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【題未定】ホテルで夕食を食べなくなった話【エッセイ】

 旅行の楽しみとは何だろうか。名所や旧跡、風光明媚な景色、あるいは同行者との交流など楽しみ方は人それぞれだ。しかしその中でも多くの人が共通する楽しみ方は食事だろう。

 旅先ではその土地にちなんだ名産品や名物を味わうことができる。九州で言えば鹿児島の黒豚などその土地ならではの食材というのもあるし、沖縄のソーキそばなど独特の味付けといったものもあるだろう。九州外の人が吸収を訪れると醤油の甘さに驚くという話を聞くことは多い。本州の人からすれば刺身から煮物に至るまで甘い味付けのものばかりということになのではないだろうか。

 そういった地の名産を味わうならばどこに行くべきだろうか。高級ホテルのレストランはそのニーズにはマッチしないだろう。クオリティは高くともどこへ行っても同じに近いものを提供していることが多いからだ。それよりも地元の人が多い居酒屋などはそうしたニーズに合うだろう。そこで本日のおすすめ的なものを頼めば、間違いなくその土地にちなんだものを口にすることができるはずだ。

 若いころは旅先や宿泊先で食事する場所として、そうした店を積極的に探すことが多かった。出張で宿泊する際も、夕食を食べるために飲食店を探さないことはなかった。ところが最近はそうした行動をあまりとらなくなった。子供と旅行するときは店選びが難しいのもあるし、一人で出張するときも食べに出ることはほとんどなくなった。

 では、夕食をどうしているかというと地元のスーパーなどで刺身や惣菜などを買って、自室でゆっくり食事をするという具合で楽しんでいる。家族との泊りの場合もこのやり方ならば子供の食べられるものを気にする必要がないこと、そもそも子供が入れる店かを気にする必要もなく非常に気楽だ。一人の時もそのスタイルならば部屋でゆっくりと当地のローカル番組や好きな動画などを見ながら落ち着いて食事ができるのだ。

 私の場合、シャワーを浴びてから食事をした方がリラックスできることもあり、外で食べると臭いもあってかどうしてももう一度汗を流したくなる。しかし部屋食であればその心配も無用だ。ゆっくり食事をして、眠くなればそのまま床に就けるというのは何よりも魅力的だ。

 最近はスーパーに並ぶ食品も侮れない。道の駅に並ぶような郷土料理がパックで並んでいるし、地酒もそろっている。コストパフォーマンスにも優れていて、それこそ店で飲食をすれば軽く一人5000円は飛んでいくところだが、スーパーならばその1/3で済ませることも可能だ。

 旅先での経済効果に貢献できないことは心苦しいし、居酒屋で見知らぬ人と話すという機会がないのは惜しい部分もある。しかし他人と話すことがあまり得意ではない私にとって、部屋で食事できるのはなかなかに快適であり、最近は病みつきになりつつある。

 せっかくの旅先で外食しないというのは寂しいという向きもあるだろう。その点に関しては毎回ではないが夕食で外に出ることもあるし、それ以外には昼食を外でとることで解消するようにしている。昼に空いている店限定とはなるが、旅先で蕎麦やうどん、ご当地ラーメンなどを堪能すれば十分に旅の気分は味わえる。

 このスタイルを決して万人に勧めるつもりはない。言うまでもないことだが旅の楽しみ方は人それぞれだ。ただ、ゆっくりと食事をしたい、人と話すことが苦手だ、という人にはぜひとも一度試してほしいスタイルでもある。旅先で食事する場所が見つからず吉野家やファミレスに行くよりもコスパに優れ、そしてその土地の食文化を感じ取れる機会になるのではないだろうか。


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