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会計事務所に勤めて10ヶ月の感想

新卒から15年ほど勤めた銀行を辞め、R4年11月から会計事務所で働いています。

税理士試験は簿・財・消を取得済で、R5年度は相続税を受験し結果待ちという状況ですが、試験も終わり一息ついたので、会計事務所で10ヶ月ほど働いた感想について書きたいと思います。


職場の雰囲気

・いわゆる「町の会計事務所」です。職員はパートの方含め約15名。顧客の大部分が年商数千万円から1桁億円。一番大きな先で50億円ほど。年イチの確定申告個人客も多数

・研修なし。「基本的に過去資料が研修資料」と言われた。入所初日から法人決算の申告をとりあえずやってみてと言われ、わからない点を都度前任に聞いて進める。

・所長は実務やらない知らない。びっくりするくらい知らない。個人の確定申告時期にめっちゃ感じた。
自分「これこれこうだからこうなりました」
所長「ふーん、今はこうなんだね。」
みたいなやり取りが。顧客説明前に所長のチェックを一応受けているが、税務調整など中身をほとんど見ていない。過去との比較だけ。

・職員同士の関係が希薄、業務中に雑談がほぼない。静まり返っている。昼食時も会話が無い、黙々と食べている。オフィシャルな飲み会は一度もない。但し、聞けば皆教えてくれる。普通に会話はできる。厄介な番頭、お局的な人もいない。

・資格持ち職員はゼロ。税理士試験勉強をしている人が自分含め2名。他の方は仕事と割り切って働いている印象。

・置いてある税務関係の本が古すぎる。平成初期から20年くらいまでの本が中心。法人税と所得税の申告の手引きのみは毎年新しいものを購入しているが。

・所長は穏やか、この10ヶ月一度も詰められたことが無い(銀行だとあり得ない)。基本的に顧客対応から申告まで担当者任せ。良く言えば担当者の意見を尊重。要所要所で報告だけすれば良い。我が事務所のストロングポイントか。

・古いお客さんが多いが、作業対比報酬が高い印象(コスパ良い)。
但し、デジタル化は進んでおらず紙の資料多い。逆に、なぜかわからないが、新しい顧客ほど手数を要する印象。メンドイ。

・ダブルチェック体制が無い。これが一番怖い。申告前に所長のチェックは受けるが、細かい点は一切見ていないので実質シングルチェック(?)。電子申告も各担当者が行う。当初は本当に怖かったが、今は慣れた(マヒ)。

・前例踏襲文化。効率化しようと思っていない。ほとんどの人が「前任がこうやっていたから同じようにやっている」と言う人が多い。「やり方変えたら顧問先にも迷惑が掛かる」と言って、顧客とコミュニケーションを取ろうとしない。この点はいつももったいないなぁと思う。


10ヶ月働いて感じたこと

会計事務所において体系的な研修は難しい

・法人税の申告に関しては税務調整などルールがほとんど固まっているので体系的な研修が可能だと思う。
・が、そこに至る会計データを固める工程は、顧客によって特殊な処理があったりもするので一概にこうすべきということが言えない。もらわなければならない資料も様々。過去の資料が教材というのも納得できる。
・措置法の規定の当てはめ(給与や試験研究費に関する特別控除など)も顧客によって異なる。顧客によって集計項目が違ったりして困る。
・銀行の場合は研修ががっちりしていたが、それはルールもがっちりしていて、基本的に例外を許さず、顧客に銀行ルールに従ってもらうという世界だったからだと思う。


税法は最初に消費税を選んで良かった

・仕訳入力のときにマストな知識。課税区分はネットにたくさんの情報が落ちているが、基本を知っていた方が理解は早い。
・また、税額は会計ソフトが自動で出してくれるが、検証するには消費税法の知識が必要であり、税法の1科目めはやはり消費税法をやっていて良かったと思った。


社保の知識は必須

・社保が理解するのに一番苦労した。当月徴収とか翌月徴収とか、いつ切り替わるのか、徴収額の計算方法、納期、わからないことだらけだった。会計処理も様々(法定福利費のマイナスとか)。
・社保関係はお客さんにもしばしば聞かれる、即答できない。
・基本的なことを理解していないと預り金残高とか合っているかどうかも判断できない。


実務がわかる中間管理職が欲しい

・所長が最終チェックを一応するものの、細かい点は一切チェックしていない。そのため、しっかり実務者の目線でダブルチェックしてくれる中間管理職的な人が欲しい。きちんとチェックを受けることで担当者もレベルアップする。
・相談相手になってくれて且つ実務がわかっている人が本当に有り難い。ただ、そんな人は高い給与を払わないと来てくれないんだろうな。


責任感が重要

・ややこしい案件は所長に相談するものの、基本的に各判断は職員にお任せという事務所である。
・言い換えれば何かあっても所長がリスク取ってくれる有難い環境ということもできる。職員は守られている。
・しかし、税理士を目指す人間としては、自分が責任を負うんだという気概が必要だと思っている。考え抜いて、調べつくして、これで間違いないって確信して進めないといけないと思う。仮に独立したら自分しかいないのだから。


歴史はあるが、諸先輩方の知識が引き継がれていないのが残念

・人が育っても辞めていく。知識や経験を持ったスタッフが辞めていくため財産が残らない。
・もし自分が所長の立場であれば、このような状況で職員に研修コストを掛けるかどうか?どうせいなくなるから掛けなくていいやと思ってしまうかもしれないし、新しい本を買ったりなど職員に対してお金を掛けなくても良いと思ってしまうかもしれない。
・知識や人材が蓄積していく組織を作らなければならないが、答えは自分も持っていない。


1つの経営スタイル

・所長はほとんどチェックせず、職員にお任せ、リスク管理としては普通あり得ないが、これはある意味割り切った経営方針と言えるかもしれない。
・リスクが顕在化するのは基本的に税務調査の時などだろう。そしてそれが顕在化したらどれだけのダメージを負うか?リスクの内容や顧客規模次第かもしれないが、小規模な先であればそれほど問題にならないのかもしれない。
・そういった僅少(?)なリスクに対し、1つ1つ反応し、時間と手間を掛け完璧を求めるよりは、何か起きたら対応する、この方がはるかに効率の良いかやり方なのかもしれない。
・保守的で石橋を叩いて渡る銀行員上がりにはできない経営である。


自分自身が成長できるかわからないという葛藤

・所長含めロールモデルがおらず、勉強会もなく、職員同士で議論したりすることも無い環境。果たしてここに居て成長できるのだろうかと思うこともある。
・一方で、誰かに頼っていいのか?という思いもある。様々な書籍や有料情報サービスが世の中にはある。お金は掛かるが自己投資だと思って必要だと思うものはどんどん買って行こうと思う。
・とはいえ本には載っていない、現場を経験した人間にしかわからない実務に関する知見もたくさんあるんだろうと思う。そしてそういった人たちが多くいる環境に身を置いた方が成長は早いんだろうなぁという葛藤も。。


しかしまだ10ヶ月。覚えることだらけ。よちよち歩き。
日々勉強します。税理士試験も。
まとまりがありませんが、以上です。

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