読書ログ 『Why型思考トレーニング』
『具体と抽象』の著者が、本質的な思考力の要諦を「Why型思考」と称して論じた本。無意識に陥ってしまう浅い思考である「What型思考」との対比がわかりやすく、思考を深めるきっかけを与えてくれる。
Why型思考とは何か
何をやるかを考えるのが「What型思考」で、なぜそれをやる必要があるか、どういう背景でそれをやってきたのか・これからもやるべきなのかを考えるのが「Why型思考」
要するに、目的意識を持ちなさいということ。表層的な事象に惑わされず、その裏にある「Why」を突き詰め、本質を理解することで問題解決の質を上げようというのが、本書のメッセージ
Whatは表面上に見えている具体的な一つ一つの事象。対してWhyはある事柄が起こっている理由や背景といった目に見えないもの
→Whatは五感で感じ取れるが、Whyは頭をしっかり使って理解しないと見えない。背景(background)・構造・メカニズムとか言ったりする
What型思考に陥ってしまう例
オレオレプレゼン:プレゼンで自分が話したいことばかりを話してしまう
→プレゼンの目的は、「相手に何らかの行動をとってもらうこと」である(よく会社でも言われる)。「相手が何を知りどういう感情になればその行動をとってもらえるか?」という「Why」から逆算して組み立てないと、ただの自己満足で終わる無目的な会議:なんとなく定例会議をしてしまう
→目的が「情報共有」なのか「決める」なのかが不明確なケース。特に当初のセットから時間が経ったり関係者が多くなると不明確になっていく。また、単なるWhatをWhyと勘違いしているケースが多いので注意。「目的は○○のレビューです」と言われても、「何のためにどうレビューしてどういうアクションに繋げるの?」と言いたくなる。答えをちらっと見ただけで満足
→「なぜ?」によってWhy型思考の扉を開いても、1回の質問で終えてしまってはもったいない。例えば「オーストラリアの首都はなぜキャンベラなのか」と問うた時に、「シドニーとメルボルンが首都の座を争い、中間地点のキャンベラになったから」という答えを知って「なるほど」で終わってしまうようなケース。ここでさらに「なぜ争ったのか?」「なぜその中でもキャンベラなのか?」などなぜを追加しないといけない(追いなぜ?)
Why型思考 取扱いのコツ
既存のユースケースをそのままコピペしないこと。ユースケースがなぜ成功したのか?という本質を抜き出し(抽象化)、それを本来の目的や置かれた環境に合わせてreapplyする(再具体化?)する意識を持つ
朝令暮改でもOKだが、Why部分はブラさないこと。Why固定でWhat(つまりHow)を柔軟に取るのはむしろプラスだが、Whyがいつもぶれてしまうと信頼を失ってしまう
ビジネスにおいては、顧客のWhy(深層的なニーズ=insight)にこだわる。「○○が売れている」だけで終わらず「なぜそれが売れているのか?」「なぜ今までは売れてこなかったのか?」などを繰り返すことで、真のニーズにたどり着く
→感想部分にも書いたが、この掘り下げのために「知識」が不可欠だと思う。なぜを問う必要性は、なぜを問うことで仮説を立て、その仮説を検証して正解にたどり着くことにあるので、仮説の精度が低い場合ただなぜなぜ言うだけのなぜなぜおじさんになってしまうから。いい仮説を立てるために視野の広さが必要。「まじめな人」にも2種類ある。Whatにまじめな人は、ただ言われたことに固執するだけで柔軟性がなく頼りない。一方でWhyにまじめな人は、目的の達成のために柔軟性をもって頑張り続けられるので頼りがいがある
コミュニケーションギャップは、「Why視点強めの上司」と「What視点強めの部下」から生まれる。上司はWhatへの理解が薄いので正論っぽくなり、部下はWhatばかりを気にして「でもそれはできないんだよな・・・」と思ってしまう。
→自分もよく経験する図式。どうしたら良いのかと考えてみた。一つは、この図式を両者でしっかり理解すること。そして、「目的意識は同じで、今こういうWhatを考えているのですがこういう反応がありなかなかうまくいきません。どう動くべきか一緒に考えてもらえませんか&Helpくれませんか」とWhat側に巻き込む。過去の経験上、いまいちな上司はなかなかWhat側に降りてきてくれない(Whyの立場で相談に「乗ってくれて」終わり)。以下に相手をWhat側に巻き込み「一緒にうごかしていくんですよ!」と思わせるかが勝負では。Why型教育においては「教師が生徒よりもある知識を知っていなくても良い」という点が重要。自分は「でも自分もよく知らないし・・・」とWhat面で自信を持てないことがあるが、What面のビハインドをビハインドと思いすぎないことが大事ではないか。
与えられた問題・依頼・問いをむやみに受け入れず、いい意味で「押し返す」。そこで問題の背景や真のKPIなどをかみ砕いて再定義する。
→「押し返し」は超絶大事。仕事ができる人はみんなやってるイメージだし、自分も今の仕事でその重要性に気付いた。「押し返し」はNegativeなことでは全くない。むしろ問題解決の最短経路
感想
なぜ?の中から本質を取り出すために知識(=引き出し)が必要だと思う。そのためのインプット。インプットなしでなぜなぜを繰り返しても、裏返しみたいな答えしか出てこないはず
一番重要なのは「目的から逆算すること」だと思う(これを「逆算思考」と呼びたい)。「逆算」という言葉にすべて詰まっていると思っていて、逆算するためには「①ゴールは何か(Objective)」「②ゴール達成のCriteriaは?(KPI)」「③今はゴールに対してどこにいるのか?(現状認識)」「④Gapを埋めるために今何が足りないのか?何を追加で決める必要があるのか?(方向性・山の登り方)」「⑤Next Stepは?(Action)」の全てが必要だから。つまり、逆算という言葉を意識するだけで、自然と問題解決のスイッチが起動すると思う。
→当たり前の話だが、できていない人が多すぎるので有利自分はWhy型人間で、要領が悪いと感じることが多い。でもこの本に「Why型人間は立ち上がりは遅い」と書いてあったのでちょっと安心した。その分、人や物事の動きをよく観察する→Whyを考える→質問やリサーチにより本質を理解する→自分なりの行動に活かす のサイクルを意識して質を上げていかないといけない
Next Action
何かを解決するときに必ず「逆算」と唱え、Vodka流5つのフレームワークを起動する
Why思考の発揮は、プレゼン・会議の2つに集中する。「Vodkaがいるといつも論点がクリアだ」と言われる存在になる。
選択を変えるとき、Why部分がぶれていないか、Why部分からそもそもぶれてしまっているのかを自問自答する
★Whyにまじめな人間になる。自分はいつもWhyに共感できなかったり、「これやる意味ある?」などと言って熱量を下げる癖があるため。そんなんでは「安心して仕事を任せられる人」にはならないうまくいかなくても「愚直に答えを追求できているか?」を自問自答する
「押し返し」を積極的に行う。ただし、めちゃめちゃPositiveに行う。
NG:意味ある?みたいな態度をとる、仕事を断るような見え方になってしまう、いらいらしてしまう、詰めるように「なんで?」と聞いてしまう
OK:一緒にクリアな問いを作りましょう、もう少し詳しく教えてください、「自分が押し返してるのは仕事をしたくないわけじゃなくて、より問いをクリアにしてみんなハッピーになるためです」と言う
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