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みんなの読書会~BOOK OF THE YEAR 2019~【#イベントレポ】


こんにちは。ライターの三橋です。今回は、「\みんなが選ぶ今年の一冊/ ダ・ヴィンチ関口編集長と読書会。」に参加してきました!

課題本のない読書会

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普段の読書会とは異なり、課題本が決まっていない今回の読書会。このちょっと変わった会の発端になったのは、雑誌『ダ・ヴィンチ』で毎年年末に組まれる特集「BOOK OF THE YEAR」でした。
『ダ・ヴィンチ』は、小説やコミックの新刊情報や、著者へのインタビューなど、本にまつわる情報が盛りだくさんの雑誌で、読者や書店員、文筆家の投票によって「その年一番良かった本」を決める人気企画が「BOOK OF THE YEAR」特集です。
ダ・ヴィンチの一年の締めくくりとも言えるこの特集のように、“みんなの読書会”の今年の締めくくりとして、参加者それぞれの「今年一番良かった本」を紹介したら面白いのでは?というフラッシュアイディアから始まったという今回の読書会。なんとゲストとしてダ・ヴィンチ編集部の方々が登壇されるという嬉しい会でもあり、本選びのプロの視点を知ることができる、と参加者のみなさんも開始前からわくわくされていました。
ここからは、そんな本好きにはたまらない読書会の内容をレポートしていきます。

第一部 “みんなが選ぶ今年の一冊”を紹介しあおう

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第一部ではグループに分かれて、それぞれが選ぶ「今年の一冊」を発表しあいました。
各グループに1人ずつダ・ヴィンチ編集部の方が入られるということで、最初のうちはちょっと緊張されていた参加者の方々でしたが、自分が選んだ「今年の一冊」の紹介になるとその緊張も忘れ、その本の好きなところ、おすすめしたいポイントを熱心に語っていました。
私のいたグループでは、7名中4名もの方がビジネス書を紹介していたのですが、同じジャンルでもそれぞれ全く異なる毛色の本を取り上げられており、刺激を受け合える紹介となっていました。また、好きだと感じる観点も人によって様々で、「このジャンルとしては珍しいサイズの文字やレイアウトで書かれている」、「筆者の意外な一面が見えて面白い」など次々と新しい本の見方を知ることができ、「普段自分からは手に取らないような本の魅力に気づくことができた」と、みなさん大いに楽しまれていました。

第二部 『ダ・ヴィンチ』編集部のみなさんによるスペシャルトーク

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第二部では、編集長の関口さんが司会者となり、「BOOK OF THE YEAR」特集の裏話やダ・ヴィンチ編集部のみなさんにとっての「今年の一冊」を教えてくれました。

まずは、「BOOK OF THE YEAR」特集の裏話からご紹介します。

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◆「BOOK OF THE YEAR」特集裏話

関口編集長:
『ダ・ヴィンチ』という雑誌は1994年から出版していまして、今年25周年を迎えたところなんですけど、毎年12月発売号で「BOOK OF THE YEAR」という特集をやっています。
年末に1年を振り返ってどんな本があったかというのをランキング形式でご紹介しているのですが、テレビや新聞でやっている売上のランキングとはちょっと違っていて、「本好きがおすすめする本」のランキングということで始めた特集企画です。
本日みなさんが第一部でやったように、「この本が面白かった」と紹介していく感覚でダ・ヴィンチの読者や書店員の方々におすすめの本をあげてもらい、ランキングを作っています。なので、よく見かける売上ランキングとも、ダ・ヴィンチの編集部員がおすすめしているものとも、ちょっと違うランキングになっています。読者投票を中心に選んでいるので、ここにいる我々ダ・ヴィンチ編集部が侃侃諤諤(かんかんがくがく)選んだわけではないんです。

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我々はというと、粛々と票を集計しています。2018年の10月から2019年の9月末までが集計期間なのですが、その期間外に発売された本を投票してくる方が結構いてですね……。「すごい熱の入った1票なんだけど、それって多分去年発売だよね」とか「今年読んですごく良かったとのことだけれど、この本は10月に入ってから発売された新刊だよね」とか言いながら、ここにいるみんなで静かに票を数えていっています。

