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GITAI創業Story

はじめに

宇宙ロボットスタートアップGITAIのFounder&CEOの中ノ瀬です。GITAIは宇宙での作業コストを100分の1に下げることを目標に、軌道上サービス(人工衛星に対する寿命延長サービス)や月面でのインフラ構築が可能な宇宙ロボットを製造しています。

GITAIは元々私が日本で創業したスタートアップですが、既に米国に本社やほぼ全ての機能を移し、自分自身やその他経営陣も永住権を取得して米国連邦法におけるUS Personとなり、米国で日々挑戦を続けています。最近だと昨年合計でUS$45M(日本円で約70億円)の資金調達を行い、DARPA(アメリカ国防高等研究計画局)から受注を獲得しています。
また、GITAIは2021年の国際宇宙ステーション船内での実証成功に続き、今年(2024年)3月に国際宇宙ステーション船外での宇宙実証に成功することができました。メカも電気基盤もSoftwareも全て内製開発した製造コスト1000分の1以下(※NASAのロボットアームとの比較)の宇宙ロボットが、最初の宇宙船外実証で実際に宇宙空間で複雑な作業を全て遂行するというのは本当に難易度が高い挑戦だったと思っています。

米国宇宙企業としてはやっとスタート地点に立ったというだけですが、それでもここまで本当に多くの挑戦がありました。
何のバックグラウンドも無い状態でロボットのプロトタイプを作り出した時も、1人でGITAIを創業して宇宙業界に参入した時も、宇宙ロボットを全て内製開発すると決めた時も、宇宙実証をやると決めた時も、多くの人達から「できるわけがない」と言われました。
宇宙業界の事業開発とスタートアップの資金調達では本当に理不尽なことを何度も何度も経験しました。全く事実無根の悪い噂話を流され、噂話を信じた人たちから心無いことをたくさん言われたこともあります。そして、何度も会社が潰れるかもしれないという状況を経験しました。
GITAIはまだまだ挑戦中のスタートアップですが、これまで何度も困難を乗り越えてここまで来れたのは、GITAIのために頭を下げて、GITAIのために熱くプレゼンをして、GITAIのために行動してくれた方々がいるおかげです。

今でこそGITAIは米国のスタートアップとして活動していますが、創業以降の大部分は日本のスタートアップとして活動してきており、これまで日本で本当に多くの方々に支えられてきました。また、今もGITAIの投資家の多くは日本の投資家(Venture Capital)であり、日本の投資家の皆様のおかげで米国で大きな挑戦ができています。

個人的に、自分の役割は何よりもまず結果を出すことだという思いからひたすらGITAIの経営と事業・開発に集中してきたため、これまでNoteのようなものを書いたことが一度もありませんでした。
しかし、普段GITAIを支えて下さっている方々、GITAIを応援して下さっている方々から、これまで本当に多くの「創業期」についての質問を頂いてきました。宇宙やロボットに全くバックグラウンドの無い起業家がどういう経緯で1人で宇宙ロボットを開発するスタートアップを創業しようと思ったのか、という質問です。

GITAIの創業期は長く、また様々な試行錯誤を経て宇宙ロボットに辿り着いているため、これまでは非常に端的に回答することしかしていませんでした。
しかし、GITAIが宇宙船外実証に成功して宇宙企業としてのスタート地点に立ち、また米国に拠点を移し米国で挑戦しようとしている今、GITAIを陰ながら支えて下さっている方々に向けて、GITAIがどのような経緯で誕生し、どのような基準で意思決定をしているかについてより知って頂くために(たぶん最初で最後の)noteを書こうと思います。

かなり長くなってしまいましたが、ぜひ最後までお付き合い頂ければ幸いです。


スタートアップはべき乗則に従う

私は学生の頃から漠然と起業に興味があり、新卒で入社して勤務していた日本IBMを退職した後、インドで最初の起業をしました。日本ではなくインドで起業した理由は、①起業した2013年当時インドのスマートフォン市場が世界一伸びていた(年率163%で成長していた)こと、②米国や日本で既に存在するサービスのインド市場版を開発するタイムマシン経営でも参入可能そうなサービスが複数あったこと、③インドに進出している外資系企業(※例:2013年当時、インドに約1000社の日系企業がインド子会社を設立していた)向けのサービスはスモールビジネスとして足元の売上を作るのに適しているのではないかと考えたこと、の3点です。
1社目の会社は一切投資を受けずに自己資金のみで創業したので、最初の1年目は受託開発ばかりしていました。2年目からは受託開発で得た利益を使って自社サービスのWebサービスやスマホアプリを開発してリリースしていきました。1社目の会社は約2年半経営した後、事業売却という形で挑戦が終わりました。私自身はインドから東京に戻り、次の挑戦を探していました。

私は子供の頃からSF系の小説やアニメが大好きでした。SFのような技術について日頃から調べているうちに、最先端の技術を実用化することで世界の大きな課題を解決するスタートアップ(いわゆるDeep Techスタートアップ)の存在を知り、自分も挑戦してみたいと思うようになりました。
※スタートアップとは、いわゆる会社の起業の中でも、特に短期急成長するように設計された会社のことです。スタートアップとは?についての詳細な解説は東京大学 FoundX ディレクター馬田隆明さんのスライド「スタートアップとは何か」をぜひ参照下さい。
また、スタートアップの中でもDeep Techスタートアップとは、最先端の技術を使って課題を解決し、短期急成長するように設計された会社のことです。Deep Techスタートアップとは?についても馬田隆明さんのスライド「Deep Techスタートアップとは何か」が非常に参考になりますのでそちらを参照下さい。

Deep Techスタートアップに挑戦しようと決めて、GITAIの創業から現在までの経営に至るまで、私が最も重要視している意思決定基準は「スタートアップはべき乗則に従う」ということです。
スタートアップにおけるべき乗則とは、非常にざっくり言うと、ごく少数の変数が物事の結果の大部分の影響を与える、ということです。例えばVenture Capitalの場合、出資したスタートアップのうち、ほんの一握りのスタートアップのリターンがその他すべてのスタートアップのリターンの合計を大幅に上回ります。(※スタートアップにおけるべき乗則についてはPeter Thielの「Zero to One」に詳しく記載してあるのでぜひ読んで下さい。)
そして、スタートアップの成功要因もべき乗則に従うと考えています。つまり、スタートアップは市場と製品/技術と参入タイミングというたった3つの変数の組み合わせでそのスタートアップの成功が7割決まってしまう、ということです。

スタートアップの成功は市場(where)と製品/技術(what)と参入タイミング(when)で7割決まる

市場選択とタイミングの重要性については多くの偉大な起業家・投資家が語っているのでここで私が語るまでも無いと思います。
自社の売上やシェアが業界1位なのか業界100位なのかは企業努力によって決まりますが、特定の業界1位の企業の時価総額が100億円なのか100兆円なのかは市場で決まると考えています。また、ほとんど同じような製品・事業でも(検索エンジンやSNS、ロケットに至るまで)、市場の参入タイミングが数年異なるだけでその後の成否を大きく分けています。
よくスタートアップの成功要因としてVisionに焦点が当てられがちですが、偉大なVisionが偉大なスタートアップを作るのではなく、急成長する市場と事業が偉大なFounder/CEOを生み出し、偉大なvisionを持っていくようになると考えています。

