を完全に扱うことはかないません。

よね子
「……ゥ……? ………………ぅぅん…………うぬ…ぅ………」

 少しずつ、少しずつ、苦しみに満ち、強張った表情が安らかな寝顔へと移り変わっていく。

「……むにゃ…………にゃ…………」

 そして貴方の手は、今再び握り返される。

アラタヨ(擬似餌)
「…よね子……!」

 僅かに表情を緩め、ほっと息を吐きます。いつのまにか窓の外の嵐は失せ、しとしとと穏やかな小雨の音色が聞こえています。
 いつしか雨が止んでも、夕日が地平に沈んでも、星々が姿を表し、虫が鳴き始めても、よね子の顔を覗き込んだまま、ずっとずっと手を握っていました。

よね子
 そして、少しばかり欠けた月が頂点を通り過ぎ、地平線の果てに沈む頃。早朝のひんやりとした空気、こぼれ落ちる朝露、そして、今か今かと出番を待ちわびる朝日。
 辛抱強く手を握り、看病をし続けたが故に、貴方が丁度眠りに落ちた時。入れ替わる様にして、よね子が目覚める。
 
「ゥゥ……ゥ……いたっ……」

 いつものように飛び起きる事は出来ない。生死を彷徨う程の病を快癒し終えたばかりなのだから。

パチリ…
「…ぁ…ぁれ……? …あたいは…いったいどうなって………。……あれ?…夜かぁ……。…ね…寝すぎたぞ……」

 傍らに感じるむこどのの気配。

「夜だから……明日の朝に…で…いいよな……」

 そんな呟きが”早朝”、”朝日”が差し込む部屋に木霊する。

アラタヨ(擬似餌)
 絶え間なく唱え続けたまじない。力尽き、沈んでいた意識は待ち望んでいた声に、パッと浮上しました。

「…は…、…!」
 …しまった!いつの間に……!
 ガバリと飛び起きて、よね子の方を見やりました。
「…よね子……?」

よね子
「っ!むこどのかっ! すまんっ 起こしてしまったっ」

 ギュン!! と、彼女は立ち上がろうとする。

「?あれぇ!?」

 彼女にとっては”深夜も深夜”。”何も見えない中”、飛び起きればそうなる事は必定だった。

「ぎゃぴーっ!!」

 アラタヨがいない方向へ、ステーンと倒れ込む。

「あいたーッ!! す、すまね、むこどの!明かりがないから、こけてしまったぁっ!!」

 その時、朝日がようやく顔を出す。室内は暖かな光に包まれている。

アラタヨ(擬似餌)
「…明かりが、…ないから、」

 おうむ返しに声を震わせました。胸の辺りがザワザワします。…酷く、イヤな予感がしました。

「………よね子や、よね子や、」

 予感を否定したくて、走り寄って、手を取りました。

「…俺は、此処だ。明かりが足りぬなら、窓を開けようか。」

 片手を窓の方に向け、宙へ。見えぬ戸を開けるように手を動かしました。念力でスパンと放たれる障子。燦々と日が差してきます。

よね子
「ぬぉっ?すまね、むこどのっ」

 にこにこと微笑み、光が差すのを待つ

「…窓? …いや、今は夜だでな?明かりをつけるなら、蝋燭が………」

 感じる陽光の温かみ。ぼんやりと霞が掛った明かりがポコンっ…と浮かぶ。

 パチリ。

「……んぇ?……あれ……?………ぁ……れ……?」

 パチクリ。

「…どこだっ!?…むこどの!?むこどのはどこだっ!?」

 手は繋がれている。 目の前に、貴方はいる。しかし、よね子の視線が泳ぐ。 貴方を通り越して右へ、左へ。

「……ぇ……? …ぇ……? ……むこどの………?……どこ…? ……どこだ…?」

アラタヨ(擬似餌)
「…………よ、」

 グッと言葉に詰まりました。分かってしまいました。ケダモノ一倍、鈍いキツネヴィにも…彼女に何が起きたのか。起きてしまったのか。自身のチカラが及ばなかった為に、彼女の視界から光が失われてしまったのだ、と。

アラタヨ
★〈波乱予言:よね子はほとんど目が見えなくなりました 〉を「実現」します。
マスター 受理!

