国際化とグローバル化【小論文の極意】
近年は政治経済のみならず、あらゆる分野において国際化・グローバル化についての観点は切っても切れないものになりました。特に情報技術の発達に伴い「国際化」「グローバル化」がどんどん身近になり、小論文試験でも必須の切り口になっています。
そのため、特に最近ご提出いただく小論文原稿やプレゼン資料、志望理由書等では、よくこれらの言葉や類似する用語が多く書かれています。ただ、この「国際化」と「グローバル化」がまったく同じもののように使われてしまっていることも多いようです。これらはむしろまったく別視点のものですからこの機会にチェックしていきましょう。
【1】 国際化とは何か
(1)国際化の英語分析
「国際化」という用語についてウィキペディアの定義を確認してみましょう。
「国際化」という言葉は英語では「internationalization」といいます。この言葉は、
で構成されていると考えてください。
第1に「inter」ですが、これは私たちがよく高速道路で耳にする「〜インター(=インターチェンジ)」と同じような概念です。つまり、高速道路という1つの道路と、いわゆる下道と呼ばれる1つの一般道とが交わる点を表します。「inter」という接頭語は、この1つの事象と1つの事象が「交わる」という様子を表しています。
第2に「nationalization」ですが、これはそもそもは「nation」の派生形です。この「nation」は日本語では「国家」「共同体」を表し、その形容詞が「national」です。よく「ナショナルチーム」ということで日本代表を表したりしますよね。そこに「ization」が付くことで国家を形成していく活動や言動ということになります。よく「〜ナイズする」ということで、「〜化していく」といったようなニュアンスで日本語でも用いられますよね。
したがって、inter+nation+al+izationという言葉は、「1つと1つが交わる」+「国家やその活動」ということで、要は「1つの国と1つの国の活動が交わること」を指しています。
(2)国際化は何ヶ国が関係しているのか
「国際化」という言葉は英語から考えていくと「1つの国と1つの国の活動が交わること」を示しています。つまり、1つの国と1つの国ということで、合わせて2ヶ国しか関わっていないということです。イメージとしては世界の196ヶ国(2023年7月現在:以下省略)全体との関係性が思い浮かぶかもしれませんが、国際化というのは1つの国と1つの国の関係性だということです。
【2】 グローバル化とは何か
(1)グローバル化の英語分析
「グローバル化」という用語についてウィキペディアの定義を確認してみましょう。
「グローバル化」という言葉は英語では「globalization」といいます。この言葉は、
で構成されていると考えてください。
「global」という言葉は、「globe」という名詞が形容詞化されたものです。この「globe」という言葉は元々はラテン語系で「球体」を表す言葉で、英語では「地球」を意味します。地球という言葉はearthが有名かもしれませんが、globeというのは元々が球体というニュアンスがあるように、太陽系の中にある地球という惑星の発想というよりも、地球そのものを中心としてその球体の様子を抽象的に大きく表しているものだと考えると良いでしょう。
このglobalization=グローバル化というのは、地球という1つの球体においてそこに所属する196ヶ国が一体となって活動をしていくという発想を基にしたものだということです。地球という1つの球体の中に1つ1つの国が所属しているということです。
(2)グローバル化は何ヶ国が関係しているのか
「グローバル化」という言葉は英語から考えていくと「地球という1つの球体・丸み」を示しています。つまり、1つの国と1つの国ということではなく、まずは地球という大きな視点から1つの球体をイメージした上で、そこに所属する国がそれぞれ196ヶ国あるということです。国と国との関係性ではなく1つの球体が前提でそこに所属する国々がどのように動くかという話をしています。
【3】 国際化とグローバル化のイメージ図
【4】 国際化orグローバル化
例えば、「空港」という場合、国際かグローバルかどちらが使われているかと考えると、正解は「国際」です。「国際空港」と呼ばれます。「国際空港」を思い浮かべてみると、羽田国際空港や成田国際空港、関西国際空港等から飛び立つ飛行機でその飛行機に関わる国の数は出発国と到着国の2ヶ国だけですよね。だからこそ「国際空港」であって「世界空港」でもありませんし「グローバル空港」でもないわけです。
ではなぜ国際空港が何か世界規模の大きな「グローバル」のイメージになるかといえば、それは「国際」という関係性が1つだけでなく、多くの「国際」によって線がたくさん集まって面のようになっているからです。日本とアメリカを結ぶだけの国際ではなく、日本と中国も、日本とイギリスも、日本と南アフリカも、日本とオーストラリアも結んでいるわけで、それが山のように存在して束になるからこそ、世界空港?グローバル空港?違う?という状態に見えてしまうということです。1つ1つの線が束になって面に見える状態になっているだけだということです。
【5】 小論文における国際化とグローバル化
小論文においてよく議論されるのは、上記から考えてもおわかりのように、やはり「グローバル化」の方です。1つの国と1つの国の2国間関係についてももちろん議論されます。特に日米や日中といったところでの政治的なお話はよく出てきますよね。しかし、特に入試における小論文では、【3】のように地球という球体から見た視点、つまり広い視野での大きな議論が求められることが多いわけですから、どうしてもグローバル化の是非についての課題が多くなるということです。
グローバル化というのは、例えばアメリカ合衆国という国のルールを世界の基準にするという発想ではありません。もっと上の概念で地球規模で地球にとって正しいこと、合理的なことを考え、その球体に所属する国家として、アメリカ合衆国も小さな国家であるリヒテンシュタインも同じように1つずつの国家として見るものです。アメリカ合衆国でも中華人民共和国でもそして日本国でもなく、上の概念としてのある一定の基準・ルールをその所属するすべての国家に対して当てはめていくというのが良いものなのか悪いものなのかという論点で考えるのがグローバル化だということで、それが小論文の課題になるわけです。
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