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姫路獨協大学、薬学部の募集停止は薬学部の不人気か、それともそれ以外の要因か。


姫路獨協大学の薬学部募集停止

先日、姫路獨協大学の薬学部募集停止がニュースになりました。

本年度は募集定員60人に対して20人と三分の一しか学生が集まっておらず、経営的に厳しいという判断になったようです。

そもそも、この姫路獨協大学はここ数年経営難が不安視されていました。昨年度の1年生は60人に対して7人、2年生は39人、3年生は23人と定員割れが続いており、限界であったことは明らかでした。

かつては経営難の大学の逆転手段だった「薬学部」

薬学部の設置は2006年の薬剤師養成課程の6年制移行により大幅に基準が緩やかになり、多くの私立大学が設置を行うようになりました。

その当時は薬剤師の数が少なく、また養成機関が少ないこともあって設置をしただけで学生が集まる「ドル箱学部」として経営難に苦しむ大学の起死回生の一手として使われていました。

ところがそこから20年余りが経過し、薬剤師の数が飽和状態になりました。さらに、文科省は2025年度からの薬学部の新規設置を認めないなど風向きが変わりつつあります。

もはや単純に薬学部だけでは学生が集まらないという状況になったのは間違いないでしょう。

看護学部も…

ところが今回の姫路獨協大学においては、どうも薬学部の不人気傾向だけが原因ではないようです。

なぜならば看護学部もすでに数年に渡って定員割れが続いているからです。

看護師は現時点でも、そして今後もある程度需要が見込まれる職業であり、看護学部もまた経営難の私立大学の延命措置として設置されやすい学部の一つです。

昨今は看護系の専門学校、特に准看護師養成機関が廃止になりつつありますが、その層の多くは4年制の看護系大学にスライドしており決して不人気傾向の学部ではありません。

その看護でさえ定員割れをしているとなると、学校全体の不人気傾向があるのではないでしょうか。

公設民営大学、公立化断念

姫路獨協大学は獨協大学を運営する獨協学園が教育システムを提供し運営される「公私協力方式」で設置された公設民営大学のモデル校の一つです。

ところが経営定期には厳しい状況が2000年代から続いており、学部改組など複数の取り組みを行ってきましたが改善せずに、2021年度に姫路市に対し公立化を願い出ました。

しかし残念ながら市(審議会)から困難であるという判断を受け、断念しました。

全国的にはこの「公立化」によって志願倍率、定員充足率が回復する私立大学が増加する中でのこの決定は明らかに志願者動向に大きな影響を与えたのでしょう。

事実、姫路市も人口減少傾向ではあるといっても50万人を超える中核市であり、全国的に見ても学生が集まりにくい地域ではないはずです。もちろん大都市圏に近い地域であり、ストロー効果はあるにしてもです。

薬学部人気の終焉

姫路獨協大学の場合は複数の要因が重なっているとはいえ、薬学部人気が終わりに近づいている良い指標であるのは間違いないでしょう。

すでに過疎地域の薬学部は定員割れを起こし始めています。都市部の大学でもいわゆる伝統校や国試合格率の高い一部の大学以外からは志願者離れの傾向が見えつつあります。

この流れは複数の医療系学部に広がりつつあり、今後の動向を注視していきたいと思います。

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