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雨時計と森と男たち 第5話

海岸では10人程の男女が集まり思い思いに楽しんでいた。

届いたばかりのカーペットのように海はなめらかでキラキラと輝いている。
僕は昼間に書店でアルバイトをし、日が暮れはじめると少しだけ海岸を歩き、それから夕食の準備をし絵本を書いた。

彼女と別れたあとの僕はだれが鑑定するまでもなくまったく価値のない人間だった。
彼女は僕にとって焦点であり歴史であった。
彼女のいない僕からは輪郭が消え、語り継ぐべき物語を見失ってしまった。

1年ほどそんな生活を繰り返したが僕は1マスも進むことなくその場で1歳だけ年をとった。
そしてある夜僕は別れた彼女に手紙を書いた。

心がとても長い手紙を書いているあいだ雨は止むことなく世界中に等しく降り続いていた。

【今分かっていること】彼女と別れて1年たった。

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