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Sho.artの猫日記 「見守る猫」

先日、母が入院した時にお向かいのベッドには70代後半の素敵なマダムがいらした。

白髪のショートヘアがとても上品で、はにかんだような笑顔がとてもチャーミング、美しいマダムだ。洗練された会話も魅力的だった。

社交的な母はすぐに打ち解け、私も毎日母を見舞ううちすっかり仲良くなった。

会話の話題はおもに猫。

母も私も大の猫好き、そしてマダムも生涯たった1匹、とても愛した猫がいたそうだ。

16年間ずっとそばにいたシャム猫の「茶々丸」

とても嬉しそうに、懐かしむようにたくさんの思い出を話してくれた。

茶々丸の話を聞いた次の日、シャム猫のイラストのポストカードを額に入れ、マダムにプレゼントした。

「いつでも茶々丸が守ってくれていますよ」という言葉を添えて。

私の作品は猫のイラスト作品が多く、その中にはもちろんシャム猫もいたので、喜んでくださるかなと思った。病室は色のない無機質なもので、母よりも長く入院生活を送るマダムの小さな彩になり、そして何より笑顔になってくれればと思った。

マダムは本当に喜んでくださって、看護師さんたちが来るたびに「私の茶々丸なのよ!」ととても嬉しそうに話していたそうだ。そして一日中その「茶々丸」を眺め嬉しそうに微笑んでいたそうだ。

プレゼントした日の歩く練習は、いつもより長く歩けたらしく「茶々丸効果ね!」とマダムも療法士の方も驚いていた。

私には「本当にありがとう。この絵はわたしの宝物よ、茶々丸がずっとそばにいるのよ。あなたの言う通り、茶々丸が見守ってくれているわ!ありがとう」となんどもお礼を言ってくれた。

スランプばかりで落ち込むことの多い私。

ドラマチックで大げさだと笑われるが、私の作品は無意味なのか、神様は私に絵を描くことを許してくれないのか、何かの役に立ってほしい、誰か一人でも私の作品で笑顔になってほしい、いつもそう思っていた私。

あの日、あの絵を見たときのマダムの弾けるような笑顔が、神様からの答えだったと思う。

「描き続けなさい」

あのマダムは私にこの貴重な機会を与えてくれた天使だったのか。こんなに喜んでくれ、絵を描き続けていてよかったのだ、と折れた心を立ち直らせてくれた。

などと相変わらずドラマチックで大げさな、思い込みの激しい私だ。

現在マダムはリハビリ専門がある病院に転院した。これからどんどん回復してほしいと祈る。

美しいマダムと今はすっかりマダムの守り猫となった「茶々丸」にまた会いに行くつもりだ。

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