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ソングサイクル・ミュージカル「雨が止まない世界なら」コンセプトアルバム 感想


2022年もあっという間に師走です。今年はあまりnoteを更新しておらず、せめて今年1年よく聴いた音楽のまとめ記事をと書き始めたのですが、書き出してみると1つの作品について書きたいことがどんどん出てきたので、長くなりそうなやつは、やっぱり単体で記事を書くことにしました。

第1弾は、「雨が止まない世界なら」コンセプトアルバム!


ミュージカル等で活躍されている俳優・クリエイターの西川大貴さん作の短編集ミュージカル作品。作詞・構成は西川さん、作曲はピアニストの桑原あいさんが担当されています。

未曾有の事態によって世の中の動きが止まった2020年、西川さんが出演予定だったミュージカル「ミス・サイゴン」も全公演中止になり、演劇界が身動きがとれなくなったときに書きはじめたという、この作品。

まずは、全曲の歌詞の公開からはじまり、朗読だけで進むまだ曲のないミュージカル“ポエトリーリーディング”の動画公開、ワークショップ公演の開催と進行していき(わたしは今年出会った新参者なのでリアルタイムで追っていたわけではなく、アルバム聴いてあとから全部見ました。それはそれでめちゃ面白かった)。

▶ポエトリーリーディング

▶ワークショップ公演


そして今年の6月、次はアルバム作品として我々の手元にやってきたというわけです。

収録には、海宝直人さん・昆夏美さん等人気ミュージカル俳優の方々が多数参加されているほか、アーティストの七尾旅人さんも歌っていらっしゃったりします。えー!豪華メンツ!!!

そんな「雨が止まない世界なら」は、突然雨が降り止まなくなった世界で、変わってしまった日常を生きる、さまざまな人たちの心模様を綴った歌が連なってできているミュージカル作品です。

正体不明の雨が降り続けている世界。一見非現実的な設定にも思えますが、その世界では、ここ数年わたしたちが経験してきたことと、まさに同じようなことが起こっていて。私たちと同じ、いち生活者目線の、身近でリアリティのある歌詞で綴られていることもあり、今の世の中を生きている誰もが感情移入してしまう内容になっていると思います。

この人自分と似てるなとか、ああ、こんな人もいるよね、とか、そうかこんな捉え方もあったか、とか、この3年間で自分が見てきたもの経験してきたことと重ね合わせて、振り返ったりしながら聴きました。

みんなが同じ「雨が止まない世界」にいるのに、立場や環境、人が変われば、変化に戸惑ったりわくわくしたり、怒ったり泣いたり笑ったり、恐れたり愛したり孤独を感じたり繋がりを感じたり変わりたかったり変わりたくなかったり誰かのために生きたり誰かに会いたかったり。考え方や感じることは、ひとそれぞれ。

でも、みんなが同じように、以前と変わらず、寝て、起きて、ごはん食べてる。みんな違って、みんな同じ。いろんなものが変わってしまったけど、世界は変わってない。

シンプルで前向きなメッセージに、自然と力をもらえる作品です。無理に前向かせようとしてくるんじゃなくて、下向いてる日ばっかりでも、下向いてたってとりあえず生きてりゃオッケーだし、いつかは空見上げたくなる日もくるさ、くらいのテンションで。

急速に変わっていく日々のなかでいろんなことがあったけど、みんな毎日生きてきたよなあ、と思って、じんわり泣いて。聴き終わったあとは爽やかな気分で、自然と、部屋のなかでひとり、拍手していました。

作品全体通してのメッセージも良かったですが、1曲1曲単体で聴いても名曲ぞろいです。耳に残る歌ばかりで、1度聴いたら3日は、雨の曲がシャッフルで勝手に脳内再生されまくる生活になります。つい歌ってしまうので、日常がミュージカル状態に・・・笑 (いまも書きながらめっちゃ脳内で雨蛙が歌っている)

そしてみなさん、お歌がとてもお上手!いや上手いのは、当たり前といえば当たり前なのですが。参加アーティストの方々の演技が素晴らしくて、音だけでもちゃんとミュージカル作品として楽しめる不思議さ!ここにもほんとうに感動。ソングサイクルミュージカルおもろー!!

むしろ、音だけなぶん、想像が掻き立てられる余白も多いのがまた楽しいです。「世界は変わってない」の最後の「あ」だけでめっちゃ語り合えそう。今、100人いれば100人分の「雨が止まない世界なら」があるのでしょうね。おもろー!!!


