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「福岡国際音楽大」認可申請、地方の音楽大学に成功の可能性はあるか?


「福岡国際音楽大学」認可申請

少子化が社会問題となって久しくなり、18歳人口も毎年のように減少を続けています。当然ながらその流れに沿うように大学の募集停止が全国でも相次ぎ、大学間競争は激化、統廃合も進みつつあります。

そんな中において、地方、九州において新たな大学の設置の動きがあるようです。

場所は福岡県太宰府市、「福岡国際音楽大学」という名称通り、音楽系の単科大学を高木学園が設置しようとしています。

高木学園は福岡国際医療福祉大学など複数の学校を運営する学校法人です。(国際医療福祉大学は高木学園とは別に運営が行われている法人だが、医療法人である高邦会のグループの一法人ではある)

この高木学園は九州、特に福岡では有名な高木病院系列の学校法人であり、医療系人材の育成に関しては定評のあるグループでもあります。

その高木学園が音楽大学の運営に乗り出すというのはなかなかに興味深いニュースです。

九州の音楽大学事情と関東の音楽大学の志願者倍率

今回の音大開学の背景には九州における音楽系大学が少ないことが理由として上げられています。

実際、九州内において音楽系の専門学部を抱える4年制大学は現在、熊本県の平成音楽大学のみです。長崎にある活水女子大学の音楽学部は2023年度で募集を停止しましたし、それ以外の音楽系の大学は短期大学か、もしくは学科、コース単位での募集となっています。

九州の人口の半分を抱える福岡県に音楽系の4年制大学が無いという状況が確かに異常だったとも言えるでしょう。

しかし一方で果たして少子化が進む現代において、地方における音楽大学がまともに経営が可能なのか、個人的には疑問に感じる部分もあります。

例えば器楽で有名な桐朋学園大学の音楽学部はここ数年きっちり1倍となっていて、全入状態となっています。

私立音楽大学としては最も歴史の古い東京音楽大学はもほとんどの学科、コースで1倍です。

声楽で有名な国立音楽大学も多くの入試形式で1倍となっています。

こうした歴史、定評のある大学ですら倍率が1倍となっています。これは他学部と単純な比較をできる数値ではないため、1倍が即不人気ということを意味するわけではないでしょう。ただ、すでに一定層の人たちが音楽大学を志望しており、その需要が満たされているということは事実のようです。

経済的理由で諦める層を集客できるか

この点に関して関係者は記事内で以下のように語っています。

関係者は「四年制大学志向の強まりが追い風になるほか、経済的理由で県外への音大進学を断念する人にとっての選択肢になり得る」と話している。

しかしこの点に関しても疑問符が付きます。正直、音楽大学で最もネックになるのは県外への進学というよりも音楽大学の学費そのものと諸費用です。私立の音楽大学の場合、学費だけでも年間で200万円前後が学費負担が発生します。

これに加えて学外の個人レッスンや楽器のメンテナンス費用、それ以外にも練習会場の費用や伴奏者への謝礼など見えない費用が多数存在します。

これらの負担は決して県内進学、自宅通学だからといって軽くなるものではないでしょう。

音楽大学の格式と伝統

私自身は音楽に関しては全くの素人であり、門外漢です。しかし、音楽大学の人気や評価が伝統や格式といった一朝一夕で獲得できないものが指標となっていることは部外者が見ても明らかです。

今回の福岡国際音楽大学は福岡女子短期大学の校舎の一部を利用するとのことで、一応は前身と見ることもできますが、それとて1966年開学、音楽学科は1970年の設置とそこまで古い歴史のある音楽系短期大学ではありません。

つまり、これまでの前評判無しに関東、関西の音楽大学と戦うということになるわけです。

とはいえ高邦会グループは医学部という象牙の塔に真っ向から立ち向かい、新設の国際医療福祉大学は評価を高めています。そうであれば、市場調査による結果でも採算がとれる予定はあるのではないでしょうか。

ひとまずは今後の動きを注視したいと思います。

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