見出し画像

【ケダモノオペラ】『小さな花嫁が来た話』【小説風TRPGリプレイ】【完結済】9/9

ーーー

場面8 流るる命は惜しまねど
・概要:村長や村人たちの企みが明らかになる
・舞台:森と村をつなぐ橋の周辺

ーーー

  一人と一匹は、ようやく“闇の森”から出る。深い渓谷に架かった吊り橋の向こうに、よね子の村が見えます。

よね子
「この音…この匂い……」

 キョロキョロと視線を泳がせ、鼻をスンスンとする。

「…わぁっ! ひさびさだぁっ!」
「着いたんだなっ! むこどのっ!」
「…む、むこどの。……つ、吊り橋はどの辺にあるかっ?」

 ピコンと貴方を見上げて言う

アラタヨ(擬似餌)
「…此処だ、よね子や。」

 手を引き、吊り橋の前に向かうと、両脇の塔柱に、よね子の手を順に触れさせました。よね子から聞いた話。…自身の記憶が確かなら、彼女が、先にこの橋を渡らなくてはならないのです。

「………行けるか?」

 伺うように顔を覗き込みました。…足を取られないと良いのだけど。

よね子
「!」
「フッフッフっ! 何をいうかっむこどのっ!」
「こぉのっ デキる嫁、よね子に抜かりなしっ!」
「……」
「一緒に、沢山、れんしゅうに付き合ってもらったからな…っ!」
「あたい達の前に、出来ない事なんてなーいんだっ」

 ニコニコと微笑む。…けれど、眉根が少しだけ寄っていた。

「そうだろっ、むこどの?」

アラタヨ(擬似餌)
「如何にもだ」

 淀みない返事をし

「……………」

 それから、少し考えるような顔をして、無造作に髪を束ねていた、長い長い紐をしゅるり…解くと、よね子の足首に結びつけ、その端を手に握らせました。

「其方なら、できる。…このアラタヨが保証する。」

 言い切ると、足元がぼぅっと照らされます。よね子の視界に伸びる一本の光の筋。

「…見えるか? あの【光(道)】をたどれば良い。それで万事、上手くいく。」

よね子
「…!」
「……。」

 不安な気持ちはある。けど、2人が幸せになる為のゲン担ぎだ。よね子はアラタヨを見つめる。

(あたいは…もうこんなんだから……)
(できることは、なんだってしなきゃなんねっ。)

「ぷっ。 まったくぅ、むこどのは心配性なんだからよっ」
「けど、これで、あたい、頑張れそうだっ。」

 向こう岸に渡り切るまでの道程にある光をぼんやりと見つめて

「これだけしてくれればっ。」
「あとは、嫁を信じるだけだぞ、むこどのっ。」

アラタヨ(擬似餌)
「言われなくとも、だ。」

 目を細め、微笑みました。

「其方を信じなかった日は無いぞ。」
「さ、行っておいで。…何かあったら俺の名を。必ずや其方を助く。」

 そうっと。先を促すように、よね子の背を押しました。

よね子
「…」
「…うむッ!」

 ついさっき、塗りたくった木の実の汁を確認し、ペタペタ…と足踏みを一つ。

「…うむ!よかろうっ!」

 一歩を踏み出す前、よね子は背を向けて言う

「…これで、『さとがえり』はおしまいだっ」
「みんなに挨拶をして。 …そうしたら、むこどのとあたいのお家に帰ろ」

 そして、よね子は一歩を踏み出す。
 ぺた、ぺた。ぱちゃ、ぱちゃと、慎重にゆっくりと、吊り橋を渡り始めます。より合わせた頑丈な蔓と木の板で出来た、簡素で、心許ない、吊り橋が小さく揺れている。

 ぺたっぺたっ…ぺたっぺたっ……
 
 …やがて、可愛らしい紅白の足跡が、向こう岸まで繋がる。
 ペタペタッ! ピョンピョンッ!よね子は、渡り切った先で、揺れない地面を確かめてから、両の手を君に振る。
 
「よーっしっ!はーっはっはっはぁ~渡り切ったぞっ!
 あたいは成し遂げたっ!
 おーい、むこどのー!!
 あたいの足跡をたどって、こっちへきてくれーっ!
 らくーっ!ちんだーっ!ぞーっ!!」

