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『日本浮世絵博物館浮世絵名品100選』には「ほう」が詰まっています

世界最大・最高レベルの浮世絵コレクション
9月10日発売の『日本浮世絵博物館浮世絵名品100選』。B4サイズ・178ページ、上製本(いわゆるハードカバー)の浮世絵集です。

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マットなカバーに金箔の書名が映えます。もちろん(?)自立する分厚さ。長野県松本市にある日本浮世絵博物館が所蔵する浮世絵版画のなかから、厳選した100点を、全作品撮り下ろしの高解像度データで掲載しています。

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全4章構成、上の写真は第一章「美―美しい人を描く」の扉ページ(最初のページ)。美人画をメインにした作品を掲載しています。
第二章「芸―歌舞伎と芸能」では、役者絵や芝居の絵を中心に、第三章「景―名所と四季風俗」では名所絵や、江戸庶民の暮らしを切り取った風俗画を掲載。第四章「奇―物語と奇想」では、絵師の豊かな発想力で描かれた空想や怪異の世界を紹介しています。各章の作品解説は、藤澤紫先生(國學院大學教授)、藤澤茜先生(神奈川大学准教授)、桑山童奈先生(神奈川県立歴史博物館学芸員)、加藤陽介先生(練馬区立美術館学芸員)にご執筆頂きました。

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B4サイズならではの原寸大掲載や、読み応えのあるコラムも充実。

一作品に「1ほう」
さて、ここからは、編集ちょっとウラ話。
解説の執筆にあたり、執筆陣の先生方と共に作品の実見に行く機会がありました。松本にある日本浮世絵博物館までは、新宿から特急あずさで約2時間半。電車に揺られながら、本書の責任編集もつとめる藤澤紫先生から、本書の作品解説の方針の提案がありました。
藤澤先生「今回の解説では1作品につき最低ひとつの『ほう』を入れたいと思います。」
一同「ほう・・・?(どういうことでしょうか)」
藤澤先生「読んだ方が、タメになる知識ひとつを『1ほう』と数えます。作品によっては『2ほう』『3ほう』あってもよいですが、少なくても『1ほう』は欲しいと思います。」
一同「ほう・・・!(なるほど)」
かくして一作品につき「1ほう」、つまり「100ほう」が詰まった書籍の誕生に至りました。
あ、会話形式のため〈一同〉とさせて頂きましたが、「ほう」を何度も連呼していたのは担当編集のみで、先生方は冷静に本書の方針を話し合われていたことも断っておきます。

いざ、作品実見!担当編集のメモ公開
日本浮世絵博物館の収蔵庫で、作品の実見を行いました。それぞれの担当する章の作品を仔細に調査します。担当編集も、作品に触れないよう細心の注意を払いながらその場に同席しました。最前線で活躍する研究者の方々が、世界最大級のコレクションを誇る日本浮世絵博物館の所蔵庫で作品を見る、のを見る、という超貴重なチャンス。先生同士の会話や、日本浮世絵博物館学芸員の五味あずさ先生とのやりとり、独り言でさえも聞き漏らすまいと耳をそばだてました。そして、編集にいかせそうな情報はすぐさまメモ。

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当時のメモをチラ見せ。白抜きに彫られた桜の花びらの形状や雪との比較、所蔵印(所有者がコレクションに押した印)の有無、女性が持つ団扇に書かれた役者の名前も書き込んであります。もちろんこちらは編集者の私的なメモですので、個人的な感想や、気になったキーワードなども混じっています。執筆者の先生方が、専門的な知見に基づく調査をされていたのは、言うまでもありません。

浮世絵版画は、技法上、大量生産が可能であるため、同じ作品が複数残されています。だからと言ってすべての作品が同じというわけではありません。摺(す)られた時期、保存状態によって色合いや質感が異なり、1枚として同じものがないのです。本書では、収録された100点の、題材や構図の説明はもちろん、日本浮世絵博物館所蔵品ならではの優れた点もしっかり解説しています。控えめに一作品「1ほう」と申し上げましたが、実際読み出すと「ほう」が止まらない1冊になりました。
ぜひ秋の夜長に、「ほう」体験を楽しんでみてください!

書誌情報
『日本浮世絵博物館浮世絵名品100選』
日本浮世絵博物館 監修
定価:本体8000円+税
小学館公式サイトの情報ページはコチラ








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