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スピーキング試験を導入する都立高校入試の問題点

本年度より、都立高校入試において英語のスピーキング試験が導入されるようです。

「ESAT-J(イーサット・ジェイ)」と呼ばれるこの試験はベネッセコーポレーションが実施するもので、タブレットを用いてそこに話しかける形式で行われます。

時期的な問題

そもそもこの試験の導入が決定したの1年前という短期間での導入決定となったことで、情報や試験の要領がわからないままに1か月前となってしまいました。

これに対しての受験生や保護者の反発は強いようです。

また、11月の試験の結果は都立出願の直前に判明するということで、志望校変更が難しい時期というスケジューリングも問題視されているようです。

不公平感のある制度

不公平なシステムであることも指摘されています。

そもそも、学校によっては熱心に対策を行っているのに対し、まったく似たような試験を学校では実施せずに受験に臨むことがあるようです。

この試験はベネッセの作成したものであり、同社の実施している英語検定試験、GTECと類似性が高く同試験を受験している生徒には受験しやすいものになるのではないかということです。

それ以上に不公平なのは、受験をしなければならないのは都内の公立中学校の生徒のみということです。

都立高校を志望する私立中学の生徒や他県の中学生は、学力が近いと思われる他の受験生から類推して点数が自動的に与えられるシステムということです。

「ESAT-J(イーサット・ジェイ)」は20点満点を4点刻みの6段階で評価するということで、全体からすれば割合は低いものの、決して無視できる得点ではないでしょう。

スピーキングテストに効果はあるのか

そもそも論として、スピーキングテストにどれほどの測定効果があるのかが疑問視されています。

英語の4技能が叫ばれる最も大きな目的は、外国人と話せる英語教育をめざすことにあります。

そのために授業の中で実際に発話する機会や外国人と会話する経験を持つことはその目的にかなっており、スキルアップにつながるでしょう。

発話スキルは発音や文法も重要ですが、実際にはどれだけ場数を踏んだか、という経験値が物を言うからです。
(文法や単語知識が最低限あった上ではありますが)

そうやって考えると、タブレットに話すふりをすることがどれほど実際に「会話」をできることの評価と本当に対応するのでしょうか。

タブレットへの発話の場合、まったく話せないレベルは判断が容易ですが、それ以上のレベルの判断が可能かは疑問が残ります。

そもそも、本当にスピーキングテストを目的とするのならば、すべてネイティブの採点者で評価しなければ判断は難しいように感じます。

全国に広がらないことを願うばかり

この入試の発表を受けて、さらに私立中学の入試が激化するのではないか、と首都圏では危惧される向きもあるようです。

高校受験でエネルギーを使うよりも、中高一貫で6年間を有効活用しようという層が増える可能性もあるでしょう。

その考え方自体には私は賛同しますが、それは高校入試の改悪によるべきではないと思います。

まずは、今回の都立入試の動静を伺いたいと思います。


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