 ピョンピョンコと飛び跳ねる 

PLつぎの
 固唾を飲んで渡りきる様を見守っていたキツネヴィは、元気よく手を振る嫁を見て、安堵の息を漏らしました。
 たかが、儀式。現実主義的な者であれば、盲目の少女にこんな試練を、みすみすやらせる事はなかったのかもしれません。
 ですが、ケダモノは約束やしきたりを重んじる存在。ましてや、神の眷属であったキツネヴィには、儀式をやらないという選択自体が無かったのです。

アラタヨ(擬似餌)
「…見事だ、御見事だ!」

 歓声をあげ、手をふり返し

「今、向かう…!」

 吊り橋に付けられた、小さな小さな道しるべを頼りに、自分もまた、橋を渡るべく、よね子の元へ向かうべく、その元へ駆けて行きました。
 からんちょ。からんころん。
 軽快な沓音。橋へ一歩、足を踏み掛ける───

アラタヨ
★ 〈イントロ予言:あなたはよね子と「さとがえり」をしてやりました〉を「実現」します。

マスター 受理!

 そして、貴方が橋を渡り始め、不安な音が鳴りつつも、吊り橋は相変わらず、橋の体を成していた。…が半ばに差し掛かった時。
 近くの茂みから一斉に飛び出してきた村人たちが、貴方の事を一心に見つめる、よね子を村側へ突き飛ばす。

よね子
「ぎゃぁっ」
「あいたぁっ!?」
 
 なすすべもなく、よね子はどてっと倒れる。

村長
「よくやったぞっ!!今なら!!あの化け物を!!!!」

 斧を振るい、向こう岸にあった橋の支えを切り落とす。貴方は真っ逆さまに深い渓谷の底へ落ちてゆきます。

よね子
「!? …?!」

 立て続けに起こる、予想だにしなかった出来事で、よね子は気が動転していた。

アラタヨ(擬似餌)
「よね子…!?」

 突如、現れた村人たち。突き飛ばされる少女。よね子と同じく、突然の事に気を取られたキツネヴィは、完全に足元を取られました。
 気づいた時には、宙に投げ出され、渓谷下を流れる、川の中へと落ちてしまいました。
 バシャン!!!水柱が立ちました。…宮司一人にしては、大き過ぎる高さを以って。

よね子
「!!??」
「むこどの!!??」
 
 か細い悲鳴が聞こえる。

???
『ォォォン───!!!!』
 
 か細い悲鳴を掻き消すように、辺りに唸り声が響きました。水面から現れたのは、よね子の見慣れた宮司…ではなく、 無数の尾をもつ、一匹の巨大なキツネに似た怪物でした。
 よね子の見知らぬ怪物は、よく聞き馴染んだ声で、呼んでくるのです。よね子!よね子! …と。
 …皮肉にも、かけられていた『幻覚』のお陰で、失われた視界の中でも、ハッキリとその姿が見えたでしょう。

