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「地域に学校が無くなる」という感情論

人口減少が日本中で進んでいます。

大都市には依然として人口が集まっていますが、地方では過疎化が加速しています。

自治体の統廃合や公共交通機関の再編が行われ、核になる都市に人口が集まってコンパクトシティ化が自然に進んでいくようです。

そんな中で、公立学校の廃校や統廃合も増えています。

大阪府の事例:府立泉鳥取高校

大阪府阪南市の府立泉鳥取高校は2025年3月に廃校となるようです。この件に関して反対や署名運動も起こっています。

大阪維新の改革の一つである、定員割れの高校を廃校対象とするという条例が橋下府政時代に決定し、その結果10年で17校が廃校となったとのことです。

詳しい廃校条件を見てみると

  1. 3年連続定員割れ(減少幅の少ない場合は考慮)

  2. 改善の見込み(地域の人口増加など)がない

この2点が該当する場合は、統廃合の対象となるようです。

今回の泉鳥取高校は、平成31年度がー15人、令和2年度がー1人、令和3年度がー80人と3年連続で定員を割っており、昨年度の定員割れは一学年160人の学校に対して半数しか入学していない状況です。

また、阪南市自体が大阪府の南部、和歌山に近い場所に位置し人口増が望みにくい場所であるため、統廃合の条件を満たしています。また、阪南市にはほかに高校が内容で、市唯一の高校が廃校となるようです。

では、そこに住む子供たちは進学する学校がなくなるのでしょうか。

ところがさすがは大阪府内です。近隣高校へは十分に通学できる距離にあります。

一番近い府立りんくう翔南高等学校へは自転車で15分の距離です。また電車を利用すれば、泉佐野市の高校まで1時間程度で行ける場所になります。

そうした立地でありながら、募集定員を半分し入学していないのは明らかに受験生から選ばれていない学校、とい言わざるを得ないでしょう。
(あと1年、判断を待っても良かったかな、とは思いますが)

山口県の事例:県立宇部西高校

山口県でも同様の事例があります。

宇部西高校も定員充足率が7割程度で推移しているようで、宇部市内に他の高校も複数存在し、また私立高校もあります。

また、こちらも大阪ほどではありませんが、宇部市は人口が減少してはいますが、決して山間部で交通が不便というわけではけっしてありません。

実際、近隣項までは車で10分の距離ですので、そう遠くはないでしょう。
(宇部西高校は他の高校と少し離れた位置にはあるようです)

こちらに関しても、教育の質の確保などを目的とした県教育委員会の再編計画にそれほど無理があるようには見えません。

定員割れが続く公立学校の統廃合と自治体の取り組みの格差

定員割れが続く公立学校にも存在意義がないわけではありません。

他の都市と断絶された地域などでは、半ば義務教育となった高校への通学がの距離圏を考慮する必要もあるでしょう。

一つの公立学校を設置する場合、施設維持や職員の確保など多額の税金を投入することになります。

逆に統廃合がなかなか進まない自治体もあります。

熊本県の場合、県北学区の高校の多くが定員割れを起こしており、しかもかなり0.5以下の極端な募集倍率のところも複数存在します。

山口県のように都市が連ならず、県庁所在地に一極集中する都市構造上、仕方ない部分もあるようですが、税金を垂れ流して維持しているのは間違いありません。

私立高校側のポジショントーク

倍率が低く定員割れを起こしている学校が税金で維持され、公務員である職員の給与も影響ないということに対し、私立学校勤務の私としては複雑な感情があります。

また、そうした低倍率=魅力がない、という学校が改革もせずに公立といううだけで生徒を定員の半分を確保することに対しての不満をあるでしょう。

だからこそ、統廃合に関して厳しい意見になるのかもしれません。

現実的な統廃合の議論が必要

税金というリソースは限られている以上、学校の維持運営という現実論に対し、「寂しくなる」、「子供を盗るな」といった感情論で否定するのはあまりにも幼稚です。

さらに言えば、事実として子供たちに選ばれていない学校のことを考えるよりも、地域の子供たちが選ぶ学校に通いやすい環境を構築するほうが税金の使い道としては適切のように感じます。

今後こうした議論はさらに進むでしょう。そのときに、より前向きな議論を期待したいところです。

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