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読書ログ 『DATA is BOSS 収益が上がり続けるデータドリブン経営入門』

 自身もデータサイエンティストとして活躍した、一休の社長の本。自分がデータアナリストとして感じていたことの全てを言語化しているような本。この本のおかげで自分が仕事で得た学びが揺るぎないものになった気がしていて、出会えたことに感謝。「データドリブン」というワードにとどまらず、これからの時代でビジネス戦略を練っていく上で重要なことが書いてあるので、万人におすすめ。

データドリブン経営がなぜかできない理由

 答えは、リーダーシップの欠如。いくらデータや技術があっても、「どんな問題を解きたい」「その答えを使ってどう成果をあげたい」という点を、ビジネスサイドがしっかり手綱を握ってDirectionすることが欠かせない

データドリブン経営の3ステップ

  • ①(データを使って改善できる)ビジネス課題を「見つける」

  • ②データ分析課題を「解く」

  • ③データ分析結果をビジネスの意思決定や交渉に「役立てる」

ビジネス側が一気通貫してマネジメントするのが重要。でないとビジネスの価値創出まで推進しきれない。ただ、たまにアナリストにもスーパーマンがいて課題発見から業績につなげるまでをできてしまう人がいる(★自分の同僚のスーパー中国人がまさにそうだった)

「データドリブン化する」とは、顧客行動データ、データに基づく顧客理解、そして「誰に何をするか」という事業戦略が有機的に連携することです。

本文35ページ

★素晴らしい言語化。まず顧客「行動」データがないと話にならない。結果データ(例:POS売上データ)があってもInsightがわからないので、「誰に何をするか」がわからず無意味。あと③の「役立てる」がまさに「誰に何をするか」。ここまでやらないとビジネス上の価値が生まれず無意味(自分の会社ではよく”Value creation"と言っている)

★以下、アナリストとしての体感。

あるあるその1。「①の解像度が粗いままなんとなく”これ解いて”と営業が発注し、アナリストがなんとなく合意して受けてしまう」→何のためにやってるかわからず迷宮入りするし、何度も手戻りが発生し最悪。「営業は意外と思いつきで発注してくる」という点を肝に銘じ、「解きたい課題は何か」「そのためのデータポイントは本当にこれか」「どういう結果とともにどういう交渉をし何を勝ち取るイメージか」までクリアにしてから動かないと、筋が悪い。
→M社でPdMの人による「なぜPdMはNoとばかりいうのか」という勉強会を受けた時と同じ感覚。

あるあるその2。「②までやったのに③のActionが満足に取られず、フェードアウトしていく」→今までの苦労が水の泡になるようでめちゃめちゃ悲しい。③の段階で踏ん張ってActionを取ることもそうだが、解き始める時点で③のActionを握っておくこと、Actionせずにはいられないくらいの納得感を営業と醸成しておくことがかなり重要。Actionにおいては自分でプレゼン資料作って自分で動かしにいくくらいの気概が必要(営業はなんだかんだ忙しく後回しにされがちなので)

あるあるその3。データ分析自体が目的になっている。例えば、「こんな複雑な分析をウチの会社はできるんですよ!」と得意先にアピールするために分析が使われているパターン。この場合、分析の先にActionが見据えられていないため、営業のアピールの道具にいいように使われて終わってしまう

★今の会社は、データはまあまあ揃ってる、データドリブンの風土もかなりできている(Sales自身もData driven sellingを是としている)。顧客行動データを使ってこういう顧客理解ができるはずだ、という勘所もかなりある。一方で、「このデータを元にこういう結果が出たらこういうセリングができてこれくらい儲かるから、ここに根拠が欲しい」くらいまでシナリオを立て、逆算的に分析内容を決めるシナリオ力が弱い。ここが大雑把で「なんとなくこういうデータ欲しい」くらいになっているので、以下のようなことが起きている

  • 分析したけど「なんか違う」「これだと使えない」

  • 分析して資料に載せたけど「先方には特に刺さりませんでした」で終わり

  • 分析結果を使った具体的なActionが考えられてないので、「Actionに繋げるのは難しそうですね」と分析後に言われてしまう

  • 分析して先方にもいいねと言われたけど、それで終わり。ビジネス上の価値は生まれていない(何を交渉・合意するの?)