よね子
「?!」
「??!」

 よね子は、アラタヨの行方を探すも、声しか聞こえない。 村人に押さえつけられて、身動きが取れないからだ。

「むこどのーー!!!?? どこだ!! どこだ??!! むこどの!”!!??」

村長
 周りの村人の装いと、ほんの少しだけ違う男が、よね子の頭を撫でる。

「…ようやった!ようやったぞ!米吉が娘よ!」

よね子
「うるせぇっ!!」

 ようやく、声のする方向と、自分が今置かれている状況を理解し始める。

「いいことなんかっ!! なんにもねぇっ!!」

 拘束を振りほどき、よた、よた、と川岸へ向かい、そして、谷底にいる宮司の姿のままのアラタヨを見つける。

「むこどの!? むこどの!!! なんでじゃ!!なんでむこどのが!!川に!? 川に落とされきゃなんね!!??」

村人
「おらぁ、よくみろぉ! 人間の姿はまやかしだ!! 彼奴はやっぱりバケモンじゃ!!」

村長
 見当違いな事を言うよね子を見て、村長の顔が歪む。

「…あぁ…なんと………この短期間で……目を奪われたのか……」
「…すまん……米吉に何と言えばいいんじゃ……」

 村長はよね子を抱きしめる

「よね子。…お前は村の英雄じゃ…!!」

よね子
「うるさい!! うるさい!!」
「あぁ…あぁ!! むこどの!? むこどの!!!!」

 谷底の貴方に向かって、ただ一人、疑似餌の姿で認識している、よね子だけが、声を張り上げて、貴方の名を叫ぶ。

「アラタヨどの!!!!!!」
「こんなっ!! こんなっ!!!!」

アラタヨ
「…………」

 村人たちの反応を見て、思う。全身水を被ったから…幻術が解けて、四つ脚に見えているのだ、と。
 呼びかける少女を見て、また、思う。彼女の目には、変わらず宮司の姿が見えているのだろう、と。

アラタヨ
★『伝説の使用』を宣言。
自分の予言を1つ消去し、かわりに別の特技予言、これまでの試練の波乱予言、ランダム予言から1つを獲得する。
《ずる賢い獣》の〈特技予言:他者の成果を横取りしました〉を消去
《ランダム予言表》の〈ランダム予言:あなたは敵を憎むことはできませんでした〉を獲得します

マスター 受理!!

PLつぎの 感謝!

アラタヨ
「…よね子……!」

 頭上を見上げ、静かに首を横に振りました。

「…すまない、……俺は、」

 ずっと、其方を騙していたんだ。コン。哀しげな鳴き声が響きました。よね子にかけられた「幻術」が上書きされ、村人たちが見ている姿と同じ怪物を映し出します。

よね子
 渡河の前、結ばれた紐が輝く。淡く、優しく輝く光がよね子の両目に向かってフヨフヨと飛んで行き…幻術が、書き換えられる。

「っ!!」

 彼女にとって、婿を罵倒する事など、これまで一度たりともなかった。しかし、その言葉が紡がれる。
 
「”ばかものぉっ!!!!!!”」

 滂沱の涙を流しながら、貴方の姿をその目で捉え続ける。
 
「よね子が!! むこどのの!! ほッ…!! ほんどうの!! 姿を見だがらってェ!!!!」
「何かが!! がわる”とでも!!」
「おもうたかああアァア!!!!!!」
「あたいの!!!!」
「気持ちを!!む”こッ…どのはァ!!」

 顔を振る。 涙が邪魔だ。 ぼやけるな 霞むな

「なぁんに”も”!!」
「わかっちゃいね”ぇ”ッ!!!!!!」
「ばかたれェ!! ばかァ!! ばかァアア!!!!!!!」

アラタヨ
「……っ…!?」

 水面に揺られる中、尾が驚いたように翻ります。真の姿を見ても、その心は変わらないというのでしょうか。

「(……あゝ…)」

 罵倒されるなら、化け物と罵られた方がずっとよかった。だって…そんな事を言われたら…諦めようとしていたのに、諦めたくなくなってしまうではないか……
 自身の胸中に、強欲の火が灯るのが分かりました。彼女が、欲しい。自分が一芝居うって、彼女を英雄に仕立て上げて…村に帰した方が、人としての幸せを享受できるのだとしても。
 それを踏みにじってでも、彼女が、欲しい。欲しくて欲しくて堪らない。

よね子
「あ”だいにばッ!! てに!とるよ”うに分かるぞッ!!!!」
「あ”たい”を”!! 見くびっで!! いたんだァ”!!」
「あ”たいばッ!! むこどのがッ!! アラタヨどのが”ッ!!!!」
「だぃッ…」