そもそもスタートアップは複雑性を排除した、極端に単純化された因果関係・ストーリーで成功要因や優位性を語られてしまうことが多いように思います。そして、実はスタートアップ側も資金調達やメディア向けにある程度素人受けするストーリーに沿って自社の魅力を語るため、より複雑性を排除した極端に単純化された因果関係・ストーリーが独り歩きしがちです。技術や市場の専門性が高いDeepTechスタートアップは特にその傾向が強いように思います。
しかし、実際にスタートアップを創業するFounderはそのような複雑性を排除した極端に単純化された因果関係・ストーリーではなく、市場の変化や実際の想定顧客が抱える課題、技術のボトルネックや課題、タイミングについての広範囲で深い知識等の「洞察」を基にした因果関係・ストーリーの仮説が必要だと考えています。
市場(where)と製品/技術(what)と参入タイミング(when)の3つの変数の組み合わせが成功の7割を決めてしまうスタートアップはこちらがコントロール出来ない運の要素が非常に大きいとは思いますが、最初から全てを運に委ねるのと、後は運という所まで市場・製品/技術・参入タイミングの仮説検証を行ったのとでは成功確率は大きく変わってくると考えています。

自分が1社目に創業したようなSoftwareの企業であれば、リーンスタートアップに代表されるような試行錯誤やPivotを行い柔軟に市場や製品を変化させていくことも可能だと考えています。しかし、Deeptechスタートアップは技術開発や事業化まで時間やお金がかかる傾向があり、集める人材も専門性が高いチームを組成する必要があるため後からの試行錯誤やPivotが難しく、より市場と製品/技術と参入タイミングを見極めてから本格的に初めるべきだと考えています。
スタートアップの成否に7割の影響を与え、(特にDeeptechスタートアップの場合)後からの変更が困難である市場(where)と製品/技術(what)と参入タイミング(when)の選定には徹底的にリソースをかけて慎重に行い、決めた後の日々の事業(how)の意思決定は素早く試行錯誤しながら行うべきだと考えています。

また、自分が尊敬している、最先端の技術を実用化して大きな事業にしている米国の連続起業家たちは、明らかに運の要素だけではなく、技術が実用化するタイミング(まだ実用化/事業化していないボトルネックが研究ではなく開発にある技術)と市場が大きく変化する/急成長するタイミングを見極めて事業化に挑戦しているように見えました。

市場や最新技術についての本や記事も色々と読みましたが、市場の変化や実際の想定顧客が抱える課題、技術についての深い知識等の「洞察」を得るには本や記事から得られる知識だけでは不十分だと考えました。
そこで、まずは自分が興味のある技術のプロトタイプを自分で開発して技術を学びつつ、そのプロトタイプを持って市場の想定顧客の方々にヒアリングをしていこうと決めました。

現代は人間の脳機能を拡張するデバイス(PC、スマホ等)のインターフェースが2次元から3次元に上がるタイミングか?

最初に注目したのはVR/MR技術でした。当時(2015年)はMicrosoftのHoloLenzやOculusRift、HTC VIVE等に代表されるようなVR/MR技術が大きく注目されており、一種のスタートアップ/投資ブームとなっていました。個人的にも、VR/MRのような技術によって、人間の脳機能を拡張するデバイス(PC、スマホ等)のインターフェースがそれまでのDisplayのような2次元から3次元に上がるタイミングが来ているのではと考えました。
ユーザーとしてもVR/MR端末を色々と使いつつ、より技術について勉強するためにまずはWeb3DやスマホVR用のアプリを作ってみました。

開発自体は非常に面白かったものの、個人的にはWeb3DやスマホVRは画質やフレームレート等も含め体験が非常に限定的で、コンシューマー向けのコンテンツとして大きく普及するようになるとは思えませんでした。

次に、Oculus RiftやHTC ViveのようなハイエンドVR端末向けのWindowsアプリを開発していきました。

ハイエンドVR端末向けのプロトタイプ開発も非常に面白かったのですが、ハイエンドVR端末は非常に大きくて重かったので、開発者ではない一般のユーザーが仕事や生活をするようなものになるとは思えませんでした。この時点で、VR/MR端末はハイエンドVR端末以上の性能(解像度やフレームレート)を担保した上で、少なくともサングラスくらい軽量で小型にならないとコンシューマー向けの市場としては拡大しないだろうと確信しました。しかし、スタートアップとして短期急成長を目指すには、参入してから2〜3年以内に急成長する市場である必要があります。そこで、VR/MR端末が数年以内に「ハイエンドVR端末以上の性能を担保した上で、サングラスくらい軽量で小型に」なるかどうかを検証していきました。
そもそもVR/MR端末が大きくて重くなる最大の要因は、VR/MR端末側(※端末に接続されたPCも含む)でCGのレンダリング(描画処理)をしていることでした。この負荷の高いレンダリング処理を行うために高性能なGPUや多大な電力が必要になり、端末が大きく重くなり有線で外付けのハイエンドPCが必要になってしまっていました。
この状況が解消され、VR/MR端末が「ハイエンドVR端末以上の性能を担保した上で、サングラスくらい軽量で小型に」なるには大きく分けて以下の2つのパターンがあると考えました。

①超高性能かつ超省電力かつ超小型のGPUが数年以内に開発・販売される?

現状のVR/MR端末の仕組みの延長線上で最もわかりやすいのが、超高性能かつ超省電力かつ超小型のGPUが数年以内に開発・販売されることでVR/MR端末自体も「ハイエンドVR端末以上の性能を担保した上で、サングラスくらい軽量で小型に」なり得るというパターンでした。しかし、GPUは様々な業界で需要があり積極的に研究開発が行われていたものの、質量あたりのGPUの性能の向上の仕方は指数関数的ではなく、あくまで直線的でした。そのため、必要な性能を満たすようなGPUが実現されるまでには最低でも10年は必要で、数年以内に実現される可能性は低いだろう、と結論付けました。

②クラウド上でレンダリングを行い、レンダリング結果の映像をストリーミングで端末側に表示するVR/MR端末が数年以内に開発・販売される?

次に、そもそも端末側で負荷の高いレンダリング処理をせず、クラウド上で全てのレンダリング処理を行い、そのレンダリング結果の映像をストリーミングで端末側に表示するようにできれば、端末側で必要な機能はインプット(ハンドトラッキングやHMDのトラッキング等)とアウトプットだけになり、「ハイエンドVR端末以上の性能を担保した上で、サングラスくらい軽量で小型に」なり得るというパターンを考えました。個人的には、こちらのパターンで将来実現されるコンシューマー向けVR/MR端末の方が長期的にコンシューマー向けVR/MR市場を形成し得ると考えています。

このパターンの技術的なボトルネックは、レンダリング結果の映像をストリーミングで端末側に表示するのに必要なストリーミング技術とネットワークインフラ技術だと考えています。特に、レンダリング結果である映像(動画)データは非常にデータ量が大きく、また、VR/MR端末は少しでも遅延があるとVR酔いという現象を引き起こしてしまうため、「大容量の動画データを低遅延で送受信できるようにするためのストリーミング技術・ネットワークインフラ技術」が必要でした。また、仮にストリーミング技術が向上したり、動画の圧縮形式(h.264等)がさらに圧縮効率の良いものに改良されたり、動画の取得や動画のエンコード・デコード等のSoftware上の遅延を削減したりしたとしても、高解像度の動画データのような大容量データを低遅延で送受信できるようにするためには結局はネットワークインフラ自体の通信速度(bps)と通信遅延が最大のボトルネックになるだろうと考えていました。そんな時に期待されていたのが5Gでした。

