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最近の若者の学力は低下していないし、あの頃の試験は難しくない


最近の若者の学力低下

「最近の若者」論、その中でも日本における大学受験が簡単になった、という話は中高年の飯のタネ、酒の肴としては最もありがたがられるものの一つです。

上記のポストを書いている「めいろま」こと谷本真由美氏はそうした中高年の一人でしょう。

彼女はITコンサルかつ著述家で、国際事情やITに関しては見識高い方ではありますが、中高年が陥りやすい若者の学力低下というドグマに陥っている人の一人でしょう。

学力低下で英語の要求レベルは下がっているか?

まずもって彼女の主張する「大学受験も英語の要求レベルは遥かに厳しかった」という言説に関して正しいかを検証します。

上のリンク先は英語専門塾のサイトですが、センター試験の時代の英語の読解は単語3000語、これを100分で行っていました。

ところが現行の共通テストの場合、倍の6000語を80分の時間で読むことになります。

単語の分量だけで文章の難度を絶対的に判断することは不可能ですが、この差は歴然としており、前者が難しいと言うのはかなり困難でしょう。

こうした傾向は記述試験でも同様で、30年前と比較して難関大学の入学試験の英語の単語数は軒並み2倍程度に増加しています。

また30年前においては多くの大学では和文英訳しか出題されていなかったのに対し、現代においては英作文が主流となっています。

こうした点からも英語の要求レベルは30年前と比較して明らかに上がっています。

ちなみにですが、これは他教科でも同様で、数学の場合は30年前と比較して共通テストの文章量は3~4倍に増加しています。

つまるところ、この30年で大学入試は難化しているのが実際のところとなります。

大学は増えているはず、という反論

これに対し「しかし大学は増加しているではないか」という反論が存在します。

確かに30年前の1990年における大学の設置数は約500校、2023年現在においては約800校まで増加しています。

90年代から2000年前後までは特に大学の新設が活発で、それらの多くは私立大学かついわゆる難関と呼ばれるほどの人気大学ではないものがほとんどです。

これだけ見れば確かに入学しやすい状況なのか、と錯覚するかもしれません。そこで18歳人口と大学進学率を比較してみます。

確かに18歳人口は1990年で約200万人、2023年では約110万人と半減しています。

しかし1990年の大学進学率は約30%、現在は60%、つまり大学に入学しようとしている数はそれほど減少しておらず、むしろ入学者数自体は増加しています。

以上から分かることは、確かに大学数は増加しているが新設大学の多くは人気のある大学ではなく、学力上位層の選択肢には入っていないということです。

一方で受験者の母数は大きく変化しておらず、その結果学力下位層が進学する先は確保できるようになったが、依然として難関大学においては高い学力無しには合格できないということになるでしょう。

あのころは大変だった、という老人の言葉

どの時代にもその時々の苦労や困難があります。

戦中、戦後、高度成長期、バブル、氷河期、ゆとり、そしてZと世代ごとにその大変さは異なりますし、それらをひとくくりにして論ずることは困難です。

私自身も就職超氷河期と言われる世代であり、ロストジェネレーションという扱いを社会で受けてきました。

同年代の中には学歴や能力に対して職歴や待遇がミスマッチの人がいるのも事実です。

だからといってほかの世代が楽だった、という思考に陥ってしまうのはあまりにも短絡的で進歩がないでしょう。

めいろま氏ほどの影響力はない、しがないnote執筆者の私であったとしてもバイアスをなるべく排除して、情報発信をしていきたいと再認識しました。

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