 唇が震える。 嗚咽が入り混じって上手く声が出せない。それでも、彼女は叫ぶ

「あたいはッ!! こんなにも”!! 大好き”なの”に”!!」

村長
「よせ!よね子や!! おまえも谷底に落ちて死ぬきか!?」
「やめてくれ!! アヤツは死んだ!! もう!生きてかえれまい!!」

よね子
「はなせ!はなせぇ!!むこどのっ!むこどのがぁっ!!!!!!」

 よね子は村長の手を振りほどく。そして、滂沱の涙を流しながら、一歩一歩、急流に流される貴方を追う。

マスター
 ここで試練を、公開いたします。彼女は貴方が死んでしまうと思って動転していますが、実のところ、ケダモノである貴方にはこんな川くらい何ということはないのです。
 この事態をどうするか、自由に決めることができます。以下の試練は取る手段の例です。好きなものを選んでもよいですし、マスターに別の手段を提案しても構いません。

●試練『イ:川から上がり、よね子をさらう』
・権能:【叡智】
・難度:1

●試練『ロ:川から上がり、村を滅ぼす』
・権能:【暴虐】
・難度:1 ※試練 B を選ぶ場合、よね子を巻き込むか、残すかはケダモノが 自由に選んで構いません。

●試練『ハ:このまま死んだふりをする』
・権能:【慈愛】、【狡猾】
・難度:1

▼波乱予言:
〈予言:よね子は気が触れたと言われ、蔵に閉じ込められて暮らしました〉
〈予言:村人たちは"闇の森"に火をかけました〉
〈予言:帰る方法はありませんでした〉

PLつぎの
試練『イ:川から上がり、よね子をさらう』一択ですッッッッッッッ!!!!

マスター それで後悔は…しないね? 

PLつぎの しないないないナイアガラですッッ!

マスター
了解だ!
それでは、試練の判定へと移ります。
ケダモノはベースロールをどうぞ!

PLつぎの はいですっっ!

アラタヨ
2d6 ベースロール (2D6) > 9[4,5] > 9

マスター
流石すぎる!!!!
振りたしや、波乱の選択など、どうしましょうか!

アラタヨ っし! そうですね…

《たぶらかす》を使用。
★〈特技予言:自分で自分が嫌いになりました〉を得て、振り足します!

マスター 了解!いくのじゃっ!

アラタヨ はぁい!
1d6 [特技C]使用(ナンバー1、2) (1D6) > 2

マスター 11じゃぁああ!!!

アラタヨ 「達成」とします!

マスター 達成了解!
 では、達成を選択したことで、成功数が難易度の回数に到達しました。よって、試練は栄光の門へと至ります。
 それではっ!!この続きは、休憩後!最後まで、駆け抜けましょうっ!

PLつぎの
 うぉぉぉぉ!!!!!!はいっ!駆け抜けましょう!そうしましょう!

ーーー

よね子
「あぁ! あぁ”ぅ”!! ぅぅっぅうう!!!」

 彼女の視界は、真っ暗な中に、遠く離れた貴方の居場所がポツンと照らされるのみであり、勿論、立って、走って追いかける事などできない。
 悲痛な叫び。愛らしくも、胸の痛いその姿が、どんどんと遠ざかっていく事でしょう。
 
「ーーーーどー!! ーー返ーーをーーくだーっ!!」

アラタヨ
 濡れているせいか、上手く力が入りません。あれよあれよと流される中で、先ほどの言葉が、ワンワンと脳内で鳴り響いていました。

『見くびっていた』

 なんて耳の痛い言葉だろう。完全に図星だった。真の姿を見せれば、よね子は自分の元から去ってしまうに違いない…そう思い込んでいたのです。
 失った主人に似た少女を、共に過ごした存在を再び失うのが、イヤだったから…
 回る思考を断つように、少し離れたところから、聞こえてきた慟哭。ハッと意識が引き戻されました。
 取り返さなくては…この川を脱し、彼女を迎えに

『ォォォン───!!!!』

 水飛沫をあげ、川底を蹴りつけます。手近な崖に足をかけました。這い上がらんとよじ登ります。
 同時、よね子に結ばれた紐が燦然と光を放ちました。アラタヨのいる方へ、紐が引かれるような感覚がするでしょう。