よね子
「…そ……そこに……?…そこに…いるのか…? …むこどの……?」

 繋がれた手を放し、僅かな音を頼りに、両手を宙に彷徨わせながら。
 貴方の両頬へと、よね子の手が辿り着く。頻りに、瞬きを繰り返す。 然れども、むこどののめんこい顔は浮かんでこない。

「………………。」

 貴方には、よね子が次に浮かべる表情が容易に思い浮かぶだろう。それ即ち慟哭だ。…しかし

「…むこどのっ! あ…ァゥ……あっ…たいを!頑張って治してッ…ヒゥ……くれたんだなっ!!」

 そうはならなかった。彼女は気丈に振る舞う。

「えへっ! むこどのっ! 疲れただろっ! 朝餉ェッ…はぁ...何がッ…いいっ? …ゥッ……! …タケノコかっ! …ゥ"ッ……ヒック……その表情を”みれば”わかるぞっ!きっと、タケノコだっ!」

アラタヨ(擬似餌)
「………流石だ、な、」
 正に、タケノコの気分だ、と空返事しました。

 健気さに、気丈な振る舞いに、胸が押し潰される思いがするのです。何より、主人さまと瓜二つの彼女に、こんな表情をさせている事が、悔しくて、悲しくて……。
 …嗚呼、でも、それでも、まだ…。まだ、できる事がありました。自分にも、まだ。
 自分の頬に添えられた手に、祈るように手を重ねました。コン、と酷く虚しげなキツネの鳴き声が響く。

 刹那、よね子の視界。光と明瞭な輪郭が失われた宵闇を彩るほのかな薄明り。光の演舞が暗闇にゆらめき、そして…目前に、ハッキリと映る一人の宮司の姿。今し方、触れているアラタヨだ。

 変わらず辺りは暗いけれど、かの婿の姿だけは、ありありと写すことができています。"煙の幻灯"が生み出した幻、力無い神の眷属のひと足掻き、気休めのおまじないでした。
 
よね子
「……っ?!」ピシリ

 その刹那、彼女の表情は固まる。そして、動き出す時に伴って、唇の震えが増していく。
 
「…よ…よく……よく……”視える”ぞ…っ……むゥ…っ...こどの……」
「…め…めんこい…顔だ…ッ...なァ……。…けど…」

 俯き、唇はわなわなと震え、嗚咽が混じる。言葉を紡ぐのでさえ困難な中、よね子は必死に紡ぎ出す。

「…けど…ッ!…あたいの…ためッ…にィ……ちからを…つかうこと…ねっ……!ねぇ…んだ……むこど…ッの……」
「むこどの…は……ッ……やさ…しッ……なぁ………」

アラタヨ(擬似餌)
 優しい?そんな筈は無い。心の中で、首を横に振りました。幻覚と自身の挙動を同調させて、よね子をそっと抱きしめました。よね子の頭部を胸に引き寄せると、耳元で囁きます。

「……何をいう、よね子や。…俺は、そなたの婿なのだ。」
「この力と身は、そなたの為に在る。…そなたの為に、使うのだ。」
 
 主人の消失を受け入れられず、目を背け続けていたアラタヨを知る者が聞いたら、きっと仰天したに違いありません。

よね子
「…ぅ”……ェック………そう…そうッ…だでかぁ……。………!」

 感じる温もり。聞き慣れた、心地の良い声。流れる涙の止まる気配は無いが、一人と一匹で共に紡ぎ上げた幸せな日常を糧に、彼女は、無理矢理に口角を上げた。
 
「…そ…そう…かぁッ……あたいは…ッ!…むこどのの嫁…だから……!……それで……ゥック……いっか……ァ……」

 下がった両腕が、貴方の背に回される。そして、非力ながら、両腕に力が籠められた。

「…あたいは……アラタヨ殿が…嫁……よね子…だから……ッ………っ」

アラタヨ(擬似餌)
「……あゝ、あゝ、如何にもだ。」

 温もりを感じながら、幾度となく頷きました。

「そして…俺は、そなたが婿…アラタヨ、なのだから。」
 遠慮は不要だ。静かに宣い、窓の外を見やりました。

 白々しく、差し込む日の光。…よね子と過ごす中で。…いえ、もっと前から……本当は、薄々、気づいていました。
 主人さまは、もう、帰ってこないということ。…既に、どの世界にも居ないのだ、ということ。そして、恐らくは…… 今日のように、力の及ばなかった、自分のせいであること。
 …主人(あるじ)の名がなんであったか……ちっとも思い出せないのです。こんなにも毎日毎夜、帰ってくるのを待ち侘びていたのに……

「………」

 込められていく背中の腕に呼応するように、強く抱き返しました。失った主人さまと瓜二つの彼女を守ること。彼女と共にあり続けること。
 それが、自分にできるせめてもの『罪滅ぼし』そんな、決意を密かに抱いて。

アラタヨ
★〈波乱予言:大切なものが失われました 〉を「実現」します。
マスター 受理!!

よね子は涙をガシガシと拭い、花が綻ぶように笑った。

「ありがと…っ …むこどのっ…♪」

 そしてもうすぐ、『さとがえり』の日がやってきます。
 一人と一匹は、無事にさとがえりをすることが、出来るのでしょうかーーー・・・………



ーーー
選ばれると思ってたけど、やはり選んできましたね!
波乱予言:目がほとんど見えなくなってしまいました!!
セッション裏で、急ピッチで新しい差分を作りました…!贅沢な遊びだよな!テキセってよ!


この目の色が、光がある時。


この目の色が、光を失った時。

虹彩と瞳孔の輪郭を弄りまして…ヘヘ…色素薄いのって…いいよね…

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