戦略の定義

  • 戦略とは「誰に何をするか」。そのための顧客行動データ分析

  • 「誰に」は利用金額、利用目的、利用商品、お財布の許容度、デモグラなど考えうるすべての切り口で見るべき

  • 例1「誰に最も喜ばれているのか?」:超ヘビーユーザーにインタビューしたら、”高級宿を厳選して表示してくれるのがありがたい”と言われた。「宿が多い方が喜ばれる」という仮説が覆された

  • 例2「何をしたら喜ばれるのか?」:ターゲット(誰)がわかれば、施策はどんどん頭に浮かんでくる(浮かんでこないなら、誰の解像度が低い)。仕入れ(Distribution)、売り場(Shelf)、価格(Price)、プロモーション(Marchandising)の改善に繋げていく。

データドリブンの失敗例

①データの理解が不十分

  • CVRが下がっている=サイトが使いにくくなっていると思い込み、サイト改善を検討し始める

  • ★自分が自社で作ったフレームワークとまさに関係している。「Good or Bad evaluation」→「Find key opportunities」→「Issue identification」→「How to Improve」が王道。この例は、key opportunityは”Low CVR"とわかったものの、Issue identificationが不十分。「なぜCVRが下がっているか」の考察が浅い。Deep diveして良質な仮説を立てにいくべき。

  • 例えば、「どのチャネルのCVRが下がっている?」「下がっているのはどの顧客?(トップページ?商品ページ?)」「どのプロセスで離脱している?」などに因数分解することで、Issueを特定できる

②些末なテーマにフォーカスしている

  • 例えば、ボタンの位置が左右でどっちがCVRが高いか、など

  • ★自社ではSize of prize(SoP)と言っているが、得られる果実が小さいことに対して分析しても仕方がない。リソース配分の問題。データ分析自体が目的ではない

③データを都合よく見ている

  • 事業がや施策がうまくいっているかどうか、など「Good or Bad」をそもそも捻じ曲げて「良い」とするパターン

  • 都合が良い指標を評価指標にして無理やり「良い」とするパターン

  • ★とにかく「いい報告をしたい」からいい要素を探して予定調和的に分析結果を出してしまう。これはフレームワークでいう「Good Bad evaluation」を真剣にやっていないと言える。Good Badは必ず何かとの比較によって判定される。その比較を、ビジネスゴールから逆算して適切に行わないといけない。これを「これとの比較ならよく見えるからOK」などとするのは、ビジネスゴールの達成を拒否する背信行為のようなものだと私は思う

  • これが起きないようにするためには、「中立的な立場の人がデータを見る」ことが重要。(★そういう意味では、消費者戦略部門が独立している今の会社は理にかなっていると言える)

データと直感が合わない時

  • とにかくデータ分析をDeep diveすること

  • 「直感とは合いませんが、データはそう言ってるんで・・・」と言ってるうちはデータは信頼されない。

  • ★例えば「なぜ直感に反するかというと皆さんは全体の定性データを見ているからであって、実はヘビーユーザーに絞るとこういうインサイトになります。なのでヘビーだけに絞って定性データも見てみましょう」などと言えると、直感とデータのGapを説明できてGood

ターゲット顧客は誰?

  • よくある勿体無い例:ターゲット顧客を決めるために会議室に篭り、なんとなくの顧客理解でペルソナを定め、大半の時間を施策の議論に使ってしまう

  • まずは、「今誰が買ってくれているのか」「誰がもっと買ってくれそうなのか、それはなぜか」などの論点を、データ分析を使ってSharpにDeep diveすべき。とにかく「誰に」の解像度を定量的に高めることに集中する。

  • 何度も言うが、「誰に」が決まれば施策は自ずと浮かんでくる

分析を意思決定やアクションに繋げるためのコツ

  • 世の中では分析してもアクションに結びつかない事例が頻発する

  • データに触れる→データから何がわかるのかを考える→表やグラフにしてアウトプットする と言うステップでは、「アクションの繋ぎ」が考慮されないからダメ

  • とにかく逆算。まずは「どんな表やチャートを作れば自社のアクションが変わるかを考える」ことから始める

  • ここを脳内シミュレーションするのが、データ分析で最も付加価値が高いパート

    • ★自分の感覚と同じ。発注を受けた時も、どういうアウトプットを作ってどういう行動につながるか?を発注者と話してクリアにしないといけない。「発注者は発注しているくらいだからアクションとってくれるだろう」では甘すぎる。

データドリブンだからこそ顧客接点を忘れずに!

  • データを信じすぎると顧客の声(定性情報)を軽視しがちなので注意

  • 顧客に詳しいほど、データを見た時に仮説がブワッと湧いてきて、分析がスムーズかつ良質に進む→★実感あり

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