マスター
 それは地獄に垂らされた、一本の細い、細い、蜘蛛の糸の様に、よね子の視界に一筋の光が現出する。

よね子
「…!?」

 光を目で追う。 婿殿がつけてくれた紐に、その光は紐づいていた。

「……ッ」

 目をゴシゴシと擦る。そして、力を、足に。 腹に。 そして、魂に籠める。

「…ゥッ…く…っ!!」
「この…!道を辿ればきっと……!!」
「むこどのにっ!! 繋がっているっ!はずっ!!」

村長
「!?」
よねーー

よね吉
「ーーね子ー!!!!!!!!」

 それは一瞬の出来事だった。よね子を村に帰還させようとする村長の手を跳ね飛ばし、ガシッと両脇を掴まれる感覚。

よね子
「!?」
「おとう!?」
「ど!? どうして!?」

よね吉(とある農夫)
 よね吉は、娘の声にこたえる前に、その体を両肩に乗せ、走り出す。

「おらが!かの殿方を見定めたんだ!!第一、おめぇは嫌だったらすぐに帰ってくる!!」
「よね子!本当にいいんだな!」
「おとうは!とまらねぇぞーー!!」

よね子
「!?」

 婿殿とは、また違う温もり。けどこれもまた、彼女が愛してやまないモノの一つだった。

「そ、そうだっ!」
「おとうっ! このさきだっ!」

ーーー

一方その頃ーー

アラタヨ
 崖を蹴りつけ、四肢を鳴らした。成すべき事を成すには、ただそれだけで充分だった。
 自身の方に向かってくる魂の気配がある。その方目掛けて、二度、三度、とよじ登り…やっとの事で渓谷を抜けました。
 辺りに自身を貶めた人間たちの姿。彼らのおかげで酷い目に遭いましたが、どうしても憎む気になれませんでした。今は亡き、主人の納める土地に住む人たちだから

「其処を退け!さとがえりは済んだのだ。我が嫁を連れて帰る!」

 吠えると、気炎の勢いで『気配』のする方角へ走りました。

アラタヨ
★〈ランダム予言:あなたは敵を憎むことはできませんでした 〉を「実現」します。

マスター 受理!

よね子
「…!!?」

 貴方の宣言に呼応するように、地続きの道標の輝きが増す。

そうだ、あたいのむこどのは
こんなことで、あたいを諦めたりしねぇっ

沢山、約束だってしたっ
あたいは叶えてもらったんだっ
なら次はーー

 涙を置きざりにして、2人は走る。

「そうだ!! おとう!!」
「この先でっ! わがむこどのは待ってるはずだァっ!!」

よね吉
「おうともよっ!!」

マスター
 村一番の健脚だった、よね吉を追えるものはもういません。森の中、渓谷沿いをただ、ひたすらに走る走るーー

アラタヨ
 突っ走る中、受けた向かい風で、濡れていた身体が乾いていきます。損なわれていた力が、炎が、身体に戻ってくる…
 ───豪ッ!
 身体から迸るのは、天の力を帯びた蒼蒼たる劫火。うねり走り、歩みを遮る全てを焼き尽くす。跡には塵さえ残らない。

「…見つけたぞ……!」

 今ならありありと感じます。彼女が、彼女を助く者が、何処にいるのか!

「よね子ッ!」

 ダン、と地を蹴り跳躍。…ああ、見えました。見慣れた赤い着物と、畑を耕して欲しいとぼやいていた懐かしい顔が。…遂に、辿り着いたのです。
 よね子と米吉の前に、チカッと青く閃光。目を擦り…再び開けると、其処には、青く燃える巨大なキツネのような獣がいました。