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「BOOK OF THE YEAR」の裏には、ダ・ヴィンチ編集部のみなさんの地道な作業が隠されていたんですね……。「特にこれを推したい!」という編集部員のみなさんの私見も踏まえた結果だと思っていたので、もくもくと集計のみを行っているというのは意外でした。
「BOOK OF THE YEAR」には反映されない代わりに、ダ・ヴィンチ編集部のみなさんのおすすめの本は毎号巻頭に掲載される「今月のプラチナ本」として紹介されています。編集部員のみなさんが「今月のイチ推し!」と思う本をプレゼンし合い、見事勝ち残った本が紹介されるこのコーナー。今回のイベントでは、そんなおすすめの本の中でも2019年で一番よかったと思う「私の今年のプラチナ本」を、登壇した編集部の皆さんにご紹介してもらいました。


◆西條さんのおすすめ本/岸政彦『図書室』

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普段は「つらい話」をおすすめすることが多いという西條さんが紹介してくれたのは、つらい話というわけではないが、どこかさみしさも漂う、という岸政彦の『図書室』。この本は、2019年8月発売号の「今月のプラチナ本」に加え、「今年のプラチナ本」にも選ばれました。
50代の女性が、ある日図書室で出会った男の子との思い出を回想しながら語っていくこの物語は、いわゆるエンタメ小説とは異なり、あらすじをまとめにくく、書評も書く人によってバラバラ。ダ・ヴィンチ編集部のみなさんも「今月のプラチナ本」、そして「今年のプラチナ本」の2回分書評を書くのに苦労されたのだとか。
すぐそこで行われているかのような臨場感のある会話の表現と、語り手の思い出の追体験を通して「自分にもそんなことがあったな」という懐かしい気持ちを呼び覚ましてくれる点が、岸さんのすごいところであり、おすすめのポイントなのだそう。

◆三村さんのおすすめ本/恒川光太郎『白昼夢の森の少女』

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王道の小説を中心に持参し、「今月のプラチナ本」の対象に選ばれることも多いという三村さんが紹介してくれたのは、恒川光太郎『白昼夢の森の少女』。この本は、『夜市』で日本ホラー小説大賞を受賞しデビューした恒川さんが描く、ダークファンタジーの短編小説集です。ホラー小説というと背筋が凍る物語のように思われますが、恒川作品は幻想的でノスタルジックな小説が多く、三村さんはその世界観や物語の世界へさりげなく連れて行ってくれる感じが好きなのだそう。
表題作の『白昼夢の森の少女』は、朝起きたら植物の一部になっていた少女のその後を描いた作品。異世界ではあるけども、「私だったらどうするか」を考えさせられる作品で、人間の行動や考えは環境が違っても共有できる普遍的なものだと体験させてくれる点もよいところなのだとか。

◆前田さんのおすすめ本/阿久井真『青のオーケストラ』

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この日唯一コミックを持参した前田さんが紹介してくれたのは、Webコミックサイト「裏サンデー」にて連載中の阿久井真『青のオーケストラ』。
この作品は、とある理由でバイオリンを弾くことを辞めた天才バイオリニストの主人公が、一人の少女との出会いをきっかけに演奏を再開し、高校入学を機に入部したオーケストラ部の部員との交流を通して成長していく青春漫画です。
ソロとオーケストラとの違いに悩みながらも、次第にバイオリンに心を開き始める主人公の成長物語はもちろん、登場人物たちの奏でる音色がリアルに伝わり、「音楽とは言葉のないコミュニケーションなのだ」と実感させてくれる描写がおすすめポイントなのだそう。

