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電話が怖い

 父を悪役に仕立て上げたいわけではありません。父は私に色々なことを教え、育ててくれました。感謝している面ももちろんたくさんあるし、父が私たち家族のためにどれだけ身を粉にして働いてきたかも、少しは知っているつもりです。
 それでも、私にとって父は『恐怖』でした。

 高校受験を控えた中学二年生の後半から、私はときどき登校拒否するようになっていました。時には、自分の体を自分で傷つけてしまうこともありました。父は母を責めました。「俺がいない間にお前がちゃんと教育しないからだ」と。
 週末、父が帰宅した車の音を聞くと、心の奥底からじわじわと恐怖心と緊張感がわいてくるのでした。緊張で体がこわばりました。父の滞在中は、父がいつ怒り出すのではないかと、父の顔色をずっと伺っていました。
 そんな子ども時代だったからか、私は大人になっても人の顔色を伺い、人にどう思われているかをひどく気にする性格に育ちました。
 また父は週末、受験を控えた私に勉強を教えてくれました。でも、私にとって父は『恐怖』です。『恐怖』がすぐ隣にいる状況で、勉強に集中できるはずがありませんでした。父には申し訳ないけれど、とても苦痛を感じる時間だったのです。

 また、父は私に宿題を課して去っていくのでした。私が宿題をサボったり、学校へ行かなかったりすると、電話で怒鳴られました。
 私の実家の固定電話は、電話の呼び鈴が鳴る前に微かに『カチッ』という音がするのですが、その微かな音を聞くだけで動悸がするようになりました。
 今では動悸はしませんが、やはりまだ電話が少し苦手で、電話以外の方法があればそちらを選んでいます。

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