GITAI創業期の2016年〜2018年は5Gモバイルネットワークが非常に注目されており、通信キャリア各社も「数十GBのデータを1m secで送受信できる」という性能を謳い文句にしていました。そして、この数十GBのデータを1m secで送受信できるモバイルネットワーク(5G)が短期間で普及することを大前提としたスタートアップも複数立ち上がっていましたが、私が聞いてみた限りでは実際に5Gが必要な性能を満たすのかどうかの技術検証や調査を行っているスタートアップはいませんでした。
そこで、この5Gが①数十GBのデータを1m secで送受信できる性能を持つこと、②数年で日本全国に普及すること、の2点を満たすかどうかを自分たちで検証していきました。
技術検証のためにやった主なことは、大きく分けて①自分たち自身で映像伝送のための通信技術を開発すること、②某通信キャリアの5G担当の研究開発チームに協力して頂き、5Gの実際の性能を調査すること、の2点です。

まず①について、映像伝送のための通信技術を開発するような高度な開発は私ではできないので、2017年2月に通信・映像伝送技術の開発を担当するエンジニアの方(※私がGITAIの前に創業した会社で開発リーダーを担当して下さっていた方)に参画して頂き、自分たちで360度カメラの映像データを低遅延・低容量で送受信するためのSoftware技術(Software遅延の削減、画像差分抽出処理によるデータ容量の削減等)、Wifi/モバイルネットワーク経由で動画データを送受信するためのMiddlewareや通信技術(NAT越えシステム等)を開発していきました。
②については、某通信キャリアの5G研究開発部門の方々に相談した結果、共同研究契約を締結して実際の5Gの基地局を使った共同実証を実施できることになり、5G研究開発部門の方々に色々とヒアリングをさせて頂きながら実際の5Gの基地局と市販の家庭用wifiルーターを接続して映像伝送の通信テストをしたりして5Gの知識を深めていきました。

その結果、通信キャリア各社が謳い文句にしていた数十GBのデータを1m secで送信できるというのはあくまで1基地局と1端末間の物理的理論値であり、実際のモバイルネットワークでは様々なボトルネックがあるため理論値通りの値にはならないであろうこと、5Gの基地局は4Gよりも密集して建設する必要があり、基地局の設置場所確保や工数の問題から2〜3年の短期間で日本全国や世界中で普及する可能性は極めて低いだろうと結論付けました。
そこで、また別の技術や市場に目を向けていきました。

人間の脳機能の拡張であるコンピュータと同様に身体能力の拡張である汎用ロボットも事業になるタイミングか?

次に注目したのは、SFアニメや映画でおなじみの汎用ロボットの技術でした。汎用ロボットの定義も様々ですが、ここでは産業用ロボットのように1つの作業を繰り返す特化型ロボットとは異なり、人間のように複数の異なる作業を自律的に遂行できるロボットのことを指します。個人的にも一番好きなSFアニメや映画は主にロボットをテーマにした作品であり、大好きな技術の1つでした。また、VR/MRはインターフェースの次元が2次元から3次元に変化する可能性に惹かれましたが、汎用ロボットは人間の身体能力を拡張し得る技術である点に惹かれました。
というのも、当時(2016年〜2017年)はDeep learningによるAIブームで、人間の脳機能の拡張(PC、スマホ)の覇者たち(Googl, Microsoft等)が脳機能の代替(AI)を生み出す勝負をしていました。しかし、当時から既に大企業がこぞって参入・投資するレッドオーシャンな技術・市場になっており、スタートアップの勝負としては分が悪いと思っていました。一方、人間のもう1つの能力である身体能力の拡張の方は、特化型ロボットが普及しているとはいえ汎用ロボットは未だ実用化されておらず、また競争も激しい状況ではなく、よりスタートアップとしてチャンスがある技術であるように見えました。
また、特化型ロボット(産業用ロボット)の市場の大きさにも注目しました。というのも、人間の脳の拡張であるコンピュータの技術と市場の発展の歴史や推移を調べると、特化型の技術(人間の脳機能の一部である計算能力に特化した製品、つまり電卓)が先に市場を形成し、その後汎用型(汎用コンピュータ:PCやスマホ)が特化型の市場を飲み込んでさらに大きな市場になる、というパターンがありました。
人間の身体能力の拡張も同じパターンを辿るとすると、現在普及している特化型ロボット(産業用ロボット)は脳機能の拡張ツールにおける電卓と同じであり、汎用ロボットは将来さらに大きな市場を形成し得る、と考えました。

そこでロボットの技術や市場に関する本やメディア記事を色々と読んだのですが、表面的な知識しか得られていないと感じました。そこで、まずは自分でプロトタイプを作ってみようと考えました。
しかし、ロボットの技術どころかHardwareは全く作ったことが無かったので、まずはUnityからArduinoをシリアル通信してLチカするところから始めました。

Lチカが出来たら次にサーボモータを制御していき、少しずつロボットぽくなっていきました。またLeap Motionで検出できる手や腕をロボットと同期させていきました。

4号機からはローカル環境での無線化に挑戦していきました。

4号機までは1人で開発していましたが、wifi経由でロボットを操作するための通信の部分は私では開発できなかったため、2017年2月に通信・映像伝送技術の開発を担当するエンジニアの方(※私がGITAIの前に創業した会社で開発リーダーを担当して下さっていた方)にGITAIに入って頂き、wifi経由で遠隔操作するための通信技術と映像伝送のデータ量と遅延を削減するSoftware技術の開発に着手して頂きました。

また、上記の人型遠隔操作ロボットの開発と並行して、個人的に自律制御についても理解を深めたかったため、自律制御の基礎的な開発にも挑戦してみました。
最初は倒立振子から挑戦しました。

また、簡単な自動仕分けロボットも作ってみました。

汎用ロボットは人間という労働力を代替し得るか?

最低限やりたいことを伝えられるプロトタイプの開発と並行して、汎用ロボットが解決策/事業となり得る市場の調査・選択も進めていきました。
宇宙市場も最初から候補にありましたが、最初はオンライン会議、災害救助、遠隔医療、発電プラント点検等地上で需要がありそうな市場から調査・ヒアリングをしていきました。本当に様々な市場の方々にアポを取ってヒアリングをしたり、実際に現場に見学させて頂きました。福島原発のデブリ除去にロボット技術が使えないかと、経済産業省の方々のおかげで、防護服を来て核燃料棒があった発電所の真下まで見学させて頂いたりしました。市場調査の過程でも本当に多くの方々に快く協力して頂きました。本当に感謝しています。