全曲良いけど、強いていうなら「空に飛ばす手紙」と「東京漂流」が共感する部分があって特に好きかなあ・・・あと「舟を漕ごう」「世界は変わってない」も大好きで、何回聴いても鳥肌立ててるしちょっと泣いてしまいます。あ、あと「雨蛙の主張」も楽しいのにちょっとチクッと切なくなるところもあって好き。作中通して重要なモチーフになってる「今日も窓が濡れる」も、物語の世界観に一気に引き込んでくる感じがすごく良くて、ドキドキする曲の展開が最高。キツネに化かされた海宝さんも推せる。あかんこのまま全曲言いそう。


ちなみに「正気を気取った狂人」「逃げのびるだけでいいだろう」の2曲(この曲たちも大・大・大好き)は、西川さんと桑原さんのユニット“かららん”で以前リリースされていた曲で、アレンジを変えて再収録されています。どちらも書き下ろしと言われても違和感ないくらいに「雨」の世界にハマってて、これもまた面白いなと。

「正気を気取った狂人」は、原曲があるのを知らずに「雨」のほうを先に聴いたので、完全に書き下ろしだと思っていました。原曲を聴いてみると、もはや全く別の曲ですよね?くらいに変わってるし。桑原さんの編曲力が天才。(しかも、先に歌詞から公開されてたってことは、多分全部、詞先で作ってるんですよね・・・?すごすぎない?ミュージカルって全部そういうものなの?教えて詳しい人)

かららんバージョンも妙におしゃれなのが逆に怖くてクセになるけど、どちらかというと、雨バージョンがめちゃくちゃかっこよくて好みです。是非とも舞台で聴きたいやつ。ばちばちにダンサー踊ってそう。


▶︎かららんバージョン


▶︎雨バージョン


「逃げのびるだけでいいだろう」もすごく良い歌で、かららんのほうも先に聴いてて好きだったのですが、雨の曲たちのなかに入ると、”雨が降り続ける世界で生きている人の歌”として、ちゃんと今までと違った聴こえ方をするのが凄いなと思いました。時代が変わったり、新たな物語が生まれたりすると、前に書かれた歌詞がまた違った意味を持ち始めたりするところが、音楽って面白いよね!と思います。

▶︎かららんバージョン


▶︎雨バージョン


あと、やっぱりわたし、西川大貴さんの歌声がなんかめちゃめちゃ好きなんですよね。なんなんだろうな。もはや周波数的な問題? YouTubeの配信でお喋りしてる声を聴いてても、声が心地良すぎて癒されてうとうとしがちです(ちゃんと話をきけ)。出会ってしまいましたねえ。お世話になります。

「雨が止まない世界なら」は、サブスクや配信にはなく、CDのみで販売されています。今の時代に、CDを手に取ることでしか得られない体験ができるということもまた、粋ポイントですよね。歌詞カードや、紙素材のケースの手触りも非常に良い感じです。わざわざCDを購入する価値しかありません。

※2023/7/1追記
サブスク解禁されました!!!ありがとうおめでとう!!!楽曲リンク追加しました!
私たちの生活からとても身近で、ミュージカルというものに敷居の高さを感じている方々にこそ聴いてほしいなと思う作品です。もっともっと気軽に、たくさんの人に届きますように!!!!!


ちなみに、年明けにはコンサートも予定されています。もう吐きそうなくらい(?)行きたいけど、休みがとれなくて多分行けません。CDで聴いてたって何度でも感動できるんだから、ぜっっったい生で聴いたら良いに決まってるのに・・・諦めきれない・・・遠征組つらい・・・

でもでも、だからこそ、再生ボタンを押せばいつでも何度でも出会える、アルバムというかたちで作品を出してくださったことに本当に感謝です。これからも何回も聴いて楽しみたいと思います!


本当に本当におすすめなので、ミュージカルファンの方はもちろん、そうでない方も、「雨が止まない世界なら」是非是非お手にとって聴いてみてください!

▶︎各種サブスク配信リンク


▶アルバム全曲ダイジェスト


▶︎ソングサイクル・ミュージカル「雨が止まない世界なら」コンセプトアルバム/西川大貴・桑原あい
伊藤広祥・小此木麻里・海宝直人 ・昆夏美・咲妃みゆ・清水彩花・鈴木壮麻・ spi ・田中秀哉 ・田村芽実・塚本直 ・土居裕子 ・豊原江理佳 ・内藤大希 ・七尾旅人・畠中洋 ・松原凜子 ・山野靖博・吉沢梨絵・内海啓貴





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