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かもめ食堂からのエール


わたしは子どものころ感情を表に出すことがあまり得意ではありませんでした。(今もそれほど上手く表現できているわけではないですが)

そんなわたしだからこそ、心にささる映画があります。

それは「かもめ食堂」です。

なんとも、のどかな題だと思いませんか。

ついつい、寂れた港町にぽつんとある小さな定食屋さんを思い浮かべてしまいます。


しかし、場所は日本の寂れた港町などではなくて、海を渡ってお国はフィンランド。

ムーミンとサウナと湖と森の国です。

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そんなどこかのんびりとしたイメージのあるお国のフィンランド人に、なかなか受け入れてもらえない食堂を切り盛りする主人公と、
それぞれ思いを抱き具体的な目的をもたず、まるで流れ着いたかのような二人の女性旅行客との物語です。


登場人物は皆少しずつ問題を抱えているのですが、大胆に相手に踏み込むのではなく、のんびりと一緒に過ごしていくことで心を通わせて問題を解決していきます。


きっと本当には問題は解決していないのでしょうが、ただおしゃべりすること、美味しいものを食べることは、これ以上ない癒しでしょう。


不器用で、自分の思いを上手に伝えられず、誤解をさせてしまう。


わたしが保育園児だったころ、園長先生から「ウソでもいいから、笑いなさい」と忠告をうけました。

この忠告は、残念ながら小学生時代にも担任から受けます。


おどろきました。だって、わたしは十分に楽しんでいて、笑っていると思っていたのですから。

そして困ったことに、わたしはこれ以上、どうしたら良いのかもわからなかったのです。

いま思えば、友達との関係も良好でしたし、それもまたわたしの個性ととらえて差し支えないものだったと思います。

それでも、皆と同じ反応を示さないわたしは先生たちの目にはとても奇異に見え心配し、なんとか今後のわたしのために教育せねばと思ったのでしょう。


あの頃にこの、かもめ食堂の女性たちが側にいてくれたら、どれほど心強かったでしょうか。


人を他者と認めて、理解できないことがあっても存在を認めてよりそい合う。

弱い人も、不器用な人も、失敗をした人でも、たとえ今理解し合えない部分があったとしても、まるっとひっくるめて認め合える。

相手を無理に変えようとしなくても、そんなものだと受け入れてしまえば、一緒に生きていける。
時間をかければ、おのずと理解し合える日がくることもある。

そんなエールをもらえる映画はなかなか出会えないと思います。


祥雲(しょううん)

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