よね子
「!」

よね吉
「な!?なんだぁ~~!!??」

よね子
「はぁ………!」

 ニヘっと笑い、その表情には安堵が溢れた。

「っ!」
 おとうの肩をトントンと叩く。

よね吉
「!? はいよぉっ!!」

 ゆっくりと腰を落とし、よね子の足首をガシッともって地面に付けて…
 肩をポンと、叩くのだった。

よね子
「アラタヨ殿ーー!!!!!!!」
「わがむこどのっ!! アラタヨ殿ーーー!!!!!!」

 一直線によね子は貴方に駆け寄り、その巨体に、バフッと抱きつく。

アラタヨ
 抱きつかれると同時に、巨体が煙のように揺らめき、徐々に、米吉にも見覚えがある宮司の姿へとかえってゆく……

アラタヨ(擬似餌)
「…っ、よね子……!」

 ひしと抱擁を返して、顔を歪めると呟きました。

「………すまなかった」

 それは、みくびっていた事への謝罪でした。こんなにも、自分に応えようとしてくれているのを知っていたのに…
 こうして窮地に陥るまで踏ん切りがつかなかったのです。どこまでも臆病な自身に、ほとほと呆れを感じていました。

アラタヨ
★〈特技予言:自分で自分が嫌いになりました〉 を「実現」します。

マスター 受理!!

よね子
「………」

 彼女は、穏やかに微笑む。

「すまねぇじゃねっ!はじめの言葉がそれかっ! むこどのっ」

 ヒヒヒと笑う。

「はっ…!」

 体のあちこちをぺたぺたと検分していく

「けっ!けが! けがはねぇのかむこどのっ?!」

アラタヨ(擬似餌)
「………」

 ああ、とも うう、ともつかない声をあげ、なされるままになっていましたが、問いかけには、コクリと首を縦に振りました。

「…ああ、大事ない。」

 無事を誇張すべく、薄らと笑みを浮かべて

よね子
「…っ!」
「…ほんとかっ!」
「無理してないっ…?!」

 服をガシッと掴んで揺さぶってます

アラタヨ(擬似餌)
「し、して、…ない、ぞ。案ずる、な、っ」

 ぐわぐわと揺さぶられながら、間延びした声をあげます。

よね子
「!」
「!!」
「ひょぁー!! さすがっ!むこどのだっ!!」
「さすがっ! よね子がむこっ! アラタヨどのだっ!!!!」

 びたっと抱きついて、顔を服にこすり付ける

「……ぅぅっ…あたいは…てっきり……むこどのが……」
「……。 …あたいの村の奴等も…すまねっ。 ……あんな事、考えてたんだなんて…知らながった……」

 数瞬の迷い。そして、意を決して、よね子は言う

「……。」

 それはきっと、つよがり、と言うのだろう

「…むこどの!あたいをたべるかっ!」
「せめてものっ! 罪滅ぼしだっ!!」

よね吉
 え”ぇ”!?と、後ろで驚愕している 

アラタヨ(擬似餌)
「…んな…!?」
 
 ギョッと目を見開くと、素っ頓狂な声を上げました。

よね吉
「ばっ!ばかやろっ!!」

 ぐんっと脚に力を込めて、ばしっっと跳躍する。一回転、二つ回転し、捻りを一つ…そして、土下座の形で着地する。

「なら!おらを!」
「おらの魂を喰らってくんろ!!!」
「それで!!どうか!!ひとつ!!」
「おゆるしくだせぇ!!けだ…」
「アラタヨ殿!!」

アラタヨ(擬似餌)
「………」

 暫く口をぱくつかせ…困ったように眉を下げると、米吉の前に屈みました。

「…ええと。…どうか、面(おもて)をあげてくれ」
「俺は、…其方も、其方の娘も、喰らうつもりはないのだ」

 其方には、礼を言いたいくらいなのだから…ワタワタとまごつきました。

よね子
「!?」

よね吉
「?!」

よね子
「……そっか、そうかぁ、そうかぁ~…………」
 ペタンと地に座り込み、気が抜けて、間抜けな溜息を漏らす。

アラタヨ
★『伝説の使用』を宣言。
自分の予言を1つ消去し、かわりに別の特技予言、これまでの試練の波乱予言、ランダム予言から1つを獲得する。
アラタヨ
シナリオないで得た〈予言:あなたとよね子のお話は、めでたし、めでたしでは終わりませんでした〉を消去
アラタヨ
試練の〈波乱予言:裏切り者と扱われました〉を獲得します。

マスター 受理!!