様々な市場で汎用ロボットが解決策となり得る具体的な課題の調査を行っていきましたが、地上のほとんどの市場で共通していたのは「人間という労働力のコスト(人件費)を削減する解決策」としての汎用ロボットを求めている、という点でした。つまり、人間の労働者よりも性能が高く、コストが安い労働力としての汎用ロボットを求めていました。
当時はBoston Dynamicsのバク転するhumanoid robotの動画が大きな話題となっており、またDeep learning等に代表されるAIへの期待値も相まって、「人間の労働者のような性能を持つ汎用ロボットはあと数年で実現できるし、コストも量産化をすれば人間の労働者よりも安くできる」と考えている方が市場側にも、そしてスタートアップや投資家側にも大勢いたように思います。
しかし、汎用ロボットの技術に詳しくなっていくにつれて、この市場からの汎用ロボットに対する期待値と実際の汎用ロボット技術の性能やコストに絶望的なほどの差があると感じるようになっていきました。
Boston Dynamicsのバク転するhumanoid robotの動画は確かに素晴らしいものです。しかし、Laboratoryのような実験環境で数回〜数十回試みて1回成功したことがそのまますぐに製品としての性能となるわけではありません。研究開発として出来たことと、量産化した製品の性能として出来ることとの間には本当に途方も無いほどの「開発と製造」の壁があり、多くの場合その難易度は非常に過小評価されているように思います。
Deep learningに代表されるようなAIもテキストや画像、動画等の2次元の情報処理においては大きな性能向上をもたらしたが、3次元の実際の物理空間はあまりにも変数が多く、特に物理的接触を伴うような「作業」の難易度は依然として非常に高く、そこまで大きな性能向上をもたらしてはいませんでした。
また、地上のほとんどの市場で「人間の労働者よりも性能が高く、コストが安い労働力としての汎用ロボット」に最も期待されていたのは「作業」でしたが、実際は数億円かけて開発した汎用ロボットでも人間のように複数の異なる作業を自律的に遂行することは以前として極めて困難で、少なくとも人間の労働者の性能には全く到達していないというのが現状でした。
また、仮に人間の労働者と同じ性能の汎用ロボットが実現できたと仮定しても、「人間の労働者よりも汎用ロボットのコストを安くする」ためには、①量産化して1体あたりのコストを安くする、②製品として何年も安定稼働できるようにする、③完全自律又は半自律で人間の介在を最小限にする(汎用ロボットに必要な人件費を最小限にする)、の3点を満たす必要がありますが、Hardwareの量産化は非常に難易度が高く多額のお金がかかる上に、1台あたり製造コストを下げた量産機の作業性能は数億円かけた1点物のプロトタイプの作業性能と比較してほぼ確実に作業性能が大幅に下がります。
そもそもハードウェアの量産化も含めた「開発と製造」の難易度は、一部のスタートアップや投資家にとってあまりにも過小評価されていると感じます。また、スタートアップが保有すると主張する研究や技術の相対的優位性は、開発・製造上のボトルネックを解決することはほとんどありません。

以上のことから、「人間という労働力のコスト(人件費)を削減する解決策」としての汎用ロボットはまだ技術的ボトルネックが多く残っており、地上の多くの市場で期待されているような人間を代替する解決策には少なくとも数年ではならない可能性が高い、と結論付けました。

汎用ロボットは宇宙・防衛という政府向けの高単価1点物から事業になるか?

数多くあった候補市場の中で、一番最後に宇宙市場を見ていきました。宇宙市場が一番最後になったのは、個人的にあまりにも遠い存在の市場のように感じられて、現実的にスタートアップが参入できるイメージが全く無かったからです。
それまで個人の興味や趣味の対象でしかなかった宇宙市場にスタートアップとして参入するというのは非常に反直感的に感じられましたが、あくまで理屈の上では元々宇宙・防衛宇宙市場は以下の4つの観点で最有力の候補の市場として考えていました。

①身体能力の拡張ツールである汎用ロボットも脳機能の拡張ツールであるコンピュータと同じく、最初は宇宙・防衛宇宙という政府向けの高単価1点物から事業になる可能性がある。

脳機能の拡張ツールであるコンピュータの事業化の歴史を調べた際、コンピュータも初期は性能が非常に限定的でコストは非常に高い高単価1点物の製品であったため、軍事・宇宙という政府向けの高単価1点物事業から始まり、徐々に性能が向上し価格が下がっていくにつれて企業向けの製品になり、最後にパーソナルコンピュータやスマートフォンという一般消費者向け大量生産製品になっていったという経緯がありました。
そのため、身体能力の拡張ツールである汎用ロボットも脳機能の拡張ツールであるコンピュータと同じパターンを辿るのではと考えました。つまり、「汎用ロボットも最初は宇宙・防衛宇宙という政府向けの高単価1点物から事業になるのではないか」という仮説です。

次に、政府向けの高単価1点物で事業化しているスタートアップの成功例について調べていきました。最も注目したのは米国のPalantir社です。
米国Palantir社は政府向けにデータ分析・セキュリティサービスを提供するスタートアップで、1つの自社製品Softwareを売るようなビジネスモデルではなく、実態は超高単価1点物のSlerに近い政府向けビジネスです。2018年の売上(US$595.4M)のうち、政府機関の顧客(米軍、国防総省、FBI、CIA等)からの売上が約半分を占めています。また、上位20社の顧客の売上が72.9%を占めています。
特に注目すべきは、Palantirの上位20社の顧客の平均顧客単価が2010年から2018年の8年間で約18倍(US$1.2M⇒US$21.7M)になっており、顧客数量そのものではなく顧客単価を増やすことで売上を伸ばしている点です。
どのような市場・ビジネスモデルのスタートアップでも単価×数量=売上という式は変わりません。そして、ほとんどの当時のロボットスタートアップも多くの人間の労働者を代替することで「数量」を増やし、その結果売上を増やそうとしていました。しかし、上述したように汎用ロボットという技術はまだ未成熟な技術であり、人間の労働者を代替するほどの性能を実現した上で1台あたりの単価を下げ、品質と信頼性を担保した上で量産化して数を出していくことは技術的にあまりにも非現実的だと考えていました。少なくともスタートアップはブレイクスルーが必要な難易度の挑戦をするとしても1つまでが限度であると考えています。
その点、Palantirは政府向け事業であり想定顧客数が限られているため、顧客の「数量」を大幅に増やすのではなく、顧客の「単価」を大幅に増やしていくビジネスモデルでした。
この点は少なくとも汎用ロボットを事業化するという点で技術的には非常にメリットがあります。つまり、「人間を代替するほどの性能を実現した上で1台あたりの単価を下げ、品質と信頼性を担保した上で量産化して数を出していく」という極めて難易度が高い技術的挑戦をしなくても良い市場・ビジネスモデルでした。

②世界が不安定化・二極対立構造に向かい、宇宙・防衛宇宙市場が伸びる可能性がある

当時(2016〜2017年)の世界情勢は、米国は世界の警察という役割から撤退しつつあり、中東は不安定化し、中国が急激に台頭するなど、それまでの米国一強時代から徐々に世界の不安定化・米国と中国の二極対立構造に向かいつつあるような時代でした。
そのため、今後米国と中国の二極対立構造がさらに加速すると、強大で野心的なライバルの出現により過去の冷戦時代のように防衛宇宙予算が増額され、市場が伸びていく可能性が高いと考えました。