◆有田さんのおすすめ本/彩瀬まる『珠玉』 

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めげることなく、おすすめの本は何度でも「今月のプラチナ本」の選考会議に推薦するという有田さんのイチオシは、彩瀬まる『珠玉』。
主人公は、国民的歌姫だった美しい祖母へのコンプレックスをもつファッションデザイナーの歩。低迷していた自身のブランドの建て直しに取り組む彼女が、祖母の黒真珠と彼女のガラス玉との不思議な交流をとおして、本当の美しさ、強さについて考え、成長していく姿を描いたのがこの物語です。
「歩の生き方を追っていくなかで、自分自身の人生についても考えていることに気づきました」、と有田さん。「孤独のなかで『自分にひっかかるもの』を見つけ、それにどうやって向き合っていくかをじっくり考えることができる」という読書の素晴らしさを実感できた本なのだそうです。有田さんとしては直木賞を受賞して欲しいと思った作品の1つでもあるのだとか。

◆関口編集長のおすすめ本/村上慧『家をせおって歩く かんぜん版』

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「自分の好きな本の中でも、特にダ・ヴィンチ編集部として普段選んでいるものから振れ幅の大きいものを選びました」と関口さんが紹介してくれたのは、村上慧『家をせおって歩く かんぜん版』。
小さな家をかぶった人の表紙絵から、「どんなファンタジックな本なんだろう」と思わせるこの本ですが、実は本当に発泡スチロール製の家をせおって旅している作者の体験記。家にトイレやシャワーがなく公衆施設を利用するため、間取図が町全体になっていたり、普通にホテルに泊まっていたら気づかないような海外の情報が書いてあったりと、ちょっと変わった生活者の視点を楽しめます。
「家ってなんだっけ?」という概念から考えさせてくる斬新な内容はもちろんのこと、ただただ作者の生活と、そこからわかったことだけが書かれており、一般的に本に書かれがちなアドバイスや主張が一切含まれていないところがおすすめポイントなのだそう。

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みなさん、自分のお気に入りの本を手に、身振り手振りを大きくしながら詳細に魅力を並べたり、どんどん早口になっていったりと、ダ・ヴィンチ編集者ならではの知見とこだわり全開でおすすめ本について語ってくださりました。さながら毎月の「プラチナ本」編集会議を垣間見させてもらっているようで、その鍛えられたプレゼン力の高さに、どの本も読んでみたくなります。
イベントを通して、誌面とは異なるかたちで編集部のみなさんの本への熱い想いを感じ取ることができ、読書欲がさらに高まる素敵な機会となりました。

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本好きの方々から、これまで気づかなかった新しい視点や踏み入れたことのないジャンルの情報をもらえた今回の読書会。ここに参加しなければ知ることさえなかったような本との出合いもたくさんあり、終始驚きとわくわくが止まりませんでした。本好き、というだけで一体感があり、すぐにとけこむことができるので、初めての方でも楽しめること間違いなしです。
大好きな本の魅力を語りに、そして新しい本との出合いを求めて、みなさんもぜひ読書会に参加してみてください!


カルチャーライブ!今後のお知らせ

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【亀山郁夫先生と『カラマーゾフの兄弟』「100分de名著」放送記念の読書会】
●日時:2月28日(金)19:30~21:30
●受講料:2000円+税
●詳細・お申し込みはこちら

ドストエフスキー研究の第一人者で、NHK Eテレ「100分de 名著」『カラマーゾフの兄弟』回の講師である、名古屋外国語大学学長の亀山郁夫先生をゲストにお招きし、人生の根本的な問題を読書会を通して、みんなで考えます。
亀山先生に加え、もう1名スペシャルゲストを予定しています。当日をお楽しみに!

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【中田敦彦のYouTube大学〉で話題沸騰!名著『7つの習慣』で「読書会」しよう!】
●日時:3月19日(木)19:30~21:30
●受講料:2000円+税
●詳細・お申し込みはこちら

〈中田敦彦のYouTube大学〉で取り上げるビジネス書が軒並みベストセラーになっています!
その中でもとくに話題沸騰となっている『7つの習慣』を課題本として読書会を実施します。会の前半では〈中田敦彦のYouTube大学〉の『7つの習慣』動画を視聴し、後半、5人グループに分かれてディスカッションを行います。

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みなさまのご受講をお待ちしております。

最後に、ダ・ヴィンチ編集部の皆さま、参加してくださったみなさま、このレポートを読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました!!

撮影・編集/小川利奈子 文/三橋七緒
2020.2.18 作成

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