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【題未定】コーヒー党のインスタントコーヒー嫌い【エッセイ】

 昔からコーヒーには一家言とまでは言わないが、ある程度のこだわりがある。高級な豆を買ったり、高価な器具を使用したり、面倒な抽出をしてコーヒーを飲むことまではないが、コーヒーミルを使って、コーヒーメーカーで毎朝コーヒーを淹れることは習慣となっている。

 とはいえ味にそこまでこだわりがあるかというとそうではない。コーヒーミルやコーヒーメーカーは市販の廉価な物しか使用していないし、そもそものコーヒー豆を400gで2000円未満のお買い得品を使うことがほとんどだ。ブルーマウンテンを淹れることなど滅多にないし、ジャコウネコで有名なコピ・ルアックなどは口にしたこともない。何ならコンビニコーヒーでも十分満足できるようないわゆる「貧乏舌」だ。

 しかしそんなコーヒー好きの中でも最ライト層にあてはまる私がどうしても苦手で飲むのを避けるのがインスタントコーヒーだ。もちろんインスタントコーヒーを飲んで不味くて吐き出したり、のどが受け付けないということはない。出先で出されれば口をつけるし、のどが渇いていれば飲み干すこともしばしばだ。とはいえ自分で購入するか、家や職場で飲むか、と言われればそうしたことは一切ない。

 実際のところ、インスタントコーヒーが「不味い」とまでは思っていない。高級なインスタントコーヒーはそれなりに風味があるし、フレーバー系のものなどは昨今の技術力の向上もあってか相当なクオリティの飲み物となっているのも事実だ。しかしそれでもインスタントの風味が好きではないのだ。私の場合、不味いドリップと上手いインスタントであっても、おそらく前者を選ぶような気がする。インスタントは自分の中でコーヒーを飲みたい場面で口にする飲み物ではないのかもしれない。

 コーヒーを自分で淹れるようになったのは大学時代、アルバイトの塾講師をし始めた時だと記憶している。バイト先の控室でコーヒーメーカーでコーヒーを淹れる先輩を見て淹れ方を覚えた。とは言っても、単純にコーヒーメーカーで淹れるだけなのだが。その職場でコーヒーを空き時間に飲むことが習慣化したのは間違いない。授業の合間に口にするコーヒーとチョコレートが癖になったのはあの時だろう。

 もしかするとインスタントが苦手なのはその味よりも、「インスタント」であるということが理由のような気もする。私にとってのコーヒーはひと時の安らぎを得るための手段だからだ。その時間が「即席」であるのは物寂しい、そんな深層心理が関係しているのではなかろうか。まあハンドドリップでもないコーヒーメーカーで淹れるだけの作業なのだが、待つというその一呼吸を求めているのかもしれない。

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