③500万年かけて水平方向に拡大してきた人類は、これから数十年で垂直方向に拡大する種になる可能性がある

他の生物と同じく、人類は未知の場所に行って繁殖するという本能が遺伝子に刻まれています。アフリカ大陸で発祥し、500万年かけて水平方向に拡大してきた人類は、いよいよ垂直方向に拡大していく種になるかどうかの重要な歴史の転換点にいるのではないかと考えています。つまり、近年世界最高の起業家や大富豪たちが同時多発的にこぞって宇宙を目指しているのは好奇心や本能等の根源的な欲求に突き動かされているからであり、単なる一過性のブームではなく人類史における不可逆な流れなのではと考えました。

④SpaceXの輸送革命により、宇宙業界のボトルネックが輸送コストから作業コストに遷移する可能性がある

人類が垂直方向に進出していく上で最初のボトルネックであった「宇宙への輸送コスト」については当時既にSpaceXが宇宙への1kgあたり輸送コストを10年前の数十分の1にまで下げており、輸送革命を起こしつつありました。そして、宇宙業界の最大のボトルネックであった「宇宙への輸送コスト」が劇的に下がって物や人を宇宙に輸送できるようになると、次に「宇宙での作業コスト」がボトルネックとなり、需要が顕在化していくのではないかと考えました。

上記の4点から理屈では可能性を感じていたものの、宇宙業界の知り合いは1人もおらず、どのように市場調査やヒアリングを行っていけば良いか全く分かりませんでした。そんな時、たまたまSingularity Universityというプログラムの募集を見つけました。Singularity Universityとは、世界各国から数十名の参加者を選抜し、世界10億人の課題を指数関数的に性能が向上する技術を使って解決することを目指すプログラムで、Googleがスポンサーとなり、NASAのArms Research Centerで運営されていました。
NASAのArms Research Centerで開催されること、また当時募集していたGlobal Solutions ProgramはGoogleが参加者の全ての費用を負担してくれるので、6月〜8月までの約2ヶ月間のプログラム参加費・宿泊費・食費等も含め全て無料で参加できるとのことでした。
私はこのプログラムに応募して面談や数百人の前での最終選考プレゼン等を経て、運良く参加者に選ばれることができました。
Singularity Universityに参加してNASAのArms Research Centerに滞在していた2017年の6月〜8月の間に、プログラム外の時間等を使って米国の宇宙業界関係者の方々へのヒアリング等を行っていきました。
初めて宇宙業界の方々と話してヒアリングや議論をすることができたおかげでより市場に対する理解が深まり、上記の4点の仮説に対しても少しずつ確信を得ていきました。少なくとも「数年以内に宇宙業界で作業手段のニーズが顕在化する可能性が高く、それは人類が垂直方向に拡大していく上で大きな課題となるだろう」と考えました。

そこで、既存の宇宙での作業手段を調べてみたところ、主に以下の2つの方法があることがわかりました。

①人間の宇宙飛行士

宇宙で作業を行う方法の1つが、人間の宇宙飛行士が行うというものです。上述した通り、人間は地上のほとんどの業界で汎用的な作業を行う上で主要な労働力となっています。しかし、宇宙空間は真空で温度変化が激しく、また放射線量も地上と比較して数百倍強いことから安全性の課題が多く、人間を安全なまま宇宙に輸送するコストは同じ重量の物を宇宙に輸送するコストと比較して約数百倍高いコストがかかります。例えば、NASAの宇宙飛行士のコストは1時間あたりUS$130K(※日本円で約2千万円)かかっています。また、宇宙放射線等の影響で(※月面地下基地等の宇宙放射線の大部分を遮断できる環境を構築できない限り)宇宙での滞在可能合計期間も数年に限定されてしまいます。
人間の宇宙飛行士という労働力も商業宇宙飛行士によって将来増えていく可能性はあると思いますが、安全性の課題や制約等から大幅な作業コスト削減は期待できず、また危険性を伴う作業を担っていく可能性は低いと考えました。

②宇宙業界のロボット

宇宙で作業を行う方法の2つ目が、宇宙業界に存在するロボットを使って作業を行うというものです。宇宙業界でも国際宇宙ステーション(ISS)のきぼうアームやカナダアーム、火星ローバーに付いているロボットアーム等のロボットが昔から開発され様々なMissionで作業を行い活躍していました。
しかし、宇宙業界のロボットは地上の汎用ロボット等と比較すると特に自律制御での作業性能は(宇宙船外環境で安全性や信頼性を担保する必要がある等の制約により)限定的で、何よりも圧倒的にコストが高くリードタイムが長いことがわかりました。例えば今も国際宇宙ステーションに設置されて稼働しているカナダアームは1本で約US$1.2B(※日本円で約1800億円)のコストがかかっていました。

そこで、宇宙業界のロボットや宇宙機はなぜコストが高くてリードタイムが長いのか調べたところ、宇宙業界は各種宇宙部品サプライヤーからあらゆるコンポーネントや部品を調達する前提でのウォーターフォール開発が主流であることが大きく影響していることがわかりました。
これまでの宇宙業界は実際に宇宙に打ち上げられる機会が極端に少なく、また国民の税金で運営される宇宙機関が主導するMissionがほとんどだったため失敗するリスクが取りづらく、時間やお金がたくさんかかっても「失敗しないこと」を優先した開発手法であるウォーターフォール開発が主流となっていました。そして、各宇宙コンポーネント(部品)のサプライヤーの立場からすると、宇宙機は基本的に1点物でありそのコンポーネントもたまにしか売れないので、各宇宙コンポーネントのサプライヤーも部品の利幅を大きく載せなくてはならず、また受注生産方式になるためリードタイムも長くかかってしまいます。また、宇宙機関のMissionで使用される宇宙機は安全性を担保するための安全審査という重要なプロセスがあり、原材料レベルでの安全性の証明や必要に応じて仕様変更等が発生しますが、その度に各宇宙コンポーネントのサプライヤーにも対応してもらう必要があります。そのような状況が何百点というコンポーネントで積み重なっていました。また、ウォーターフォール開発は開発の要件定義、工程管理や進捗管理それ自体にとてつもない工数がかかり、1機の宇宙機の開発Projectを数千人が担当しているような状況でした。その結果、1機の宇宙機の開発費が数百億円〜数千億円、そしてリードタイムも10年〜20年はかかっている状況でした。宇宙業界のスタートアップは宇宙機のコンポーネントになるべく地上の民生品を使用することで製造コストを削減しようとしており、またなるべく少人数で開発しようとしていましたが、結局は主要なコンポーネントは各宇宙コンポーネントのサプライヤーから調達していること、またウォーターフォール開発で宇宙機を開発していることから、大幅なコストやリードタイムの削減は困難であるように思えました。

以上の2点の調査から、宇宙業界にも既存の作業手段があることが分かったものの、どちらコストやリードタイム、安全性等の課題があり、宇宙で作業手段の需要が顕在化したとしても解決策としての主要な作業手段になるとは思えませんでした。
この時点でざっくりと、「地上の汎用ロボットの技術やアジャイル開発の手法を宇宙業界に持ち込み、既存の宇宙業界のロボットよりもはるかに汎用性が高く安価で安全な宇宙ロボットを作る挑戦をしよう」と考えていました。

スタートアップであるGITAIはどうやって宇宙用の汎用ロボットを開発していくか?

