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調査書一部未記載でもお咎めなしの佐世保市と福岡県の願書提出ミスの違いとは?

願書提出ミス問題

先日から九州だけでなく全国の教育、受験産業関係者の間で話題になっているのが、博多女子中学校の願書提出ミス問題です。

私もその件に関して一度記事化していますので参考までに。

この問題に関して簡単に説明すると以下のようなものです。

  • 高校受験を希望する私立中学校の生徒が願書を在籍中学校に提出した

  • 在籍中学校の職員が提出期限を誤認識していたため出願期限を過ぎた

  • 特例扱いを高校側は拒み生徒は受験が出来なかった

という流れです。そして今回、似たような事件が同じ九州内で発生しました。

佐世保の調査書記入漏れ

長崎県の佐世保市において、公立高校へ提出する「調査書」に関してある市立中学校のものが全て誤記載であった、というものです。

ところがこの件に関して、高校側は調査書の訂正を受け入れ、合格者を追加で出すという対応を行い、福岡の件とは異なる結果となった、というものです。

注:調査書とは生徒の評定や状況などをまとめた書類で受験先や進学先に提出する資料です。

さて、ではどうして佐世保市の場合は受験不可にはならなかったのでしょうか。

なぜ扱いに差が出たのか

まず前提として自治体による規定の運用上の違いという側面はありますが、それでは考察する意味がありませんので、それ以外の要因に関して考えたいと思います。

始めに考えられるのは、調査書は学校側の書類であるのに対し、願書は受験生のものである、という違いです。

ただ、福岡県の場合は願書の個人による提出を認めていないため、実質的には学校側の提出書類と言えます。したがって、書類の種別が扱いの差になったというのは考えにくいでしょう。

今回の佐世保市の場合、県立高校の為に第一志望で受験をしている生徒がほとんどです。加えて記事内にもあるように、「追加合格」という文言からもおそらくは定員を満たしていない学校であった可能性が高いでしょう。

したがって追加で受験生を合格させたとしても不利益を被る人間がいない、ということになります。

一方で先日の古賀竟成館高校に関してはどうでしょうか。この学校は組合立という性質上、県立高校と同列に扱われていますが異なる点が多々存在します。

中でも特徴的なのは受験日が県立高校とは異なる点です。以下は今年の古賀竟成館高校の本年度の志願倍率です。

古賀竟成館 合計: 3.07
普通科 特進コース  :5.30
普通科 進学コース  :2.87
普通科
ベーシックデザインコース  :1.40
総合ビジネス科  :2.00

地方の中堅公立高校にしてはやけに倍率が高いことに気づきます。それもそのはず、この組合立高校の一般入試は県立高校と別日程となっているため、県立高校の「併願校」として受験する生徒が一定数存在します。

その上、この高い倍率を考えると瑕疵のある受験生を特例で認めることが難しいという判断になったのではないでしょうか。
(とはいえ、博多女子中学校が私立ではなく組合参加自治体の市立学校だった場合、同じ対応になったかどうかは不明ですが)

責任は中学校側にあるが、仕組みの問題を忘れるべきではない

今回の佐世保の件にしても、福岡の件にしても第一には中学校側のミスであることは疑いようのない事実です。

私自身も教員として、特に3年担任の時にこうした書類関係に関しては毎回緊張しつつ取り扱っています。しかし人間はミスをするものであり、それを前提としてシステムを構築すべきです。

そして現在の学校や入試制度はそれが出来ているとは言えないと思います。生徒個人の願書に関しては必ず本人や保護者が自身の責任において出願するシステムへと変更すべきなのではないかと思うのです。

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