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【題未定】中学受験対策がもたらす学習アドバンテージ:現状と実践的提案【エッセイ】

 ここ数年、首都圏では中学受験が過熱しているという。受験者数は過去最高を記録するなど、少子化が進む中での増加は受験率の上昇を如実に表している。

 私立中学校に進学するという選択はいろいろなメリットがあるが、こと大学受験においては明確な強みがある。学習環境が公立中学校のそれとは段違いで整っているし、何よりも大学受験に即した先取り学習のペースを維持できる。時間的な余裕を疑似的な「浪人生」としての時間として現役受験の時間内に確保できる点も大きいだろう。

 公立中学校に進学するメリットもないわけではない。経済的負担が軽いことは最も大きな特典であるし、その費用を高校受験に振り分けることも可能だ。また多様な背景を持つ生徒と机を並べる経験は人間的な成長、野に育つ強さを獲得するきっかけともなる。友人関係から非行への可能性が多少高くなる側面もあるが、管理された養殖環境と、自然のままの野生の環境のどちらに適性があるかは子供次第だろう。結局は適性を見極めることが重要なのかもしれない。

 公私、どちらに進学するにしても一つだけ断定的に有益だ、と言えるのは中学受験の経験である。より正確に言えば、中学受験対策の経験と言うべきかもしれない。一般的に中学受験の内容は小学校で学んだ基礎を前提にして高度な応用問題までが出題される形式である。そのため受験対策を行うことは、小学校内容の基礎を徹底的に固めることに等しい。

 小学生の多くは自宅学習をそれほど真剣に行っていない。いわゆる「真面目」と呼ばれるタイプの子であっても、宿題などはしっかりこなしているが、習った単元をその都度確認している程度の学習がほとんどだ。ところが中学受験対策の場合、学年をまたいで内容と定着の確認作業を行っていく。この小学校内容の総括こそが独学では難しく、受験を経験する最も大きなメリットとなる。

 ここで補足しておくが、何も難関中学校を目指すべき、と言っているわけではない。この文中での受験のイメージは偏差値45(関東で言えば聖学院など、九州では弘学館あたり)の学校を目指すことを想定している。とはいえこのレベルでも高校受験における偏差値65ぐらいと同等の難度となるため、決して簡単ではない。このレベル帯の学校に1年間の塾通いで合格を目指すことは、習慣付けという意味でも、基礎学力定着という意味でも有益な学習経験となるだろう。
(中受ガチ勢を対象とする話ではなく、あくまでも中学受験を考えていなかった層が、大学進学を目指す一歩目として考えている)

 あまり知られていないことだが、小学校で学ぶ内容は決して簡単ではない。例えば国語の読解などは下手な高校入試よりも難しい問題のこともあるし、漢字の読み書きは小6までのものが完璧であれば生活に支障がない程度のものとなっている。社会や理科の知識分野も決して浅くなく、多岐にわたっている。算数にしても四則演算は言うまでもなく、図形、比や割合の概念などは高校受験、大学受験でも使う内容である。加えて高校理科などでの応用的活用の場も多いものでもある。

 以上のように、中学受験の対策を行うことはその後の学習にとって大きなアドバンテージとなるのは間違いない。合格した場合に進学するかどうかは別に考えるとして、受験経験を積むことは決してマイナスにはならない。費用的な不安がある場合は公立中高一貫校という選択肢も存在するだろう。(その場合、私立とは全く異なる受験対策が必要となるが)

 言うまでもないことだが、中学受験に全振りをして取り組むということに関しては賛否が分かれるし、その方針は万人に勧められるようなものでもない。しかし、いわゆる「ゆる受験」と呼ばれる受験を小学校の時点で体験することは決してマイナスにはならないし、経済的に許される限りにおいては幅広い層にお勧めできる経験ではないかと思うのだ。


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