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教育費高騰を煽る駄記事とファイナンシャルプランナーの胡散臭さ


盛り上がる受験産業

前回の記事でも書いたように、ここ数年、受験産業が大きな盛り上がりを見せています。

また、大学受験においても学部進学率は高校卒業者の6割を超え、過去最高の人数を記録しています。

この数字は第2次ベビーブームなどの世代よりも多い数であり、全国の大学設置数は800以上となっています。

この数字を見れば受験産業は大きく盛り上がっているように見るのは当然でしょう。

実際には減少する浪人生

しかし大学の数が増えたこと、「やりがい」や「適性」を重視する現代的な風潮から、猫も杓子も難関大を目指すという空気は大きく薄まっています。

その結果、浪人生の数は過去最低の数ともなっています。

1994年度に約20万人ほどいたと言われる大学受験浪人生は2023年度には7万人ほどにまで減少し、予備校の市場規模は往時の3分の1にまで縮小しています。

また進学率が上がったことで大学進学者は増加していますが、少子化によって18歳人口は減少し続けており、1990年代初頭には200万人いた18歳は現在は110万人程度、2030年を過ぎると80万人程度にまで減少します。

この数字を見れば明らかに受験産業の市場は縮小するのは目に見えていると言えます。

教育費高騰を煽る記事

近年はそうした状況からか、ファイナンシャルプランナーと呼ばれる人たちが教育費の高騰に警鐘を鳴らす体で受験業界にも食指を伸ばしています。

この記事の見出しや中身をざっと見すると、不安を煽られてしまう人も多いのではないでしょうか。

しかし、この記事の内容にはいささか首を傾げるものが多いように感じます。

幼稚園から高校まで、すべて公立に通わせても、1人あたり平均総額で「574万円」かかる計算となった。ちなみに、高校まですべて私立だと「1838万円」だ。

まず幼稚園の費用や小中学校における諸費用を「教育費」に組み込むことが果たして妥当であるか、これは疑問が残ります。

認定こども園の場合は親の所得で預入費用が決まりますし、小中学校における都度の負担は生活費の一部という認識であるため、「教育費」という別建てでの貯蓄をしている人がどれほどいるのでしょうか。

全て公立で高校までを「574万円」とするのは明らかにこの人の職業的なポジショントークですし、受験産業の尻馬に乗った煽り文句でしょう。

大学進学の費用

この記事でも教育費の多くは大学進学に際するもの、としています。

 ここで特筆すべきは大学の教育費。「一番大きな費用負担です。大学4年間の総額で、国公立は481万円、私立文系は690万円、私立理系は822万円の計算になりました。

まず大学の費用に関して高額なのは私も同感です。しかし、学生支援機構の奨学金などを利用すればどうでしょうか。

仮に第2種(有利子)で月額5万円の給付を受けた場合、年間で60万円となり国公立大学の学費分は賄えます。私立大学の場合も半額は賄える計算になります。

さらにこの記事が現実離れした試算をしているのは以下の部分です。

しかも、子どもが1人暮らしをした際の生活費は別です。都内に住むとしたら学生のワンルームでも月10万円前後の家賃になります。4年間でさらに500万円以上がプラスになります」。

都内のワンルームに月10万円の部屋を借りる平均所得レベルの地方学生がどこにいるでしょうか。あまりにもばかげた仮定です。

23区外の物件や千葉、埼玉まで選択肢に入れれば5万円から考えることはできます。また大学寮が設置してあったり、県人寮という選択肢もあるでしょう。

さらに言えば費用負担が重たい家庭が東京に進学するべきではないのです。地元進学や通学が難しい場合は京都などの関西や福岡などの都市を考えればよいでしょう。

お金はないが東京の私立大、しかも交通の便が良い築浅マンションに住んで通いたい、などというのはただの我儘でしかなく、そのために教育資金を貯蓄するのはあまりにも馬鹿げています。

相談すべきはファイナンシャルプランナーではない

教育費をどうやって捻出するかは重要な問題ですし、ある程度長いスパンで貯蓄をする必要があるのは間違いありません。

私自身、子供の親になって費用負担の重さを痛感していますし、今後を考えると頭が痛くなります。

しかし、そこで親が考える理想のゴールを一方的に決めて算段をし、教育費をひねり出すためためにファイナンシャルプランナーに相談することが果たして最善の手法でしょうか。

まずは進路を相談できる教育の専門家(担任や学校の進路担当者、塾、予備校の責任者など)に話をしながら、現実的な費用や学生支援機構の奨学金、大学ごとの奨学制度や免除制度など種々の選択肢を模索すべきでしょう。

同じ資格の取得や学問をより安価に学ぶことができる機関も複数存在しますが、そうしたことをファイナンシャルプランナーが提案できることは少ないでしょう。

安直な与太記事に不安になる人が増えないように、私たち教員もそうした相談に適切なアドバイスができるようにしっかりと情報収集をする必要があるのではないでしょうか。

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