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【コラム】中小企業の決算書入門

■決算書とは

今回は決算書「入門」と題して、決算書とはどんな書類なのか、作成する目的、さらに各書類の内容などを今一度確認していきます。

最初に、そもそも決算書とはどんな書類なのかを確認していきましょう。

決算書とは、1事業年度終了時に作成され、その事業年度における適正な利益などを計算して企業の経営成績や財務状態等を明らかにするための書類です。そして、それに基づき事業年度終了日(=決算日)の翌日から2か月以内税務申告をおこなうことが、内国法人に義務付けられています。

金融商品取引法上は財務諸表と呼ばれており、一般的な上場企業は、金融商品取引法に則して財務諸表を作成する義務があります。

他方で非上場の中小企業には、「中小企業の会計に関する指針」という金融庁等協力のもと日本税理士会連合会など関係4団体がつくった指針があります。そこには以下のように記されています。

「中小企業が、計算書類の作成に当たり、拠ることが望ましい会計処理や注記等を示すものである」また、「中小企業は、本指針に拠り計算書類を作成することが推奨される」とも書かれています。決算書作成前にぜひ一度目を通していただきたい指針です。

参考:日本税理士会連合会

決算書のなかで代表的な三つの書類をご紹介します。

貸借対照表(B/S)
損益計算書(P/L)
キャッシュフロー計算書(CS)

この三つを「財務三表」といいます。一部の例外を除き、非上場企業であっても貸借対照表と損益計算書を作成する義務があります。

キャッシュフロー計算書は、上場企業等の大企業しか作成・提出義務がありません。しかし、過去コラムで何度かお伝えしたように、資金の流れは経営者が必ず把握しておかなければならないものです。決算後、納税時にキャッシュが足りない!という事態は避けたいですよね。義務はなくとも作成するのが望ましいですし、少なくとも資金繰り表については中小企業であっても全ての企業が作成する事を強くおすすめいたします。

■何の為にある?

ひとつは、株主等の出資者や金融機関等の債権者への財政・経営状態の報告のため。法に則して企業を運営していること、そして資金に怪しい動きがないことを示すためです。なぜなら、企業の成長性や将来性に投資してくれているステークホルダーたちは、あなたの会社が今後も投資し続けるに値するかどうか、決算書を見て判断するのです。

また、金融機関による信用調査にも決算書が使われます。融資判断の際、担保となる資産が一定以上あるかどうか、反対に売掛金残高や借入金残高などの負債がどれだけあるのかは重要な判断材料になるためです。貸借対照表の内容が重視されるのは当然のことながら、損益計算書の利益額などもしっかりとチェックされます。

先ほど「中小企業の会計に関する指針」を紹介しました。この指針の適用に関するチェックリストというものが存在し、リストを活用した無担保融資商品等が多数の金融機関で取り扱われており、こちらも意識しておきたいポイントです。

さらに、決算書は企業分析に大変有用な書類です。決算書に書かれている数字から、その会社の現状が読み取れます。資産と負債のバランス、利益と費用から算出された収益、資金の動き・流れ、これら会社の状況がすべて数字に表れるのですから。各種決算書を活用し、今後の経営戦略に役立ててください。

■貸借対照表とは

ここからはそれぞれの書類の特徴を見ていきます。

まず貸借対照表とは、いま会社がどのように資金を調達しているのか、何をいくら持っているか等、つまり財政状況を表す書類で、左側に「資産の部」、右側に「負債の部」「純資産の部」が記載されています。バランスシートとも呼ばれます。経営の質ともいうべき収支バランスはとれているか、事業の継続性があるかどうか、この書類から読み取れるのです。

資産を大別すると、流動資産固定資産に分けられます。流動資産とは、1年以内に現金化できる資産を指します。

この「1年以内」というのは覚えておきましょう。会計用語で1年基準(ワン・イヤー・ルール)といい、1年以内に現金化できるものは流動資産、1年以内に支出するものが流動負債です。

流動資産のうち、現金に類する預金や現金そのもの、そして売掛金などを指す「当座資産」と呼ばれます。

固定資産は「有形固定資産」、「無形固定資産」、「投資その他の資産」に分けます。建物や営業車などのカタチあるものを有形、特許権やソフトウェアなどのカタチがないものを無形と考えれば、理解することはさほど難しくないと思います。

