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「校内サポートルーム」を作れば解決する、という安直さ

永岡文科相が小学校を視察した件がニュースになっていました。

この視察は不登校の生徒への支援を行う「校内サポートルーム」に関するもののようで、その感想と「校内サポートルーム」設置に対して記事内で大臣は以下のように語っています。

 永岡文科相は、「全国で各県に1校つくるという話も申し上げておりますけど、相当おカネもかかりますし、人材も必要になります」と述べた。「各県1校」とは、今年3月に文科省が不登校対策として発表した「COCOLOプラン」で、現在21校しかない不登校特例校を、すべての都道府県・政令指定都市に設置するという案を指している。

要は、金も人材も文部科学省は出せないから、そうそうすぐにはできないということのようです。

現場に押し付ける無責任な態度

ところがそのあとに以下のように語っています。

「それを思いますと」と、永岡文科相は続ける。「(各校に)空いている教室があるとおもいますので、そういうところで校内サポートルームというものをたちあげていただきまして、教室にいられなくなったお子さまを引き取っていただいて、少し休憩の時間、子どもたちが納得してクラスに帰れるようなサポートをしていただければ、非常に大きな効果があるとおもいます」

なるほど、子どもの減少によって各学校に空き教室は存在するわけだから、そこで引き取れということのようです。

つまり文科省は金も人も無いから対応できないが、各学校で柔軟に対応せよという方針なのでしょう。

もはや大戦末期の大本営並みのいい加減な指揮命令のようです。

「校内サポートルーム」設置の難しさ

確かに教室が余っていることは確かに間違いありません。

しかし、不登校生徒のサポートを行う場合、それなりの人員が必要になります。

その人員をどうやって確保するというのでしょうか。

先日の記事でも書いたように、人件費の国庫補助率が低下している中、地方の自治体や教育委員会がそうした人件費の確保をできるとは思えません。

NPOに委託するにしても費用が必要なのは間違いなく、どう考えても現実的ではないでしょう。

現在、クラスに一人は不登校が存在する言われています。ということは小規模校でも10人程度、大規模校になれば20~30人の不登校者が存在することになります。

こうした子供はそもそもが学校や集団に馴染めていないケースも多く、1教室でまとめて対応するといったことも不可能でしょう。

「校内サポートルーム」で解決するのか

そもそもの問題として、不登校になった生徒は学校に登校すること自体に抵抗感を持っているケースが少なくありません。

その対応を「校内」で行うというのはどうにも根本的な解決になっていないように感じます。

また記事内にあるように、永岡文科相の「子どもたちが納得してクラスに帰れるようなサポート」という認識そのものが現状の支援の方針とマッチしていません。

氏の思考では不登校は「異常」な状態であり、「サポートルーム」で「正常」にした後、教室に戻すということなのでしょう。

果たしてこうした旧態依然とした認識のトップの下で現状の改善が見込めるのか疑問です。

学校に外部組織を入れる方向性は間違いない

こうした疑問は多いのですが、一方でNPOを学校の中に入れるという試みや方針自体は個人的に賛成です。

硬直化した組織、風習、風土など学校が抱える問題は大きく、そうした意識を改革する意味でも外部組織を入れるということ自体は面白い化学反応が期待できるように感じます。

しかし、記事内にあるような文科省が指定したNPOとしか契約できない、というシステムでは御用NPOが文科省の名代として学校を監視するだけになってしまいかねないでしょう。
(東京都でのNPOの財務処理の不透明な問題などの二の舞とならぬよう、しっかりとした管理体制を敷く必要性はありますが)

自治体、地域や学校ごとの独自性に沿った形でNPOと協力し、その費用をきちんと国が責任を持つ、というシステムこそが必要なのかもしれません。

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