宮台氏の「世直し」発言に見る、ネット上の文意を読み取れない人達
先日、暴行事件の被害者となった宮台真司氏ですが、彼が襲撃を受ける原因になったのではないか、と思われる動画や発言が物議を醸しています。
発言の内容は以下のようなものです。
この中における「世直し」という発言が、テロリズムを肯定している、として批判を受けており、また襲撃犯の神経を逆なでしたのでは、ということのようです。
宮台の語る日本人の「劣等性」と「世直し」
宮台氏は比較的リベラル寄りの発言をする人であり、思想的に保守層との親和性が低いため、受け入れがたい発言をすること自体は理解できます。
しかし、そうした批判の多くが「世直し」という言葉だけを取り上げて、氏の指摘する「劣等性」の解釈すらままならないという状況があるようです。
宮台氏の「世直し」という発言とその主張は以下のようなものではないかと思います。
特定教団との癒着や五輪汚職の問題は行政府や立法府、あるいは社会全体が本来自浄的に解決されるべき問題である。
ところが、政治的指導者として権威が高まり過ぎた安倍元総理の存在により、そうした問題が全て存在しないものとして社会的に封殺されてしまっていた。
安倍元総理の死によって、その「蓋」が外れたことで事件が明るみになってしまい、自浄作用の無い日本社会において結果として山上のテロが「世直し」的な機能を有してしまった。
テロに「世直し」の機能を与えてしまう日本社会は、権威主義かつ他律的で日本人の劣等性を示すもので、これこそが日本の病巣である。
ところが、氏のリベラル的ポジションと煽情的な表現が合わさったことで、この発言のロジックを読み取ることを多くの人ができていない、という状況ではないでしょうか。
安倍元総理の功罪と個人的な評価
安倍元総理に関しての評価に関して、賛否が分かれるのは確かです。
私の個人的な評価としては、外交や安全保障に関する内容に関しては、歴史上類を見ない成果を上げた総理大臣と言えます。
一方で、経済政策に関してはアベノミクスの初期に関しては成功していたが、賃金増にまで波及を広げられなかったという点においては中途半端な成果となってしまったというところです。
森友、加計学園などのトラブルに関しては安倍元総理の発言から公務員の忖度によって発生したという認識で、長期政権と堅固な選挙基盤をもとにした権力の集中により発生した副産物だと考えています。
(その責任の一端は安倍元総理にあるでしょう)
ただ、総合的にはプラスの評価をしており、このあたりが宮台氏の認識とは異なるため、氏の発言の全てを受け入れるというポジションではない、ということです。
思想性が異なっても、読み取りは可能
上記のように、私と宮台氏の政治的スタンスはやや異なっていますが、それでも氏の発言の意図や主張を読み取ることは可能です。
安倍元総理の高い権威性が産官学にわたって上に忖度するヒラメを生み出したのも事実でしょうし、日本においてはカリスマが出るたびに同様の現象が発生してきたというのは歴史が示しています。
そのような道徳や倫理、法律よりもお気持ちの忖度を優先するという過ちを繰り返すことが日本人の劣等性である、という主張もうなずける部分はあります。
しかし、ネット上ではそうしたレトリックを読み取れずに「テロを肯定する気か」といった批判をする人が少なくありません。
宮台氏の発言を批判するのであれば、それは「日本人」特有の現象ではない、や「安倍元総理」だけの特有の現象ではない、といった文意を読み取った上での批判であるべきなのです。
以前も記事に書きましたが、文章を読み取れない人が増えて(ように見える、顕在化した)います。
これまでならば、著作を読んだ人が批判するため、これほどの錯誤は生じませんでした。
しかし、インターネットの普及は多くの人々に文章が伝わるようになりました。
動画や140字で理解力の低い層にも情報が伝播する時代において、ある程度文意をきちんと理解する教育の重要性はさらに高まっているのかもしれません。
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