資産の種類
・流動資産(現金預金、売買目的有価証券など)
・固定資産(土地、建物、ソフトウェアなど)

負債の種類
・流動負債(短期借入金など)
・固定負債(長期借入金や退職給付引当金など)

純資産
・資本金や利益剰余金など

これら資産・負債・純資産の数字から読み取れることの例をあげますと、「流動比率」と呼ばれる短期的な支払能力や、「自己資本比率」と呼ばれる総資本に対する自己資本の割合などです。一般的に、負債より資産が多い企業、収支のバランスがとれている企業、純資産が順調に増えている企業は、経営が安定していて事業継続性がある会社であると判断されます。

■損益計算書とは

損益計算書は「一事業年度にいくら儲かったのか」などの業績をあらわす書類です。

記載されている「収益」と「費用」は、それぞれ以下のような種類に分けられ、これらを指標として企業の経営成績が判断されます。

収益の種類
・売上高(本業で得た収益)
・営業外収益(本業以外の収益)
・特別収益(その期だけ発生する特別な収益)

費用の種類
・売上原価(本業の収益を得るために費やした費用)
・販売費及び一般管理費(製品販売に費やした費用と企業の維持に使った費用)
・特別損失(その期だけ発生する特別な損失)
・法人税等(法人税、法人住民税など) 

会社の業績は、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期純利益・当期純利益の5つの利益に分けて段階的にあらわれており、それぞれの利益が別々の意味を持ちます。

利益の種類
・売上総利益(売上高から売上原価を差し引いたもの。粗利)
・営業利益(本業によって得た利益)
・経常利益(営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引いたもの。本業以外も含めた経常的な利益)
・税引前当期純利益(経常利益に特別収益を足し、特別損失を引いたもの)
・当期純利益(税引前当期純利益から法人税などを引いたもの。手元に残る最終的な利益)

本業で販売している商品やサービスによる利益を示す「営業利益」と、通常の事業活動による損益が確認できて会社の実情を示す「経常利益」は、業績を判断するうえでとくに重要な項目です。

しかし、損益計算書に記載されているのはあくまでも今期の数字です。会社を設立してからこれまでの全てが表されている貸借対照表と併せて会社の現状を正しくとらえる事が重要です。

■キャッシュフロー計算書、資金繰り表

キャッシュフロー計算書とは、現金がいくら入ってきていくら流出していったのかを示す書類です。営業活動によるキャッシュフロー、投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローの3種類があります。これら3つの構成比や内訳からは、企業の活動状況だけでなく経営者が何に投資し、どんな戦略で企業を成長させようとしているかが推察できます。

キャッシュフローの種類
・営業活動によるキャッシュフロー
・投資活動によるキャッシュフロー
・財務活動によるキャッシュフロー

もっとも重要な項目は、本業でどれだけ儲かっているのかがわかる「営業活動によるキャッシュフロー」です。本業が赤字続きだと将来的に資金繰りが厳しくなる可能性が高いです。すぐ対策を講じる必要があります。

また、キャッシュフロー計算書を読むときは、投資活動・財務活動・営業活動が適切かどうか、経営戦略と整合性がとれているかという点にも着目してください。

資金繰り表はその名のとおり実際の資金の流れを表します。フォロー期間は自由に設定できますが、可能であれば3年先までの予測値を入れて実績と比べることをおすすめします。

キャッシュをベースに経営状況を把握することによって、資金不足などの危機を回避し経営を安定させ、企業が進むべき方向性を定めることができます。中長期的にどこに向かっていくかがわかっていると、経営者として選ぶべき道が見えやすくなります。つまり、経営判断がしやすくなるのです。社長の皆さん、「資金繰り表は3年分」と頭に留めていただければと思います。

キャッシュフロー計算書と資金繰り表の違いは、キャッシュフロー計算書からは実績値が、資金繰り表からは未来の予測値が把握できることです。

■まとめ

いかがでしたか。決算書への理解を少しでも深めていただけたなら幸いです。

決算書は、企業の通信簿ともいわれています。なぜなら通信簿のように、自社の得意なことと不得意なことが、ハッキリと数字に表れるのです。そして大事なのは、数字が出たあと。結果に一喜一憂して終わりにはしないでください。決算書が示してくれた自社の改善点や伸びしろを、次期経営に活かしていきましょう。

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