見出し画像

私が「子供が欲しい」と言わない理由

男性でも子供が好きという人は多々いるもので、私もその1人だったりする。

私がスマホを見ながらニヤニヤしている時は8割がたネットにアップされている赤ちゃんや幼い子供の写真や動画を見ている時であるし、職場に来た子供の客とはすぐ仲良くなる(おかげでショタだのロリだのとよく言われる)。そして「なぜ保育士にならなかったの?」と言われた経験は数えきれない。

またこれもよく聞かれるのが「子供欲しくないの?」である。それに対して「うん、欲しい」と答えたことは一度もない。

そもそも「子供が好き」=「子育て熱心」とは限らないし、「子供が好き」=「子供が欲しい」はまるきり別の話ではあるまいか。
いや、大方その通りなのかもしれない。しかし子供というものは大人の想像を遥かに超えてくる生き物である。子供が好きならば子育てがうまくいくとは限らないわけで、子供が好きであることは子供を持つことに対してアドバンテージとはなり得ないと思う。

アドバンテージなどとまるで戦略のように子育てを語ってしまった。そもそも私は仕事や親戚・友人の子供の面倒を見ているぐらいで子育て経験者ではない。だから偉そうに子育てを語れる人間だとも思っていない。

そんな理由もあり、「子供が好き」という気持ちだけで無責任に「子供が欲しい」とは、私は言えないのだ。

そうは言いつつ自分でも思う。自分に子供ができたらつきっきりで面倒を見ていそうだなとか、子煩悩になってそうだなとか。いいのか悪いのかわからない。

男性が「子育てを手伝う」とSNSに書こうものなら「手伝うってなんだ? 夫婦なんだから主体的に関わって分担するのが当然だろう」とプチ炎上するご時世である(この批判はまさに仰る通りである。しかし時折男性が家事育児に関わっていくことを邪魔しようとしているようにしか思えない批判が混じっていることもあり、言及が難しい)。ただ、じゃあ夫婦がともにバリバリ育児に関わっていけばうまくいくだろうか。そんなこともないと思うのだ。

20代前半の頃、「子供ってみんなかわいいですよね」と既婚40代女性の先輩に言ったら、「子供みんながみんなかわいいとは限らないですよ」と返されたのが今も記憶に残っている。

今はわかる。友人の子供(1才半)が日中暴れたい放題暴れておいて12時過ぎても寝てくれない時など、私も寝かしつけた後へろへろになっていた。などと言いつつ実はこれぐらいのことは想定の範囲内だったし、それでもやっぱり子供はかわいいと思っていた。しかしこれが毎日だったらどんな親も精神的に追い詰められてしまうのではなかろうか。

遠距離恋愛の末結ばれた友人夫婦がいる。夫は外で働きながら家事育児に積極的に関わっており、妻もそんな夫の姿勢(家族への関わり方)を高く評価していた。
しかしそれでも子育てはうまく行くとは限らない。夫が在宅でできる仕事をしていない限り、妻がワンオペで子供を見なければいけない時間は必ず生じてくる。遠方から越してきたため妻には知り合いがいない。この時に子供たちがやんちゃし始めたらと考えると彼女にかかる負担は想像を絶する。

夫が家事育児に参加するのは当然のことだし否定するつもりは毛頭ない。しかしこの夫婦に関して、私の目には家事育児参加に熱心な夫の存在が却って妻を精神的に追い詰めていたように思えた。夫婦がどれだけ頑張っても思う通りにならないのが子育てである。もし夫の育児が拙かったり、知識が足りなくて下手ばかりしていれば妻も夫のせいにできただろう。しかし夫がよくできたがゆえに益々彼女は自分を追い詰めて病んでしまったように見えていた。だからと言って夫が悪いとも思わない。誰も悪くなくてもうまくいかないことが世の中にはある。


また私は知っている。私と同じように子供が大好きだが、子供がいない人たちのことを。不妊症の本を読んでいると不妊治療をしている当事者たちの実体験に胸が痛む。実際私の周囲にも不妊治療を続けている人がいた(本人から直接聞いたわけではないが、薄々気づいていた)。彼女は結果的に子供に恵まれたが、ずいぶん長く時間がかかってしまったように思う。その間、どれほど苦しんだことだろう。

私が「子供が欲しい」と言わない理由のひとつとして、自分ないしパートナーが不妊だったらとわかった時絶望しそうだからというのもある。不妊に悩む夫婦は多いし、自分がそこに入っている可能性も捨てきれない。

だからこそ私は自分にも周囲にも言い続けている。「子供は得難い宝物」であると。

大学の教授が言っていた言葉である。

「最近は"できちゃった結婚"とか"子作り"とか言いますが、子供をなんだと思っているのか。昔は"子宝に恵まれる"や"子供を授かる"と言われていました。それぐらい子供は有り難いものだったのです」

この教授は日本有数の極端な保守思想の人だった。これまで書いてきたことを見直せばわかる通り、私はこの方の言うことの多くに賛同できない。しかしだからと言って全否定はしないし、この言葉は今も胸に刻んでいる。


私が仮に同世代と結婚するとしたら、私と結婚する相手もあと数年で高齢出産のカテゴリに差しかかるだろう。物理的にはパートナーが妊娠するわけであるし、リスクを相手の女性が多く負うと考えると思うところもある。子供も大事だが、今いる妻もかけがえのない存在である。

子供に恵まれなくても、妻と幸せに暮らせる人生だったら悪くないと思うのである。独身が夢を見てるなと言われたら言い返せないが、それでも思い続けている。


子供? やっぱり欲しいとは言わない。でも持てたら幸せだと思う。そして幸せになるために力を尽くさなければいけないと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?