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「高卒就職」におけるあまり知られていない制度について解説

高校生の就活体験に関するニュースが上がっていました。

職場見学の不足や職業適性に関わるサポートの要望がアンケートでは上位に来ていたようです。

こうした高校生の就職事情の記事の内容を読んで頭に入ってくる人はどれだけいるのでしょうか。

今回はこうした高校生の就職に関わる知られざる(実際には当たり前のことなのですが)情報をいくつかまとめたいと思います。

高卒就職者は減少、進学率は増加

現在高卒で就職する人はどれほど存在するでしょうか。

令和元年でも高卒就職は17%、大学は55%、専門学校は16%と高等教育機関への進学率は7割を超えています。


専門学校ナビより引用

もはや高卒で就職をする人は圧倒的な少数派であることがわかります。

特に大卒者の場合、職場の中に高卒就職者が存在しないケースも多く、大人になってから見たことがない、という人も少なくないのではないでしょうか。

特に大都市ほどその傾向は顕著で、東京の場合は令和2年度の男子の個卒就職の割合は8.2%、女子にいたっては5.5%とその数は極端に少なくなっています。

そのため、高校生の就職ということに関して知識の無い人が多数派ではないでしょうか。

そこで以下で高校における就職制度や学校斡旋等の仕組みについて解説をしていきます。

学校斡旋という仕組み

高校生の就職の大半が「学校斡旋」という仕組みを利用しています。

これは大学進学における「指定校推薦」に近いもので、以下の三点に特徴があります。

  • 一人一社制

  • 公務員との併願不可

  • 内定辞退不可

一人一社制とは、基本的に第1志望の企業の選考しか受験できないというものです。

高校生の就職市場は厳密にルールが定められており、解禁日は9月16日でそれまでは就職試験を行ってはいけません。そして、その期日以降に、学校に求人票が来た企業を受験者は受験する、という形をとっています。

そして一般には10月いっぱい(県によって異なる)は一人一社制によって第1志望の企業のみを受験します。仮に落ちてしまった場合でも、2社目は11月以降にしか受験できないという仕組みです。
(2社目は複数出願できるなどの緩和措置があります)

この制度は問題も多く、廃止が検討されていますが現状はこの制度上で斡旋が行われています。一方でこの制度によって高い合格率(第1志望の就職率が7割とも言われます)を維持できている部分もあり、難しいところです。

ちなみにこの場合の第1志望の企業の優先順位は一般的に学校内の成績順となっているため、工業や商業系の科では大学進学系の普通科、コースよりも定期試験の重要性が高いと言えます。

また、公務員試験との併願ができないため、不合格確定の後に就職先を探す必要があります。その段階で第1志望になりやすい企業は全て斡旋、内定が決まっている状態であるため、二足のわらじが履けない仕組みとなっています。(そのため公務員志望者は不合格の場合は公務員予備校などに進学するケースが多い)

さらに内定辞退ができないことも特徴です。

これは大学の指定校推薦と同じで、あくまでも企業は高校に求人票を送り、相応しい人物を推薦してほしい、という体で求人を出しています。

そのため個人的な事情による内定辞退は厳禁となっています。

大学生の就職活動とは全く異なる世界

おそらく大学で就職活動をした人からすると、全く想像もつかないのが高校の就職活動です。

私の勤務校には実業系の学科が存在するため、こうした事情を知ることもできますが、多くの大学進学者にとって初めて聞く内容も多いのではないでしょうか。

ちなみにですが、学校斡旋以外の就職も無いわけではありません。「縁故」と呼ばれる親戚演者や知人の会社などで採用されるケースです。しかし、これはかなり率的には少なく、ほとんどの場合は学校斡旋による就職となります。

先に述べたように、このシステム、特に一人一社制は、万が一第1志望に落ちた場合成績上位者が下位者の後に回ること、本人の志望動機よりも条件と成績が優先されてしまうなど公平性の担保や適性の有無への配慮ができていないことが問題となっています。
(現場の教員が制度の不備をマンパワーで調整している、とも言えます)

変更すべきか否かは別として、まずはこうした制度であるということを周知することが重要でしょう。

まずはいろいろな方に知っていただければと思います。

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