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雨時計と森と男たち

国道を抜け1時間ほど走ったころには僕の体は街からだいぶ離れていた。

脇の雑木林に入り濡れた土の上をBMWのG310GSはゆっくりと傾斜にあわせて揺れながら走った。さらに30分ほどたってから何度かこまかく折れ曲がった道を抜けて別荘に着いた。

目の前の別荘は高床作りで、床下は大きなガレージと物置のスペースが確保されていた。
幼いころは気づきもしなかったが湿度が高いこの土地に合わせた造りのおかげで建物はさほど痛むことなく残っていたようだ。

預かっていた鍵でなかに入ると湿った松葉の香りが部屋中にこもっていたが、荷物を置いてすべての窓を開け外を眺めると冷えた風がゆっくりと室内を通ってくれた。

広いウッドデッキは長年使われていなかったため、ところどころ大きな染みのような影ができていたがこのまま使うにも問題はなさそうだ。

当分ここで過ごすことになるかもしれないと体は思った。
答えがでるまで----心が僕とまたひとつになる日まで僕はここで絵本を書いて暮らすのだ。

【今分かっていること】体と心は一緒にいない。風は無口な友だち。

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