アラタヨ(擬似餌)
 へたり込む二人を見て、小さく笑い声を漏らし、それから、ひどく真面目な顔を作ると、よね子に向き直り、こんな事をいうのでした

「…信じてもらえないかもしれぬが、」
「俺はただ、愛おしい貴女と、共にありたいと願っている」
「…よね子や。もし、俺を信じてくれるのなら、」
「この手を取ってくれないか」

 …叶わぬなら、俺は其方たちの前から姿を消そう。村の者たちには、この崖から落としたと伝えればいい。

 背後の崖を尻目に、そんな申し出と共に、手を差し出しました。

アラタヨ
《オペラ》"魔境" を宣言します。

《オペラ》"魔境"
効果:その炎は人に偽りの救いを与え、堕落させる
条件:そのモノがあなたを信じる

よね子
「…………」

 はっと息をのむ音だけが聞こえる。

「…………」

 そして、眉根を下げ、優しく微笑む。

「むこどのは、こんなあたいを」
「りっぱな花嫁にしてくれたっ。」
「一度、交わしたやくそくを、あたいはっ」
「違える事はぜったいにしねぇっ。」

 そして、ゆっくりと、歩み寄って、アラタヨの手の上に、自らの手をチョコンと乗せた。

「この身も心も すでにむこどののとりこだっ」
「しんじるも、なにもないぞっ。 あたいが、むこどのを信じたいから、そうするのだっ」

 そして、手をきゅっと握った。きらりと頬を伝う涙が一粒。これは…悲しくて流す涙なんかじゃない。

「むこどのがっ」
「このせかいで一番っ! 大好きだっ!」

 そこには、満開の笑顔があった。 

マスター
 オペラ『魔境』の発動条件を満たしました。

アラタヨ
★〈オペラ予言:そのモノの価値観は一変しました。その魂は生きながらにしてあなたのものになりました。〉を得、「実現」させます。

アラタヨ(擬似餌)
「…………」
「…ありがとう、」

 無防備で飾りげのない言葉。呼応するように、一筋の水を目尻から流しました。溢れた水滴は、重ねられた手に落ち、少女の手の甲に、勿忘草の印を刻みました。

「…俺も、」
「……あなたが、ずっと、好きなのだ」

 それは、初めてよね子にかけられた、率直な好意を示す言葉だったかもしれません。

 視線が交差する。よね子の瞳がきらりと輝く。

よね子
「ふっふっふー…!!」
「あたいもっ! ようえんなおんなになっちまったっ!」

 繋がれた手を、天に掲げ、珍妙な勝鬨を上げた後

「ならっ!」

 そして、再び、がばっと抱きついた。

「これからもっ!」
「すえながくっ!」
「よろしくなっ!」
「むこどのー!!」

アラタヨ(擬似餌)
「…嗚呼」

 穏やかに微笑みました。

「こちらこそ宜しく頼む。」
「我が嫁よ、」

 かくして。
 とある農夫のぼやきから始まった、奇妙な異類婚姻譚は、一人の村娘と農夫の失踪という形を以て、幕を下ろしました。
 土地神の眷属を名乗るキツネに似た怪物の甘言に誑かされ、拐かされた者として、裏切り者と扱われたとかいないとか…
 某所にそんな話が言伝えられていますが、真相は当事者たちにしか分からない事でしょう。

アラタヨ
★〈波乱予言:裏切り者と扱われました〉を「実現」します。

マスター
受理致します。全ての予言の達成を確認しましたので、

ケダモノオペラ

遥 唯祈様作
『小さな花嫁が来た話』

閉幕とさせていただきます。

…ぅ……!ぅあぁあああ!!!!!!!
いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!
おつかれ!!!!さま!!!!!!!
でしたああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!

PLつぎの
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
お疲れ様でしたッッッッ!!!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?