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教員用の相談窓口は若手教員の離職の歯止めには全くならない

群馬県教育委員会は増加する若手教員の退職に対し、相談窓口を設置して対応するという方針を打ち出しました。

こうした事例は全国の教育委員会や共済組合でもすでに行われているようです。

若手教員の業務上の悩みは尽きない

教員という職業は学校という組織単位で働いています。さらに、その下に学年団や教科といったプロジェクトチームごとに縦横のマトリックスに分かれて所属しています。

しかし、一方で担任や授業担当のクラス内における指導や責任に関しては原則一人で責任を持つことになります。

加えて、授業時間においては新卒の教員であっても一人で対応をすることになります。
(大卒1年目の職員に顧客対応を一人でさせる超絶ブラック企業とも言えます)

もちろん指導担当者は割り当てられますし、初任者の研修は行われますが、実際に生徒の前に立っているのは一人で、しかもとっさの判断を求められる場合も多く存在します。

そのため、教科や学級指導において若手教員はいくつもの悩みを抱えることになります。

指導担当者や管理職に相談できる場合もまれに存在するでしょうが、一般的には難しいようです。また、同僚教員の場合は相談を受けられる余裕のある勤務体制でない場合も多く、職場内で孤立することは少なくありません。
(これに加えて人数構成のアンバランスによって相談できるような少し上の先輩が少ないこともあります。新卒の20代の次は40代というのは珍しくありません。)

相談窓口の必要性は否定できない

そんな状況において、相談窓口そのものの存在の必要性は決して否定できないでしょう。

特に教員同士の場合、学年や教科で横並びに強制をされて、それが悩みとなるケースもあり、校内での利害関係の中で相談をすることは難しいことも多いはずです。

そう考えると、外部機関に相談窓口を設置すること自体は決して的外れな政策とは言えません。

相談担当者の選出が教員的、お役所的

ところが肝心の相談窓口担当の人員が全く的外れな人選となっています。

窓口は、7月に開設予定で退職した校長経験者が相談員となり、採用1年目と4年目の教職員を対象に日々の業務や指導上の悩みなどに関する相談に対応します。

記事によると「退職した校長経験者」と書かれています。またリンク先の共済組合の相談事業も「元市立小学校校長」ということです。

はたして若手教員の相談相手として校長経験者が相応しいと言えるのでしょうか。

正直なところどう考えてもミスマッチと言わざるを得ません。

校長経験者の多くは学校における現場業務を離れてかなりの時間が経っていることがほとんどです。

彼らが現場に立っていたのは少なく見ても20年近く前になるでしょう。その時期と現在の教育環境は全く異なっています。

ICT利用などはもちろんですが、授業形態なども多様化しています。生徒や課程の問題は個別化し、十把一絡げにアドバイスをできるような事例はほとんどありません。

経験則からのアドバイスの多くは的外れなものとなるでしょう。

また、校長経験者という親よりも年長の人間が話せば、必然的に上から目線での説教になりがちです。(これは相談担当者が意図せずともそうなってしまいます)

そもそもどんな人格の人間が相談者なのかも不明な状況で「老害」である可能性が低くない相談窓口に時間を割いて相談する若手教員はどれほどいるのでしょうか。

少なくとも私ならばそんなところには相談しません。

教員経験のあるカウンセラーなどが適任か

おそらくこうした相談に向いているのは、きちんとカウンセリングの知識や技術を身に着けた人であり、なおかつ教員経験のある人ということになります。

教員特有の悩みや問題に理解がありつつ、カウンセラーとしてメンタルケアを含めた対応ができることが必要である、ということになります。

問題はそうした人がどれほど存在するのか、ということです。

仮に今回の相談制度をきちんと機能させたいのならば、カウンセラーの増員は不可欠です。

そのためには教員経験によるカウンセリング資格の取得優遇や、スクールカウンセリング制度のさらなる拡充を進めて、職業としての需要を高めなければならないでしょう。

どう考えてもそこまでの政策を実行できる可能性は低いことを考えると、今回の制度は絵に描いた餅になりそうです。

さらに危惧されるのは、「相談者がいないのだから若手教員の勤務状況は良好である。」という結論ありきに議論に利用されることかもしれません。

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