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新潟県、教員採用定員割れの衝撃


新潟県の教員採用試験、定員割れ

教員採用試験の定員割れに関しては、もはや問題となって久しくなります。地方ならまだしも、大都市圏でも無視できない状況であるのは多くの人が認めるところでしょう。

とはいえ、その問題の渦中にあるのは中学校教員、ついで小学校教員であって、教科の専門性の高い高校においてはいまだ高い倍率が維持されているのが現状でした。

ところがついにその牙城が崩されようとしています。

新潟県の国語の中、高教員の募集がついに大幅に定員割れをした、ということです。

特に中学・高校の国語の応募状況が深刻で、55人の採用予定に対し、出願は27人にとどまった。

記事内にもあるように、国語の応募が定員の半数を下回っているというのです。おそらくこの状況であれば今後さらに辞退者が増加するのは目に見えており、現場では教員不足が深刻化するのは間違いないでしょう。

新潟県の募集の特徴

こうした状況となった原因の一つは新潟県の教員募集の特徴である可能性があります。新潟では中高教員の募集を「中学」、「高校」、「中高」の三種類に分けて募集を行っています。

現在、教員採用試験において明らかに不人気なのは言うまでもなく「中学」です。義務教育であり、生徒の背景が多種多様すぎること、学習指導よりも部活動指導や生徒指導などに傾注し過ぎていることなどがその理由です。

今回の新潟においては国語科教員の募集の内訳は以下の通りです。

中学配置予定:35人
高校配置予定:20人
中高志願者:12人
中学志願者:10人
高校志願者:5人

新潟県 令和7年度教員採用募集 出願状況

もちろん高校志願者も少ないのは間違いありませんが、中高での募集に二の足を踏んだ可能性は否定できないでしょう。

とはいえ55人募集で27人志願というのはさすがにそれを弁解できるほどの要因ではなく、明らかに教員という職業が避けられているという状況を表しているでしょう。

国語教員が避けられているのか?

ではこの現象が国語科において顕著である理由を考えてみます。

一般的に、国語の教員免許は取得しやすい部類に入ります。これは国語の取得が簡単である、という意味ではなく取得できる学部が多いということです。

人文系の学部の多くでは国語の教員免許のカリキュラムが準備されていますし、そうした学部を設置している大学も少なくないからです。

したがって極端な教員免許取得者の供給不足、需要過多の可能性が考えられます。

教科別の普通免許状授与件数(高等学校)(令和2年度)によると、国語の高校免許取得は5099件です。体育が9000件、外国語が6000件(英語以外を含む)、理科が5900件、地歴、公民、国語が5000件強となっています。この数値において、地歴と公民は免許が異なるためダブル取得者がどの程度かは不明ですが、地歴取得者の大半は公民を取得していると考えられます。
(体育に関しては少し事情が異なるため本稿においては例外扱いとします)

一方で3年間の授業の単位数(時間割上に存在する1週間当たりの授業コマ数)は普通科進学校の場合、3年間で国語は15~20単位、地歴公民科も同程度の単位数です。そしてこの単位数は基本的に人員配置の比率に比例します。つまり1学校当たりの国語科の教員数は社会科とほとんど変わらない人数であるということです。

したがって、国語科が極端に供給不足ではないため、国語科が教員志望者に避けられている傾向はあるでしょう。

その理由としては昨今重視される論文などの添削指導に関して国語科に負担が偏っていることは考えられますが、データが存在せず正確には不明です。

次は他教科へ

今回の新潟の事例は特定の地域、そして国語科という教科での定員割れです。しかし、今後他地域や他教科へ波及する可能性は極めて高いでしょう。特に今回わずかに定員割れをした英語科、そして数学や理科と広がることは考えられます。

現在、この状況を好転させる一手は存在せず、教職の魅力アップを錦の御旗にしたところで敗色濃厚なのは火を見るよりも明らかです。

ひとまずは今後の各地方、教科の採用試験倍率に注目していこうと思います。

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