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「ゆっくり丁寧」な授業は逆効果


学校の授業や業務におけるプレゼンテーション、講演会など、多数の人々に何かを訴えかけたり、説明するという機会はオンラインのやり取りが進み、増加傾向にあるのではないでしょうか。

こういった機会が全くない人もそう多くないでしょう。

「ゆっくり丁寧」に話しなさい、というアドバイス

そうした機会において、『「ゆっくり丁寧」に話した方が良いよ』というアドバイスをもらった人は少なくないのではないはずです。

このアドバイスを受けた理由は、聞いていた人の中に、おそらく話の内容があまりよく理解できなかった、理解するのに苦労があった人がいたということです。

たしかにその点には改善すべきことがあったのでしょう。

しかし、実はこれが大きな罠なのです。話を「ゆっくり丁寧」にしても実際のところわかりやすさはほとんど向上しません。むしろ分かりにくくなる場合すらあります。

環太平洋大学の研究紀要に以下のような分析がありました。

一連の研究結果から得られた知見として,①発話速度が速く,声が高く,抑揚の大きい音声ほど話者の外向性評価が高くなる。②発話速度,音声の高さおよび抑揚と話者の性格とは逆U字の関係を示しており,一定の値でピークに達し,それよりも高かったり低かったりすると性格への評価も低下する。

中略

聞き取りやすさに影響を与える音響パラメータとしてポーズ,発話速度等がある。これらの非言語チャンネルの情報は話者の印象形成にも大きく寄与する。ただし,ある一定値をピークとして,そこから離れると聞き取りにくくなったり印象が悪くなったりという逆U字の関係が存在する。日本語の発話速度でいうと,概ね1秒あたり8.5モーラが目安になる 。

環太平洋大学研究紀要 第10号 スピーチの評価についての実験研究の動向と展望次世代教育学部教育経営学科 吉澤 英里

査読論文ではないとはいえ、これは興味深い内容でしょう。

ちなみに、健常若年者の発話速度は1秒あたり6モーラ、いわゆる早口が7.9モーラぐらいとのことですから、8.5モーラはかなり早口になります。

ある程度スピード感のある話し方が好ましい

難しいと思われることを説明するとき、人はゆっくり説明すれば分かると考えがちです。

しかし、実際には聞き取りやすい速度はそれより上であり、理解に対してゆっくりであることはあまり寄与しないようです。

これは体験的にも納得できます。予備校などのカリスマ講師の授業はそのどれもテンポよくスピーディーです。明らかに学校教員よりも速い速度で話しています。

授業の組み立てをどう考えるか

この結果を踏まえたからといって、授業内容を増やしすぎても難しくなるため、一回の授業あたりの分量を増やすのは難しいでしょう。

しかし、話す速さを上げると時間は短縮できます。

そこで、前回でも触れたように、テンポよく説明を行い時間短縮を図り、授業中の演習に時間を割くというのが最適解のように思えます。

授業の前半部分に説明をコンパクトに纏める。その後はテンポよく説明し、演習をしっかり行う、このやり方は決して間違ってはいないようですが、どうでしょうか。


自分自身、あまり話すのが遅い人は苦手です。

次の話のことを頭の中で考えさせないぐらいのスピードの方が私には合っているようです。

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