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「体育座り」見直しの動き、その流れは歓迎だが本質は別にある


「体育座り」見直しの動き

学校現場では長年習慣化していた「体育座り」に見直しの動きが出ています。

記事内では携帯パイプ椅子を活用することで集中して話を聞けた、といった内容が書かれています。

また理学療法士の方のインタビューも掲載しています。

「体育座りを長時間続けると、子どもの体には悪影響があります。座った時に座骨の1点に圧力がかかり、痛みや足のしびれが出る可能性があるほか、背中が丸まるため、腰に負担がかかり、腰痛の原因にもなるからです。ほんの数分なら問題はありませんが、長時間になるときは大きめの椅子を使うとか、あぐらにするのがいい。定期的に休憩時間を設けるなど、学校は子どもの負担にならない環境をつくってほしいです」

こうした時代錯誤な習慣は時代に合わせて変えていくことは大歓迎です。

今回の場合も、地べたに座る習慣の無い生徒が増えたことからの変更のようです。

「体育座り」の歴史

「体育座り」が日本の教育現場に定着したのは、1965年(昭和40年)に文部省から学習指導要領を補足する『集団行動指導の手引き』で取り上げられたことがきっかけのようです。

このあたりに関しては金沢大学の学部学生?であった沢野咲知子氏の研究、「小学生の体育座りに関する研究」に詳しく書いてあります。

これを契機に「体育座り」は全国の学校に浸透したと言われています。

現代においても『集団行動指導の手引き』では体育座りは「腰をおろして休む姿勢」と定義されているようです。

日本の伝統のようなふりをして、戦後にできたいくつかの習慣と同じ類なのでしょう。

記事中では、スポーツ庁の担当者は「あくまで例であって、強制するものではない。各学校では、健康に配慮して実情に応じて判断してほしい」という言葉を発しています。

しかし「小学生の体育座りに関する研究」にあるように、現状では疑問に感じてすらいないのがほとんどの現場教員の意識でしょう。

携帯パイプ椅子という解決手段

今回のニュースにおいて、背骨や発達に悪影響のある姿勢を取りがちな「体育座り」の解決手段として、生徒にパイプ椅子を持たせるという手法がとられています。

もちろん次善策としては評価できるのですが、果たしてこれは根本的な問題解決と言えるでしょうか。

そもそもなぜ運動場などの広い場所で座って話を聞く必要があるのか、それは何人もが延々と話をするからです。

記事中の理学療法士の方の言葉にもあるように、ほんの数分ならば問題はないはずです。

普通に考えれば、話を短くすれば解決する話です。

ところが実際には長話をほんの数分にする努力や工夫を行わず、自分たちの話を聞かせたいばかりに生徒に椅子を与え、15分以上話を聞かせるために待機させているわけです。

こうした考え方が今日の学校文化と現実の齟齬を生んでいるのかもしれません。

改めるべきは別にあるのかもしれない

繰り返しになりますが、パイプ椅子を利用する解決手段自体は、「体育座り」を避けるという意味においては効果的であり、疑問にも思わず、何ら対策をしない他自治体や他校と比較するべくもない工夫の一つとして評価すべきです。

しかしそういった場当たり的な改善策ではなく、現代の時流に合わせた価値観の転換こそが本来は必要なのかもしれません。

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