上記の経緯で、スタートアップの成功に最も大きな影響を与える「市場(where)と製品/技術(what)と参入タイミング(when)」についてはある程度決まりました。
そこで、次にGITAIはどのように宇宙市場向けの汎用ロボットを開発していくべきか、どのようなステップで開発や事業化を進めるべきかのhowの部分をざっくりと考えていきました。特に長期的で重要な方針として以下の4点を考えました。

①内製化による垂直統合とアジャイル開発を行い、コストとリードタイムを下げ、性能を向上させる

上述の通り、宇宙業界のほとんどの企業が各種サプライヤーからコンポーネントを調達してウォーターフォール開発で宇宙機を開発していました。
しかし、当時既にロケットで世界一の性能と低価格を実現していたSpaceXはあらゆるコンポーネントを内製化して極力サプライヤーを通さないことで中間コストとリードタイムを大幅に圧縮し、全コンポーネントを内製化したことで可能になるアジャイル開発(※作っては実験して壊しの試行錯誤を高速で繰り返すことで短期間で性能を向上させる開発手法)の手法で性能を急激に向上させていました。
そこで、GITAIも汎用宇宙ロボットに必要なコンポーネントを全て内製化し、アジャイル的に開発を進めていくことで長期的にコストとリードタイムを下げ、性能を向上させていこうと決めました。

②まずは遠隔操作ロボットの開発から初めてハードウェアのレベルを高め、その後に自律制御Softwareを開発して自律ロボットにしていく

スタートアップという起業手法は約1年半毎に進捗を出して資金調達を行って成長していきますが、汎用宇宙ロボットの内製開発は非常に時間がかかる可能性が高いため、どのように途中経過の進捗を出していくかが大きな問題になるだろうと考えました。
宇宙空間のように過酷でネットワークインフラも無い環境で汎用的な作業を行うことが可能なロボットを開発するためには、ロボットの作業性能に加え、宇宙機としての宇宙船外対策、製品としての安全性、信頼性も実現する必要があります。そのようなロボットを内製するためにはメカ、電気基盤、Software(自律制御Softwareも含む)も全て内製開発する必要があり、1年半では不可能だと考えました。
また、自律制御Softwareの性能はhardwareの性能の上限がボトルネックとなってしまうため、ハードウェアの開発と自律制御Softwareの開発を同時並行で行ってしまうと限られた時間では(特に作業性能において)競争優位性のあるロボットを開発することができず、スタートアップとして途中経過の進捗を出せない(=資金調達が出来ない)リスクがあると考えました。
そこで、まずは自律制御Softwareの開発等は一旦捨て、遠隔操作の汎用ロボットの開発に振り切ることで技術的競争優位性を構築し、事業開発や資金調達用のデモをできるようにしつつ、裏で各種コンポーネントの内製開発を進めることにしました。そして、ある程度内製開発したハードウェアの性能が向上した段階で自律制御Softwareの開発を始め、後から自律化していくというステップを経ることにしました。

③宇宙ロボット自体を販売するのではなく、宇宙ロボットによる作業代行サービス(RaaS)を目指す

米国の宇宙業界では、NASAが民間企業から何かを調達する際、それまでの部品調達と呼ばれる調達方式(※例:ロケットそれ自体を購入する契約)から、サービス調達と呼ばれる調達方式(※例:ロケットそのものではなく、ロケットによる打ち上げサービスを購入する契約)に切り替わりつつありました。このサービス調達は、NASA側は価格を固定して支払いもマイルストーン達成毎にすることでリスクを最小化でき、民間企業側もコストを下げるほど利幅が増えるというメリットがありました。SpaceXもこのサービス調達の契約(※ISSへの物資輸送サービス)によって内製化によるコストメリットを最大限に活かし、躍進してきた経緯があります。
GITAIも長期的にはロボットそれ自体を販売するのではなく、ロボットによる作業代行サービス(Robotics as a Service)を宇宙に提供していこうと決めました。ただし、宇宙用の汎用ロボットを内製開発するのは非常に時間がかかってしまうため、内製化の進捗度に応じてざっくり以下の3ステップでビジネスモデルを変えていくことで、長期的に内製開発しながら売上を上げていくことにしました。
①コンポーネントを内製開発したフェーズ:宇宙用ロボットの受託開発
②ロボットアームを内製開発したフェーズ:サブコントラクターとしてロボットアームを販売
③移動機構も含めて宇宙用汎用ロボット全体を内製開発したフェーズ:プライムコントラクターとしてロボットによる作業代行サービス(Robotics as a Service)を提供

④アジャイル開発によって生まれるアウトプットを事業開発・資金調達に最大限活かす

宇宙業界はウォーターフォール開発が主流であったため、実際の製品やデモンストレーションを見せることが難しく、宇宙業界の事業開発や資金調達は主にCG(コンピューターグラフィックス)の映像やPowerpointの資料を使って行われていました。宇宙業界では(未だに)当然の光景だと思いますが、他業界から参入しようとしている自分には、数百億〜数千億円の宇宙機についての商談が実際の製品ではなくCGの映像やPowerpointの資料で行われていることは非常に特殊な光景に見えました。宇宙業界のような特殊な業界であっても、他業界と同じく潜在顧客や潜在投資家は実際の製品やデモンストレーション(たとえそれが製品のプロトタイプや地上実証だったとしても)が見たいのではないかと考えました。
そこで、GITAIではCGやPowerpointの資料を作ることにリソースを使うのではなく、アジャイル開発から生まれるロボットのプロトタイプを使って対面でのロボットのデモンストレーションや実験動画を見せ続けることで事業開発や資金調達を行っていくことに決めました。
この実際のプロトタイプ/製品やデモンストレーションを中心とした事業開発・資金調達は、特にGITAIの内製化によるアジャイル開発と非常に相性が良く、またCGやPowerpointの資料ばかりの宇宙・防衛宇宙業界の中においてGITAIを際立たせる大きな要因になりました。

上述した技術・市場検証の途中で既に法人を設立し、Skyland Venturesから資金調達をしてはいましたが、さらに億単位の資金調達を行い、エンジニアの採用資金と汎用ロボットの開発資金を獲得しようと思いました。そして、ANRIをリード投資家として約1億4千万円の資金調達を行いました。

GITAIのエンジニアチーム結成

投資家から出資頂いたおかげで予算が出来たので、本格的に宇宙用の汎用ロボットを開発していくチームを作ることにしました。
私は2016年7月に1人でGITAIを創業し、2017年2月に通信・映像伝送技術の開発を担当するエンジニアの方(※私がGITAIの前に創業した会社で開発リーダーを担当して下さっていた方)にGITAIに参画して頂いていたものの、それ以降2018年4月までGITAIはずっと私とそのエンジニアの方の2人だけで、一切採用活動を行いませんでした。
まずはFounderである自分が市場(where)と製品/技術(what)と参入タイミング(when)、そして特に開発方針(how)を決めた後でないと採用やチーム作りをすべきではない、と決めていました。

というのも、特定のスタートアップによってどのような人が「優秀な人」なのかはスタートアップのビジネスモデルや事業・開発方針によって大きく異なると考えています。例えば、採用活動において高い学歴や大企業での職歴は非常に魅力的に見えますが、大企業で長年ウォーターフォール開発のサプライチェーンマネジメントや品質管理を手掛けてきた方が、内製化・アジャイル開発を目指すスタートアップに転職してもそれまでの経験やスキルを発揮できず、ミスマッチになる可能性が高いと考えています。もちろん個々の人によって異なる話ではありますが、まずGITAIにとっての「優秀な人」の定義を明確にしない限り採用活動やチーム作りはしないと決めていました。

