フィンランド式教育は、礼賛も蔑みせずに冷静に見る必要がある
ここ10年ほどのトレンドとして教育の問題に関しての成功例としてフィンランドの話題がかなりの頻度で扱われます。
OECDの調査などでもフィンランドは好成績を維持しており、そうした話題の中心になること自体は決しておかしなことではないでしょう。
フィンランド式教育の特徴
フィンランド式の特徴、日本との差異を以下に列挙します。
小中高大院、全て無償
高校までの義務教育期間は教材費、給食費、交通費も無償
教員免許は修士以上
学習指導要領は最低限、教科書検定無し
少人数(20人学級)
もちろん、これ以外にも自主学習重視や支援学級の充実などがあげられますが、マス層に関わる内容としては以上の5点ほどではないでしょうか。
一見すると非常に優れたシステムを構築しているように見え、日本でも導入すべきだという声は少なくありません。
しかし、果たして現実的な内容として実現可能なのでしょうか。
教育費無償の代償
教育費の無償化に関しては、日本でも小中学校は原則無料ですし、高校や大学にしてもある程度は実現しています。
もちろん所得制限がかかり、その制限自体も緩いものではないため対象となる学生や世帯数は限定されてはいるものの実現自体は可能かもしれません。
とはいえ、こうした教育費の無償化による代償は大きく、フィンランドの場合は消費税は22%、住民税も20%弱と日本の倍の税率となっています。
また、消費文化や大衆娯楽に関する選択肢が少ないことは有名です。
これが「選び疲れ」からの解放と見ることができる人は満足できるかもしれませんが、日本の消費大衆社会になれきった現代人が果たして我慢できるかどうか。
個人的にはこうした高福祉国家のファッションや娯楽に関する抑制的なスタンスは日本で受け入れられるものではないと感じています。
教員免許の取得要件
これに関してもどうやら錯誤が存在しています。むしろそうした錯誤を利用しているのでしょう。
フィンランドの大学などの高等教育機関は5年間で卒業となります。
そして、5年間で国際基準における修士論文を書き、評価を受けて大卒となる仕組みをとっています。
つまり、フィンランドにおいては単純に大学に行けば大学院までセットになっているという制度をとっています。
したがって、教員免許の取得要件があえて難しくすることで教員の能力向上を図っているというよりは、単にシステム上の問題でしかないということです。
指導要領なし、検定教科書なし
この制度に関しては日本でも実行可能な可能性はあるでしょう。
しかし、日本のように人口が1億人を超える国家で一律の教育を行う行政制度と、フィンランドのように550万人の小国で行う教育行政が同列に語るのは難しいように感じます。
こうした緩い管理制度は、行政府の目が届くという前提において機能しています。
フィンランドの国家規模は兵庫県と同じくらいであることを考えると、はたして日本全体で同様の制度を行えるかどうか微妙でしょう。
仮に道州制を導入し、内政の大半を広域自治体に任せる方針を取ればこうした制度も可能かもしれません。
しかし現行の北海道から沖縄まで原則同じ教育制度を適用するシステムにおいては同様の施策は現実的ではないでしょう。
少人数制の非現実性
日本でも少人数教育に関して推進する動き自体は存在します。
小学校低学年の学級定員は35名となるのはその一つでしょう。
しかし、現実には教員不足が全国的に深刻化しており、場合によっては2クラスに担任が一人であったり、管理職が常に臨時担任を務めることで無理やり状況を収めているケースもあるようです。
一人ひとりの様子や日々の変化、興味関心などを捉えたければ、現実的には20名以前後というのは現実的な学級生徒数ではありません。
高校生でさえそうなのだから、義務教育に関しては言うまでもないでしょう。
高福祉の社会主義国家
フィンランドは高負担、高福祉のシステム上は社会主義国家に近い存在です。
日本は同様に言われたりことがありますが、実際には消費文化に骨の髄までどっぷりと浸かった資本主義国家です。
フィンランドのやり方は参考にすれども、現実には実行困難な例外的取り扱いとして認識しておく必要があるのではないでしょうか。
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