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教員の長時間勤務が社会問題である事実と、若いころの苦労と経験がスキル獲得に繋がるというジレンマ


進まぬ教員の働き方改革

教員の働き方改革に関する問題は、新聞やメディアでも話題になっては消えてを繰り返しています。

つい先日は公立教員の「定額働かせ放題」を是正するために教職調整手当の増額が改革案に上がっていました。

これは教員側からすれば不当な賃金制度の是正という側面から、無いよりはまし、という制度ではあります。その一方で在職してさえいれば発生する手当でしかなく、業務量の削減に対してはインセンティブが働かず、働き方改革の素案としては不十分であるという批判も少なくありません。

新任教員の負担

多くの教員が忙しい日々を送っていますが、その中でもなれない職場で右往左往する新任教員の負担量は定量的に測ることが難しいものがあるでしょう。

ベテラン教員に比べれば少ない業務量だとしても、新卒就職であるにも関わらず授業時数はベテランと変わらないというのであればその負担感は推して知るべし、でしょう。

西日本新聞のサイトではこうした新任教員へのインタビューが記事になっていました。

出勤は午前7時15分ごろ。6時間授業と部活が終わった後、職員室で自分の仕事を始めて、学校を出るのが午後8時か9時。授業は担当教科とクラスの学活を合わせて週に18、19こまを持っている。

出勤時間の時点から労基法を堂々と無視する状況がうかがえます。また19コマを担当する場合、平均すると1日4時間の授業を行うことになります。雑務なども含めると、業務時間内に授業準備の時間を取れないことは明白です。

こうした違法な状況が堂々とまかり通っているのが学校現場です。

杉野 私は今、研修中で先輩の取材に同行することもある。自分が書いた原稿は先輩が見てくれる。

ユウ 私たちは初任者研修も普段の仕事の合間にある。1回研修をやってから、仕事を始めたい。

「杉野」とは西日本新聞の記者、「ユウ」とは取材を受ける新任教員になります。これを見てもわかるように、教員の社会にはOJTなどという制度は存在しません。いきなり客のいる目の前に担当者を放り出すような制度で新人教育を行います。こうした状況において採用試験の倍率が低下し志望者が減少するは当然の帰結でしょう。

長時間勤務をしていた過去

私は私立学校勤務であり、公立とは制度的に異なる部分もあるため、単純な比較はできません。しかし、基本的に業務のマネジメントは個人にまかされていたり、残業手当なる概念が存在しない状況は公立のそれとさほど変わりません。

とはいえ、昨今は公立よりも労働条件的には余裕のある状況に変化しつつあります。

かつて、20代のころは22時過ぎに学校を出るというのが普通でした。生徒も21時までは普通に残って勉強していました。それがほぼ平日は毎日続くため、実労働時間は1日あたり14時間程度になっていたと思います。

これは明らかに過労死ラインを超えた働き方であり、どう考えても健全な状態ではありません。とはいえ当時、就職してすぐということもあって、社会における労働者の一般常識のない私はそれを自然に受け入れていました。

この状況が異常だったのは間違いありませんが、同時にそのおかげで教員としての種々のスキルを手に入れたのもまた事実です。残った生徒の教科の質問をストックすることで、どこが分からないのか、どういった点で引っかかるのかという知識が格段に増加しました。また進路相談をこまめに受けることで、大学受験に関する情報やその獲得に関するノウハウを手に入れることができたように思います。

何を引き継ぐかの精査

とはいえ、ではそうしたやり方を現在の若い職員やその次の世代に引き継ぎたいかというと、それもまた違うでしょう。私のやって来たやり方もまた、古い慣習とネットが隅々まで普及する以前の手法でしかなく、これから世代がそれをマネする必要はないからです。

しかしそれは人手不足、人材不足のなかで技術の継承にも労力を割くということでもあります。何を引き継ぎ、何を省略、省力化していくか、これまで以上にしっかりと精査していく必要があるのではないかと思うのです。

それもこれも、引き継ぐ相手あってのものではあるのですが。願わくは若い人が教職に身を置きたいと少しでも思える環境を作るのがまずは先なのかもしれません。

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