そして、前述の通り「市場(where)と製品/技術(what)と参入タイミング(when)」の組み合わせとGITAIのざっくりした事業・開発方針が決まったので、まずは宇宙業界向け汎用ロボットを内製化・アジャイル開発するためのエンジニアチーム創りを開始しました。
ターゲットは「宇宙ではなく地上の業界で汎用ロボット(特にHumanoid robot)を内製・アジャイル開発している研究者・技術者」でした。
本格的に採用活動を初めてから本当に素晴らしい研究者・エンジニアの方々との出会いがありましたが、特にその後のGITAIに最も大きな影響を与えたのが上月さん(現GITAI CTO)との出会いです。

採用活動のために色々なロボットを調べていると、なんか汗かいて腕立てしているすごいHumanoid robotがいる…!と見つけたのが東京大学のJSK(情報システム工学研究室)のKengoroというロボットでした。調べてみると、この東京大学のJSK(情報システム工学研究室)はGoogleにExitした二足歩行ロボットのSchaftや工場の無人化を目指すMujin等を排出した世界的に有名な研究室であり、もの凄いスピードでロボットを作りまくっている研究室でした。
早速このロボットを基に書かれた論文のLead Authorだった上月豊隆博士に連絡し、当時渋谷に借りていた小さなワンルームのオフィスに遊びに来てもらいました。その後3日くらい深夜までロボットのデモを見せたり上記の内容を伝えて熱く議論した結果、GITAIに参画してくれることになりました。上月さんが参画してくれたおかげで、その後技術開発は上月さんが統括し、その他は全部私が統括するという体制でGITAIが成長していきます。
また、上月さんの同じ研究室出身の先輩で、Schaft(Google)でSoftware Engineerをしていた植田亮平博士(現GITAI VP of Software)も何度もオフィスに来て頂き、熱く議論した結果、GITAIに参画してくれることになりました。
さらに、たまたまこのタイミングでGoogleのCFOが交代した影響でGoogleのほとんど全てのロボット部門が閉鎖になることが決まり、GoogleにExitした後米国Googleのロボット部門の1つとして二足歩行ロボットを開発していたSchaftも解散になるらしいと聞きました。
これはすごいチャンスが来たと思い、すぐにSchaftのFounder&CEOだった中西雄飛博士(現GITAI Chief Robotics Officer)に連絡を取り、オフィスに遊びに来てもらって何度も深夜まで熱く議論した結果、中西さんもGITAIに参画してくれることになりました。
その後も続々と東京大学のJSK(情報システム工学研究室)出身の方々がGITAIに参画してくれるようになり、現在までGITAIの宇宙用汎用ロボットの内製化・アジャイル開発の中核を担ってくれています。彼らはGITAIに参画してからもう5〜6年になりますが、未だに誰一人辞めずにGITAIの技術開発の中核を担い続けてくれています。

Schaft(Google)や東京大学のJSK(情報システム工学研究室)のような世界最高・最先端の環境で汎用ロボットを研究・開発していた方々がGITAIに参画してくれた理由は様々だと思いますが、特に全員に共通していたのは「複雑性を排除した、極端に単純化された因果関係・ストーリー」ではなく、「実際の技術や市場の洞察」を前提に立てたGITAIの開発・事業計画が彼らにとって納得感があった、という点でした。

人間を代替し得るコンシューマー向け汎用ロボットは10年に一度くらいの頻度でブームになり、スタートアップへの投資が集まりメディアでも注目が集まります。そのような挑戦や投資自体は非常に素晴らしいことだと思っています。また、最終的に人間を代替し得る汎用ロボットは必ず実現されるでしょう。しかし、それが今このタイミングで実現され得るくらい技術的・事業的ボトルネックが解消されつつある前提でのブームなのか、まだ多くのブレイクスルーが必要な技術的・事業的ボトルネックが残っていることがほとんどの人に認識されていない上でのブームなのかを冷静に見極める必要があると思っています。

GITAIの創業期も米国や日本でコンシューマー向け汎用ロボットがブームになっており、多くのスタートアップが立ち上がり投資家からの投資やメディアの注目を集めていました。そのような状況の中、数量ではなく単価、地上ではなく宇宙、コンシューマー向けではなく政府向けに集中するという真逆の勝負をしていたGITAIは当時ほとんどの投資家から相手にされませんでした。(※そのような状況でもGITAIを信じて投資してくれた投資家たちがいて、今のGITAIがあります。)

しかし、Schaft(Google)や東京大学のJSK(情報システム工学研究室)のような世界最高・最先端の環境でロボットを研究・開発していた方々には、「人間を代替するほどの性能を実現した上で1台あたりの単価を下げ、品質と信頼性を担保した上で量産化して数を出していく」という極めて難易度が高い技術的挑戦を避け、宇宙・防衛宇宙という政府向けの高単価1点物事業で汎用ロボットをビジネスにする、という点に強く共感してもらうことが出来ました。

また、なぜ彼らがGITAIに入ったのかについては私が語るよりも、元SchaftのFounder&CEOで現GITAIのChief Robotics Officerの中西さんが2021年のWorld Robot Summitの基調講演でなぜGITAIに入ったかについて語っている動画があるのでぜひそちらをご覧下さい。1時間くらいありますが、めちゃくちゃ面白いので全部観て頂くことをおすすめします。(※私は中西さんの講演内容の編集に一切関与していません)

※中西さんのWorld Robot Summit 2021の基調講演動画

GITAIのエンジニアチームができたことで本格的に宇宙用の汎用ロボット開発と必要な全てのコンポーネントの内製化の挑戦が始まり、2021年に国際宇宙ステーション船内での実証実験成功、そして2024年3月の国際宇宙ステーション船外での実証実験成功へと繋がっていきます。GITAIがコンポーネントを全て内製開発してコストとリードタイムを大幅に削減し、アジャイル開発によって性能を高めた宇宙ロボットが、実際に宇宙空間での作業に全て成功しました。
また、事業開発もJAXAとの共同研究契約から始まり、TOYOTA等の各日系民間宇宙企業からの受注、各米国民間宇宙企業からの受注、そしてDARPAからの受注へと繋がっていきます。

非常に長くなってしまいましたが、以上がGITAIの創業ストーリーになります。
ただし1点補足させて頂くと、実際の創業期は複数の仮説検証を同時並行で行っていたもっとカオスなもので、Aが終わったから次はB、というようにステップとして綺麗に区切れるようなものではありませんでした。そのため、時系列が前後する箇所があったり、上記には記載しきれなかったさらに多くの様々な仮説検証が存在します。
様々な方々の協力のもと、様々な紆余曲折や仮説検証を経て、宇宙ロボットスタートアップGITAIの誕生へと繋がっていきました。

GITAIの経営について

また、現在どのような意思決定基準でGITAIを経営しているのかについても少しだけ記載させて下さい。

創業期編でも書きましたが、GITAIの経営において何よりも重視している意思決定基準は「スタートアップはべき乗則に従う」ということです。これは、ごく少数の変数が物事の結果の大部分の影響を与えるということですが、スタートアップ経営の意思決定基準に当てはめると、より大きな結果を出す投資対効果を最大化させるために、最も重要な少数のことを見極め、その少数のことにリソースの大部分を集中させ続ける、ということを意味します。

例えば宇宙・防衛宇宙市場の中でも、世界情勢の不安定化に伴い特に宇宙ロボットの市場が伸びることが予想される防衛宇宙領域である軌道上サービス市場と月面インフラ構築市場の2つを最重要市場と位置付け、それぞれの市場で宇宙ロボット/作業のニーズが顕在化する約2〜3年前から技術開発のリソースを集中させてきました。さらに、この2つの宇宙領域ではどこかの企業のサプライヤーではなく、NASAや宇宙軍等にサービス調達契約で作業代行サービスを直接提供するプライムコントラクターになるため、宇宙機全体の開発を進めてきました。月面インフラ構築市場向けには、月面での作業を担うロボットアームだけでなく、月面での移動を担う月面ローバーの内製開発も2021年から進めてきました。軌道上サービス市場向けには、宇宙空間での作業を担うロボットアームだけでなく宇宙空間での移動を担う人工衛星の内製開発を2023年から進めてきました。
2023年末に受注したDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)からの案件はGITAIの月面ローバーとロボットアームを使って月面にインフラを構築する内容Missionですが、GITAIが2021年から内製開発してきた月面用のローバーやロボットアームによる労働力の提供と、世界の不安定化・競争関係に伴うDARPAからの需要のタイミングが一致した結果です

また、上記と並行して米国へのリソースの集中も進めてきました。というのも、元々長期的に宇宙での作業コストを100分の1にするためには世界の宇宙・防衛市場の中でも圧倒的に大きな市場である米国の市場でシェア1位を取ることが重要なステップだと考えていました。しかし、これまでDeepTechに限らず多くの日本のスタートアップが米国市場へ挑戦してきましたが、少なくとも自分が調べた限りでは、米国に子会社を作る等の手段でリソースの一部を米国に投資しても上手くいった例はほとんど無いように思いました。この原因はそもそも日本では米国のスタートアップのタイムマシン経営が多い等の理由も大きく影響しているかもしれませんが、経営陣の米国市場への本気度やコミットメントの問題も非常に大きく影響しているように思いました。
また、更に米国の宇宙・防衛宇宙業界は海外への輸出規制等の法規制も非常に厳しく、特にNASAや宇宙軍等の米国政府系組織と直接取引をするには、本社や開発拠点・サプライヤーの所在国、企業のオーナーシップなどの様々な要件を満たす必要があり、非米国企業の子会社や非米国人の経営陣が米国の宇宙・防衛宇宙市場に参入しても(大企業の米国子会社でも無い限り)大きな案件にはほとんど関与できない状況でした。
そこで、リソースを中途半端に米国と日本で分けるのではなく、主要な全てのリソースを最も重要な市場である米国に集中させ、米国市場で勝つ可能性を高めることに集中することを選択しました。
その結果、2023年末時点には本社と技術開発や事業開発等のほぼ全ての機能を東京から米国のロサンゼルスに移しました。また、2024年4月時点には元々日本にいた全経営陣も含む全ての米国移転対象のメンバー(合計25名)もGITAIと移民弁護士のサポートで全員米国のWorking VISAを取得して米国に移住し、米国への転籍が完了しました。更に、自分自身を含むGITAIのCxO全員が米国永住権を取得し、米国連邦法におけるUS Personになりました。

また、GITAIは約1年半前から日本での広報活動や採用活動も全て停止し、米国での事業活動や採用・広報活動に徹底的に集中してきました。少し余談ですが、たまに投資家の方からDeepTechスタートアップは技術さえ優れていれば海外でも勝手に売れるんだろう、と言われることがあります。しかし、少なくとも自分はそのようなDeepTechスタートアップに会ったことはありません。また、GITAIのロボットも(残念ながら)勝手に売れたことは一度もありません。技術が良ければ売れる、というのも複雑性を排除した、極端に単純化された因果関係・ストーリーの代表例だと思っています。
GITAIのようなDeepTechスタートアップにとっての優秀な人を採用して長期間働き続けてもらうことも、優位性がある技術を開発していくことも、全コンポーネントを内製開発して性能・品質・安全性・信頼性を満たす製品を開発することも、複雑な宇宙・防衛市場を先読みして意思決定していくことも、米国の宇宙・防衛市場の様々な要件を満たしていくことも、政府機関や民間宇宙企業へロビイング・トップセールスを行いMissionを受注することも、全て同じくらい重要で同じくらい難しいものです。

GITAIの事業開発や採用活動で共通しているのは、個々のオペレーションレベルの営業活動や採用活動そのものよりも、まず自社のターゲット層を徹底的に明確にし、そのターゲット層にとって最も魅力的な環境を市場の中に構築し、それを周知させることの重要性だと考えています。
長くなってしまうので詳細は省きますが、GITAIは特にこの1年半は米国の宇宙・防衛宇宙市場でそのような環境を構築することに集中してきました。その結果、米国の宇宙・防衛宇宙市場でのGITAIの存在感は急激に増していっています。
採用活動の例を挙げると、現在GITAI USAはAgent等を経由しないDirect Application(GITAIのHPやLinkedin経由での直接の求人の応募)で1週間に1000通以上の求人への応募があります。今年の2月半ば以降は一度も週1000通を下回っておらず、最近週2000通を突破する等どんどん伸び続けています。現在のGITAIは日本から転籍してきたメンバーと、米国で現地雇用したメンバーの混成チームになっています。
また、宇宙・防衛宇宙市場の事業開発は経営陣によるロビイングやトップセールスが非常に重要な業界ですが、現在GITAIはNASAや米国宇宙軍・空軍の高官たち、米国民間宇宙企業のCxOや重役たちと毎日のように商談を行うようなネットワークを構築できています。

最後に

SF系の小説やアニメが好きだったこと、技術が好きだったこと、一生に一度しか無い人生で何か人類に大きく貢献できるようなことがしたいと思ったことから紆余曲折ありGITAIを創業しました。
しかし、その道のりは本当に想像を絶するほど大変で辛いものでした。本当に何度も倒産するかもしれないという修羅場がありました。大変なこと、理不尽なことは今も毎日のようにあります。
しかし、大変なことや理不尽なことに疲弊して帰ろうとした夜中のオフィスで、創業期に夢見た宇宙ロボットが実際に動いている姿や頑張って開発している技術者たちの姿、楽しそうに実験している技術者たちの姿に何度も救われてきました。
また、創業期に夢見ていた組織から実際にMissionを受注したり、共同で宇宙実証をしたり、商談をしたりする度に毎日ワクワクしています。

GITAIはまだまだ挑戦中のスタートアップで、米国宇宙企業としてはスタート地点に立ったぐらいの状況です。まだまだ越えなければいけないハードルがたくさんあり、毎日もがきながら四苦八苦しています。
しかし、本当に多くの方々のおかげで日本発の米国宇宙スタートアップとして今米国で挑戦ができています。
私自身も大変なことがありながらも毎日ワクワクしています。また、未だにワクワクするような夢を見ています。
我々GITAIは引き続き夢を実現させていきます。これからも大きな夢に挑戦させて下さい。引き続きGITAIを宜しくお願いします!

GITAI Founder&CEO 中ノ瀬翔
GITAI公式HP


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